地元・福岡のデベロッパーとして、街のブランド価値をさらに高めていく。ーー「えんfunding」坪倉伸一氏インタビュー

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#事業者インタビュー
少額から気軽に始められる不動産投資として、不動産クラウドファンディングソーシャルレンディングに注目が集まっています。参入する事業者も年々増加するなど、今後さらなる市場拡大が見込まれています。

そんな不動産クラウドファンディングやソーシャルレンディングのキーパーソンにインタビューを実施する当シリーズ、今回は福岡を中心に事業を展開するえんfunding(えんファンディング)をピックアップ。運営会社・株式会社えんホールディングスのDX推進室長で、関連会社・株式会社えんメディアネットの代表取締役の坪倉伸一氏にお話を伺いました。

坪倉 伸一(つぼくら・しんいち)
株式会社えんホールディングス DX推進室長/株式会社えんメディアネット 代表取締役
1978年、高知県生まれ。2001年に株式会社えんに新卒で入社。以降、不動産営業として自社ブランドマンション「エンクレスト」などの販売に奔走。2019年5月、初の社内ベンチャーとして株式会社えんメディアネットを設立。2023年10月、株式会社えんホールディングスに新設されたDX推進室の室長に就任。

えんfunding(えんファンディング)とは?

えんfunding 「えんfunding」は、2021年にサービスを開始した不動産クラウドファンディングサービスです。

最大の特徴は地元・福岡市の不動産に特化したファンド展開で、その中心となっているのが、運営会社えんホールディングスの自社ブランド「エンクレスト」シリーズです。地域密着型の事業戦略により、安定性・持続性の高い商品提供を実現しています。

\ 「えんfunding」の公式サイトはこちら/

えんfundingのファンドをチェック

福岡特化型の事業者としてできること

えんfunding坪倉氏① ーー坪倉さんが現在代表を務めておられる「えんメディアネット」はグループ内ではどのような事業を行っている会社なのでしょうか?

ひと言でいうと、グループ全体のマーケティングを担当している会社です。えんホールディングスグループは、総合不動産会社としてマンションの開発・販売だけでなく、賃貸や管理など、不動産にまつわるさまざまなことをトータルで行っています。最大の特徴となっているのが福岡県の中でも「福岡市」に特化した事業展開で、マンションの供給戸数は福岡市内で122棟・11,482戸(2023年12月現在)となっています。

現在はマンションを中心とした事業を行っていますが、今後はもっと幅広く不動産を展開していく可能性もあります。そうなったときに、マンションを宣伝するだけでなく、地域密着型のデベロッパーとして「福岡市」という街のブランド価値自体を高めていくことも重要な役割だと思っています。

そこで将来を見据えた上で、福岡という街の優位性や居住地としての魅力をお届けするために福岡特化型のWebメディア「フクリパ」をオープンし、福岡県外の方へもさまざまな情報発信を行っています。

 ーーえんホールディングスにおける「DX推進室」はどのような役割を担っている部署なのでしょうか?

不動産業界は古い業界なので、情報のやり取りや販売、契約周りなど、アナログな慣習が多く残っていたりするんです。そんな中で、今後もこの業界で生き残っていく、あるいはさらに上を目指していくには、デジタルの活用は絶対に欠かせない要素になります。

そこで、えんホールディングスグループ全体としても、なんとなくデジタル化していこうね、ではなく、しっかり「DX」をプロジェクトとして前面に打ち出していこうと。そして、デジタルをベースに新規事業であったり将来像に対して投資し、大きなシナジーを作り出していこうということで立ち上がった部署です。その中には、もちろん不動産クラウドファンディングのサービス強化・マーケティング強化も含まれています。

平均入居率99%の自社ブランドマンションを投資対象に

エンクレスト

ーー「えんfunding」の特徴を教えてください。

やはり「えんfunding」に関しても、まず福岡市に特化している点が大きな特徴です。さらに、ファンドの対象不動産は基本的に自社ブランドマンションの「エンクレスト」シリーズです。この「エンクレスト」は、2023年12月現在で福岡市内120棟以上が稼働しているのですが、そのすべての平均値で入居率が99%となっていて、入居者の方にも非常に高い評価をいただいているシリーズです。

「えんfunding」は基本的に「エンクレスト」の賃料収入を分配の原資にしていますので、そういった意味で、不動産クラウドファンディングの投資先として高い安全性を提供できる、という点は大きなメリットといえるかと思います。

