クラウドファンディングの“先”へ。DXで不動産の未来を拓く。ーー「LSEED(エルシード)」榮章博氏インタビュー

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#事業者インタビュー
通常多くの資金を必要とする不動産投資を少額から行えることで、不動産クラウドファンディングの人気が高まっています。同分野に参入する事業者も年々増加しており、さらなる市場規模の拡大も期待されています。

このインタビューシリーズでは、そんな不動産クラウドファンディングのサービス事業者に焦点を当て、キーパーソンにサービス運営の裏側を伺います。今回は、2024年にリブランディングして再スタートを切った「LSEED(エルシード)」を運営する株式会社ランドネット代表取締役・榮章博(さかえ・あきひろ)氏にお話を伺いました。(取材日:2024年9月5日)

榮 章博(さかえ・あきひろ)
株式会社ランドネット 代表取締役
大阪府出身。中央大学卒業後、大手不動産流通会社に入社。経営企画部門を経たのち、中古マンション営業に従事。退職後、業務効率化のためデータベースシステムを学び、独自に不動産流通データベースシステムを開発する。1999年、株式会社ランドネットを設立、代表取締役に就任。2021年、東京証券取引所JASDAQ(現・東京証券取引所スタンダード)市場に上場。

LSEED(エルシード)とは?

LSEEDLSEED」は、東証スタンダード市場に上場している株式会社ランドネットが運営する不動産クラウドファンディングサービスです。

投資用区分マンションの取引実績で国内トップクラスを誇る同社の強みを生かし、一定以上の収益性を確保しながら堅実性も高いファンドを提供しています。

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株式上場で信用力が向上・ブランドを「LSEED」へ

ーー株式会社ランドネットの事業内容について詳しくお聞かせください。

北は札幌、南は石垣島まで、日本全国の不動産の売買とリフォーム・リノベーション、賃貸事業を展開しています。投資用の中古区分マンションに関してはすでに全国を対象に取り扱いの展開を広げており、さらに戸建てや一棟アパートも全国に取り扱いを広げようとしているところです。

不動産業界のメインマーケットは今後、新築から中古に移ると思っており、当社としては、さらに一棟ビルや一棟マンションまで取り扱いを広げて、将来的に中古不動産の「流通・再生・運用」の分野で日本トップのシェアを獲得することを目指しています。

また、これらの不動産事業で培ってきた経験や実績を、比較的投資経験の浅い方にも同じように還元していく1つの方法として、不動産クラウドファンディング「LSEED」を展開しています。

ーーランドネットさんといえば、2019年に「LANDNET Funding」として不動産特定共同事業に参入されています。そこからリブランディングし2024年に「LSEED」として再始動していますが、どういった背景があったのでしょうか?

「LANDNET Funding」では、投資対象はワンルームマンションがメインでした。というのも、当時は当社の取り扱い物件の約7割がワンルームだったという理由があります。それが現在ではファミリータイプの物件のほうがメインになっており、さらに一棟ビルや一棟マンションといった大きめの物件も少しずつ増えてきています。これには2021年に株式を上場して会社としてのブランド力や信用力が向上したことも要因として挙げられます。

ワンルームマンションですと、大体数百万円とか1,000万円、2,000万円といったあたりの価格になりますが、ファミリータイプのマンションとなると、数千万円から1億円、さらに1億5,000万円くらいまで、幅広い価格帯の物件があります。株式上場したことで資金力と信用力が高まり、クラウドファンディングのスキームでも色々な物件やサービスを提供できる準備が整ったということで、今回ブランド名を「LSEED」とあらためて、再スタートすることにしたという流れです。

 ーーサービスが始まってから、ここまでの手応えはいかがでしょうか?

実は最初の「1号ファンド」では、配当利回り3%で運用期間3年というものを提供したのですが、あまりうまくいかなかったんですよね(苦笑)。正直にいって、お客様が集まりませんでした。

その経験も踏まえて、以前の「LANDNET Funding」で成功した、利回り8%で3カ月という案件に1回立ち帰ってみようと。そうしたら、しっかり集客ができましたので、その次から6%、5%、4%と少しずつ利回りを抑えていきながら案件を出していきました。直近の「6号ファンド」は3%でしたが、募集開始から2日で満額以上の応募を達成できました。

当社が目指している、「リスクを抑えながら安心して投資できる3%の案件」というところで、しっかり獲得できたのは自信になりました。

長期型や複数組み入れファンドも提供していく

ランドネット01ーー「LSEED」ではファミリータイプのマンションを投資対象にしていくというお話がありましたが、その狙いについてお聞かせください。

まず前提として、「LSEED」の配当原資は家賃収入でまかなっています。例えば、家賃収入の実質利回りが大体4%以上ある物件を選定して、出資者の方にそのうちの3%の配当を行う、というような設計です。

そんな中で、「LSEED」でメインの投資対象としているファミリータイプマンションは、実はお部屋が空くと価格が高くなるという特性があるんです。その理由は、賃貸中の物件と空室の物件では評価方法が異なる点にあります。

不動産は一般的に、賃貸中は「収益還元法」、空室時は「取引事例比較法」で計算するのですが、収益還元法で計算する賃貸中物件の市場価格相場は空室時の相場の約8~9割になります。

そこで、割安で買える賃貸中の物件を当社が仕入れ、空室になったタイミングでリフォーム販売することで安定的に収益を上げられる構造になっています。このような仕組みによって、当社と出資者の方がWin-Winの関係になれると考えています。

ーー「LSEED」にブランド名を刷新したことで、今後はどのような戦略や方向性でサービスを展開していくのでしょうか?

