個人投資家にもプロ品質の不動産投資の醍醐味と利益を。ーー「TREC FUNDING(トレックファンディング)」大島均氏インタビュー

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#事業者インタビュー
2024年から新NISAがスタートし、日本でも投資への意識が高まっています。そんな中、少額から簡単に投資ができることから、不動産クラウドファンディングソーシャルレンディングにも注目が集まってきています。

そんな不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングのサービス事業者に焦点を当て、キーパーソンにインタビューを実施する当シリーズ。普段は耳にする機会がないサービスの深い部分を“中の人”に直接語っていただきます。

今回は、不動産クラウドファンディングサービス「TREC FUNDING (トレックファンディング) 」 を運営する、トーセイ株式会社の取締役執行役員・大島均氏にお話を伺いました。

大島 均(おおしま・ひとし)
トーセイ株式会社 取締役執行役員
1964年生まれ。大学卒業後、株式会社三和銀行(現・三菱UFJ銀行)へ入行。2011年、トーセイ株式会社へ入社し、トーセイ・リバイバル・インベストメント株式会社(現トーセイ・ロジ・マネジメント株式会社)取締役、トーセイ・コミュニティ株式会社常務取締役などを歴任。2020年2月、トーセイ株式会社取締役執行役員に就任し現在にいたる。その他、株式会社プリンセススクゥエアー取締役、トーセイ・プロップテック株式会社取締役、トーセイ・アール株式会社取締役も兼任。

TREC FUNDING(トレックファンディング)とは?

「TREC FUNDING(トレックファンディング)」は、東証プライム市場に上場する総合不動産会社のトーセイ<8923>が手掛ける、2020年にサービスを開始した不動産クラウドファンディングです。特例事業スキームによるファンドを立ち上げるなど、ユニークな不動産クラウドファンド事業を展開しています。

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TREC FUNDINGを手掛けるトーセイについて

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ーー本日はよろしくお願いします。「TREC FUNDING」は上場企業のトーセイが手掛ける不動産クラウドファンディングとして知られていますが、最初にトーセイについて教えていただけますか?

トーセイは東証プライム市場に上場する、不動産再生・不動産開発・賃貸・不動産ファンドコンサルティング・ホテル・不動産管理の6事業を展開する総合不動産会社です。

このうち不動産再生・不動産開発の2事業は収益性が高いものの、フロー商売ですので、不動産の仕入れができなければ売上自体が上がりません。また開発事業は、昨今の資材価格や人件費の高騰もありリスクを伴う事業です。一方、賃貸以下の4事業は、ストック商売ですので比較的安定的に収益が得られる事業です。トーセイはこれらの6事業がお互い相互に補完し合いながら、不動産市況の変化に柔軟に対応できる事業基盤をバックに安定的に成長を続けています。

またトーセイは東京及び東京近郊、いわゆる東京圏の物件に注力してビジネスを展開中です。東京圏に注力することで、社内にさまざまな不動産情報やノウハウが蓄積されており、東京圏に強い不動産会社と自負しています。

ーートーセイが2020年に不動産クラウドファンディング事業に参入したきっかけなどを教えてください。

不動産クラウドファンディング事業の参入は、2017年の改正不動産特定共同事業法(不特法)の施行が契機です。本法律の施行を受けて、国内で初めて同法に基づくSPCを用いた不動産ファンド型のクラウドファンディング事業を立ち上げようというプロジェクトがスタートしました。ただし免許を取得するのに2年ほどかかり、最終的に第1号ファンドの募集ができたのは2020年です。

不動産を小口化して販売する、という観点ではすでにREIT(リート/不動産投資信託)が存在します。トーセイも「トーセイ・リート投資法人」を上場させていますが、REITに組み入れる資産は信託受益権という形となるため、大型物件中心とならざるを得ません。しかし改正不特法の施行により、現物不動産でも小口で投資ができるようになり、また販売もネット経由での完結が認められるようになりました。不動産の小口化投資サービスがビジネスとして成り立つ可能性が出てきたと判断しました。