それと、あまり他サービスで見ないかもしれないのが、「空室レポート」です。私たちとしては投資家のみなさんに不動産クラウドファンディングに投資していただきながら、実際の不動産投資の一端を体験してもらえたら、という思いも持っているんです。「エンクレスト」は非常に高い入居率を誇りますが、ときには退去が出て空室となるタイミングもあります。そういった賃貸の状況をファンドに投資された方にレポートとして配信しているんです。

当然、実際に投資家のみなさんに空室対策や再募集などを行っていただくことはないですが、空室が出て、原状回復をして、また募集をかけて、空室が埋まる、という一連のサイクルをオーナーに近い視点で見ていただけるようにしています。そうすることによって、不動産投資の表面よりももう少し深い部分、良いところも悪いところも、一緒に感じてもらえるのかなと考えています。ちなみに、対象物件にもし空室が出た場合も利回りに影響が出ることは基本的にありません。これもすべて自社物件で提供している強みの1つなので、その点は安心していただければと思います。

ーー入居率99%はすごいですね。「エンクレスト」シリーズはなぜ、このような高い数字を維持できているのでしょうか?

「エンクレスト」はいわゆるデザイナーズマンションで、100戸前後を前提としたマンションシリーズなんです。大規模マンションにすることでエントランスをホテルのような造りにできて入居者様の満足感や優越感につなげられる、といったメリットもあるのですが、じつは大規模にしている最大の理由は管理面にあります。

例えば、1フロア2部屋の縦長のマンションでもエレベーターは1基必要ですが、これが1フロア10部屋になったからといってエレベーターも5倍の10基必要かというとそんなにはいらないんですよね。つまり、大規模マンションにすることで1部屋あたりの維持・管理にかかるコストを抑えることにつながります。また、エレベーターに限らず同様の効果が期待できる事項はたくさんあります。

管理がしやすいということは持続可能性が高まるということでもあります。「エンクレスト」シリーズは、50年、100年と福岡の方に親しんでいただける住居を目指しているので、この点は非常に重要です。実際にお客様からも、築20年が経った物件に対し「新築みたい」というお声をたくさんいただきます。コストを抑えながら行き届いた管理や適切な修繕を行っているので、色褪せない魅力を長きにわたって提供できているのかなと思っています。

全国トップクラスの成長率を誇る福岡市で

ーー不動産クラウドファンディングにおいても福岡市を軸に事業を展開しておられますが、福岡市という街が持つ不動産的側面でのポテンシャルについてはどのように捉えていますか?

福岡市は直近の10年間における、150万都市での人口増加率でトップの数字を記録しているほか、将来の人口増加率の予想でも全国トップクラスで、横浜市や川崎市、大阪市、名古屋市といった日本の主要な地方都市を上回る数字が予想されています。

福岡市の成長性参照:注目しておきたい全国トップの成長都市「福岡」のいま|フクリパ!

人が増える場所は、不動産が賑わう場所です。それは居住用だけでなく、店舗やオフィス、宿泊施設などさまざまな施設においても同様です。じつは福岡県全体で見ると人口は減少傾向にあるんです。でも、福岡市だけを切り取ると全国でも有数のポテンシャルを持っていることが数字で示されている。ですので、私たちはあえて商圏を福岡県全域にまでは広げず、福岡市の一点集中で事業を展開しています。

ーーえんfundingに登録されている投資家の方は福岡の方が多いのでしょうか?

福岡県内のユーザーでだいたい全体の20%くらいだと思います。他サービスと比較すると、もしかすると福岡の割合は若干高いのかなとは思いますが、それでもやはり東京を中心とした首都圏エリアや大阪などの関西圏、次いで愛知の方が多いですね。私がいうのもなんですが、とくに「エンクレスト」というブランドは福岡で知らない人はいないというくらいの知名度があるのですが(笑)、「えんfunding」の知名度は福岡でもさほど高くないだろうなというのが肌感覚であります。

プロモーションの課題もあると思うのですが、やはり不動産クラウドファンディングというもの自体がまだまだ浸透していないというのもあると思っています。ただ、逆に考えると、福岡以外のユーザーが8割というのはいいことだとも思っているんです。当社は福岡での知名度は高いですが、全国規模になると全然といった状況です。ですので、「えんfunding」で当社のことを知った方も多いのではないかと感じています。そういう意味では、逆に「えんfunding」がマーケティング上のフックになることも期待しています。

ーーえんfundingでは2021年7月に第1号ファンドを提供されていますが、いきなり500%に迫る申し込み率を記録しています。最初からこれだけの申し込みを獲得できた要因はなんだったのでしょうか?