まず、お客様に安心して投資していただき、安定的に配当を受け取っていただける体制を整えて提供していく、という部分は「LANDNET Funding」から一貫して変わらない部分です。

一方で、どういった商品を提供していくか、という部分では以前とは変わっていくと思います。先ほど申し上げたような投資対象物件の変化だけでなく、運用期間についてもさまざまな商品の提供を考えています。

例えば、3年とか5年、さらには10年といった長期間でお金を預けていただいても、予想配当利回り3%くらいのところできっちりお支払いできるような商品は提供できるのではないかと考えています。

とはいえ、当社はまだ上場したばかりですし、サービスも立ち上がって間もないので、投資家のみなさんから、まだまだ大きな信用は獲得できていないのかなとも思っています。そういった意味で、現状は3カ月の案件が多くなっていますが、まずはその一歩先、6カ月や1年という期間でしっかり配当できる商品を提供していくことを目指していきます。

ーーファンドの募集規模を大きくしていく予定もあるのでしょうか?

はい、募集規模も大きくしていきたいと思っています。具体的には、投資対象物件の数を増やすというやり方をまずは考えています。ちょうど「1号ファンド」で行ったように、1つのファンドに2物件、3物件、5物件と複数の物件を組み入れていくやり方ですね。

あとは、当社は物件の仕入れを得意としていることもあり、実は1億円クラスの物件も10本、20本と控えていたりするんです。ただ、いくら物件があっても信頼がなければお金は集まりませんから、まずは実績を重ねて信頼を獲得すること、そして実際の市場のニーズの調査もしながら、こうした案件を提供するタイミングを伺っていこうと思っています。

ーー現在、ファンドの提供頻度は1カ月に1本程度となっていますが今後さらに増やしていく可能性はありますか?

提供頻度に関しては担当者の力量次第かなと思います(笑)。物件はたくさん控えていますので、今開発中の機能が完成して安定稼働してくれば、2週間に1本は行けるんじゃないかと思っています。

3号・4号事業者、さらに不動産業界のDXへ

ーー「LSEED」としての今後の展望についてお聞かせください。ランドネット03

お伝えできる範囲の中ですと、まず現在取り組んでいるのが、不動産特定共同事業における、大臣免許(※国土交通大臣及び金融庁長官による許可)の取得です。

不動産クラウドファンディングは多くの事業者さんが都道府県知事免許で運営されていて、当社も現在は東京都の免許で行っているのですが、将来的には、より安心して投資いただけるようにSPC(特別目的会社)を介したスキームでのファンド提供を考えています。そこで不動産特定共同事業の3号・4号事業者免許の取得を検討していて、そのためにまず大臣免許が必要になりますので、まずそこからですね。

あとは、「LSEED」では不動産クラウドファンディングでは珍しく専用のアプリを提供しています。実はかなりのお金を投入して作っているモノで、これを使って不動産投資のDXを加速していきたいと思っています。

例えば、投資用にワンルームマンションを購入するとなれば、まず買取契約があって、次に賃貸借契約があり、さらにローンの契約や更新契約、リフォーム・リノベーション契約、お部屋が空いたら入居者を探す手続きがあり、その上、収益が発生すれば確定申告もしないといけません。不動産投資は非常に手続きが煩雑なんです。それが5物件、10物件となってくると管理も含めて本当に大変です。

もしこれらの契約を電子化できたり、書類やデータを1つの「マイページ」で管理できたらすごく便利ですよね。もちろん、同じ場所で不動産クラウドファンディングの出資データや入金などの情報も管理できる。そういったものを数年かけて作ろうとしていて、最終的にはシステムとして不動産事業者さんなどに販売するところまで行きたいと思っています。

ーーでは最後に記事をご覧の投資家のみなさんにメッセージをお願いします。

不動産クラウドファンディングの「LSEED」では、今は数千万円という単位でファンドを募集しておりますが、これからもっと大きなファンドも提供していきたいと思っています。このプラットフォームで1億、3億、5億という資金を集めても安心して投資いただける環境づくり、さらに安定的に配当を提供できるようなサービスを目指して、会社としてもしっかりこの事業を育てていきたいと考えております。

「LSEED」、株式会社ランドネット、ともに長い期間お付き合いいただき、長く付き合うほど信頼されるような、 そういうサービス・会社になりたいと思っておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

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  • 記事を書いた人 a.sato

    『ゴクラクJOURNAL』編集長。10年余りのラジオディレクター・構成作家の経験を経てライターに転身。延べ300社以上のコンテンツのコンサルティング・ライティング、ブランディングに携わる。以後エンタメ・インフラなどのWebメディアの編集長を歴任したのち現職。3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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