これまでトーセイはプロのファンドなどB2B中心にビジネスを展開してきましたが、さらなる成長のためにはB2Cにもビジネスの幅を広げる必要がある、とかねてから考えていたんです。改正不特法の施行が、B2Cビジネス参入の背中を押しました。

ーー現状の不動産クラウドファンディング事業の規模感などを教えてください。

これまで9本のファンドを立ち上げて約30億円の組成を行いました。しかしトーセイの不動産ファンドコンサルティング部門が約2.4兆円の預り資産を持つのに比べると、まだ事業としてはスタートしたばかりの状態です。グループ全体の売上に占める比率もわずかに留まっています。

TREC FUNDINGが扱うファンドの特徴について

ーー「TREC FUNDING」は特例事業スキームでのファンド組成を行う数少ない事業者ですが、あらためて特徴やメリットを教えてください。

特例事業スキームでのファンドは、投資家にも事業者にもメリットのあるwin-winの商品と考えています。まず投資家のメリットとしては、専門用語でいう倒産隔離がなされている点があります。特例事業スキームでは、通称「SPC」と呼ばれる、特別目的会社が不動産を保有します。これにより不動産を保有するSPCは事業者であるトーセイの企業リスク、簡単にいえば倒産リスクから切り離されます。

通常時はそれほどメリットと感じられないかもしれませんが、不動産市場では、周期的にリーマンショックなどの危機的状況が発生することがあります。特例事業スキームのファンドなら、仮に事業者がリーマンショックのような状況が発生して倒産した場合でも、ファンドへの影響はなく当初の予定通りのファンド運営や利払いなどが可能です。

また事業者のメリットとしては、特例事業スキームで組成したファンドは、事業者の貸借対照表に計上されない「オフバランス化」ができる点にあります。オンバランスの場合、投資家にお返しするリターンは事業者にとっては借り入れのコストと同じです。よって、高いリターンを出すためには事業者は高いコストの支払いが強いられます。つまり、売上も大きい反面、コストも高い状態です。そのため、オフバランス化できる特例事業スキームでのファンドは、上場企業であるトーセイにとっても、メリットがあります。

ーー特例事業スキームを活用することで借り入れを行いレバレッジが掛けられますが、そ の点はどのように捉えていますか?初期のファンドはレバレッジなしで組成されていましたが。

借り入れを行うことによるレバレッジは、メリットとデメリットの両者があります。メリットとしては利回りが上げられるという点ですね。一方で、借り入れのためのコストがかかるというデメリットがあります。

SPCで利用する借り入れはノンリコースローンと呼ばれており、銀行より鑑定書やエンジニアリングレポートの提出を求められたり、弁護士を入れて複数の契約書作成が必要となったりなど、煩雑な手続きや多くのコストが発生します。ノンリコースローンを活用するデメリットがメリットを上回る物件もあります。物件ごとに借り入れを行うメリットとデメリットを比較して、メリットが大きいと判断した場合には、借り入れを行っています。

ーー「TREC FUNDING」の「区分マンションファンド」のシリーズは、複数のマンションを組み入れたユニークな商品ですね。

そうですね、他社にはないユニークなファンドと自負するファンドです。都心の区分所有マンションを複数所有しますが、リスク管理の観点から同じ地域の物件が重ならないように物件を選んでいます。

ーー「区分マンションファンド」は具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?

区分所有のマンションは大きく分けて2種類の物件があります。まずは不動産投資家が持つ投資用マンションです。投資用マンションの価格の考え方は利回りが大前提であり、立地や物件などから算出された利回りをベースに価格が算出されます。

そして、もう一方の所有者はいわゆる居住者自身です。新築や中古マンションを居住するために購入する、通常のマンション購入者となります。実は、不動産投資家が利回りから算出する物件の価格と、居住のために購入するマンション価格には差があることが多く、現在はその価格差が広がりつつある状態です。当社の区分所有ファンドは、この価格差を活用して高い利回りを出しています。

具体的には、最初にファンドが投資用の区分所有マンションを購入します。入居者に対しては契約更新のタイミングで、市場価格に応じた賃料の交渉を行いますが、更新には至らず退去に至るケースも多く出てきます。退去となった場合は、リノベーションを行い居住用物件として区分所有マンションを販売します。そこでは、トーセイが培った物件のバリューアップの手法も用います。このように物件の価値を上げた上で、居住予定者に売却しています。

ーー運用を終了した「TREC1号」「2号」「3号」は予定の利回りを上振れして、また当初の償還予定前に運用を終えました。価格差を用いた売却がうまくいったということでしょうか?