第1号ファンドということで、思い切った利回りで提供したことが1つの要因かなと思います。「エンクレスト」の中でも博多駅から徒歩5分の好立地で賃貸需要は間違いないという物件だったのですが、年換算の想定分配率を9%で設定しました。

あとは広告も利用しながらプロモーションをかけたことで、たくさんの方に注目していただくことができました。結果として、1,300万円ちょっとの募集に対して6,500万円余りの申し込みをいただきました。

ーーその後のファンドに関しても1度も100%を割っておらず、中には1,000%を超えるものも出ています。これには小型案件を中心に行っているというのも要因としてあるかと思います。ライセンスとしては大型案件の取り扱いも可能だと思いますが、現状小型に絞っている狙いなどはありますか?

本当にたくさんの方にお申し込みをいただいていてありがたい限りなのですが、その反面、100%を超えるということは、お申し込みいただいているにもかかわらず投資できない方も出てくるということですので、まずはそういった方々にお詫び申し上げたいと思います。

より大型の案件に関しては、まさに社内でも検討課題と認識しています。そもそも不動産クラウドファンディングで提供している当社の「エンクレスト」シリーズは、非常に人気のマンションブランドということもあって、営業部署としても「売りたい」というのが大前提としてあるんですね。安定した利回りを維持できる「エンクレスト」は不動産クラウドファンディングで提供できる一方で、当然販売もできるので、「じゃあどっちが扱いましょうか」という話になりやすいんです。

先ほども申し上げたように、不動産クラウドファンディングには福岡以外の方にも認知を広げていくという役割であったり、そもそもの不動産投資のハードルを下げて入りやすくしていく、という役割もあります。一方で販売による利益も取っていかなければいけないという部分もあるので、そのあたりは全体のマーケティング戦略を考慮しながら案件を振り分けているという感じです。

ただ、徐々にご登録いただいている会員様も増えてきている中で、申し込み率だけが高まっていくのは私たちとしても本意ではないので、規模の拡大であったり提供案件の増加については今後検討していきたいと思っています。

地元特化だからこその強みを

えんfunding坪倉氏②ーーこのインタビューで「えんfunding」のことを知る方もいると思います。あらためて、サービスについてのアピールやメッセージをお願いします。

「えんfunding」は、福岡市に特化した不動産クラウドファンディングサービスです。エリアを地方都市に絞っていることで「どうして?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、当社はもともとグループ全体で福岡を基盤に成長してきた不動産事業者です。開発から販売、賃貸、管理、コンサルティングまですべて手掛けているので、福岡市が持つ魅力や将来性、細かなエリア特性、属性ごとのニーズなどを知り尽くしているのが最大の強みです。

さらに、ファンドの対象物件は極めて入居率の高い自社ブランドマンションに限定しています。不動産クラウドファンディングというと、その運用期間だけ運用をして、あとは売却して完了、というものも多くありますが、私たちが提供するのは自社のマンションなので、1年間運用したらOK、というふうに物件を見ていません。仮に1年間の運用期間が終了しても、マンションはその先もずっと長く維持されていきます。そういった意味で、自社物件だからこそ、管理体制や資産価値の維持・向上、空室対策などには一切の妥協はありませんし、それが結果として不動産クラウドファンディングとしての運用の安定性にもつながっていきます。

実際、福岡県外の投資家様も多い中で、福岡に対し「土地勘がない」「馴染みがない」ということで敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、「えんfunding」の案件はどれも当社が自信を持って提供しているものばかりですので、ぜひ福岡以外の方にも投資の選択肢に入れていただけたらありがたいですね。あとは福岡の不動産事業者として街の魅力の発信にもいっそう力を入れて、私たち自身で福岡の価値を高めていくことも引き続きやっていきたいと思います。

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  • 記事を書いた人 a.sato

    『ゴクラクJOURNAL』編集長。10年余りのラジオディレクター・構成作家の経験を経てライターに転身。延べ300社以上のコンテンツのコンサルティング・ライティング、ブランディングに携わる。以後エンタメ・インフラなどのWebメディアの編集長を歴任したのち現職。3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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