そうですね。市場のマンション価格の上昇もあり、「1号」から「3号」まですべて物件が予想以上の価格で売却でき、利回りが上振れしました。区分所有マンションでも、バリューアップの手法は複数あります。物件の設備を更新して購入者の銀行ローンを付けやすくする、次の所有者が使いやすい設備にするなど、地道なバリューアップをコツコツと行っています。これらのトーセイグループが蓄積している、物件のバリューアップのノウハウも当社ファンドの強みだと考えています。

不動産クラウドファンディング事業立ち上げの原点、プロ向けの品質のファンドを個人投資家にも提供したいという思い

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ーー他社のファンドに比べると若干期間が長めのファンドとなっているのは理由があるのでしょうか?

他社では同じ物件に継続的に投資する形で、個別のファンドの期間を短くするケースもあります。しかし当社のファンドは、原則ファンド期間内に物件の売却までを終えます。

トーセイはこれまで、機関投資家などプロの投資家相手に不動産ビジネスを行ってきました。銀行も含め、プロの世界では資金の調達期間と実際の運用期間を一致させることが大原則です。「TREC FUNDING」は、トーセイのB2B向けの不動産ファンドと同じ品質でのファンド運営を行っています。他社のファンドに比べると期間が若干長いものの、プロも認める品質を維持した上で、投資家との約束を守るためには必要な期間と考えています。

ーートーセイグループがプロの投資家向けに行っていることを「TREC FUNDING」では個人投資家に行っている、とのことですが、他には具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか?

「TREC FUNDING」は、物件の購入と売却を行う際は投資委員会という会議体で意思決定をします。さらに投資委員会には外部の弁護士もメンバーに入っており、客観的かつ合理的な意思決定ができるようにしています。

また、半期に一度のファンドの決算状況をお知らせする運用報告書も、専門の会計士の監査を受けていますし、毎月物件の稼働状況をお知らせするレポートも配信しています。目立たない部分ですが、当社のファンドは投資していただいた後のサービスも、充実しているんですよ。

ーープロ並みの品質にこだわる理由を教えてください。

不動産クラウドファンディング事業を立ち上げるに当たり、プロだけが不動産投資で儲けるのではなく個人投資家にもプロと同等のサービス品質とパフォーマンスを不動産投資で得ていただきたい、という思いが背景にありました。現在もその思いに変わりはありません。

期中譲渡が可能なファンドの設立を目指す、また将来的には2~3カ月に1本のファンド立ち上げへ

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ーー企画中のファンドなどあれば教えてください。

将来的には期中譲渡可能型のファンドの組成を目指しています。出資持分の期中譲渡が容易になれば、ファンドの流動性も高まり、投資家も投資しやすくなります。

投資家が期中に持分を譲渡する場合、価格の問題がクローズアップされますが、法的な問題もまだ残されています。投資家同士での相対取引なら問題ありませんが、事業者が運営中のファンドの価格形成に関与する場合には法的な問題が生じます。

本件については、私も理事として参加する不動産クラウドファンディング協会で、弁護士など専門家も交えて議論を続けているところです。将来的には期中譲渡可能型のファンドを組成して、投資家が不動産クラウドファンドに投資するハードルをもう一段下げたいですね。

ーーファンド募集の頻度について今後の予定は?

現在は6カ月に1本程度のファンド募集に留まっています。特例事業スキームは、ファンド設立自体に時間がかかることに加え、納得いく利回りの物件の組み入れを重視しており、頻繁にはファンド組成ができていません。今後の努力で、2~3カ月に1本程度ファンド募集ができる状態とするのが目標です。

ーー最後に改めて「TREC FUNDING」のアピールをお願いします。

「TREC FUNDING」は東証プライム市場に上場するトーセイが、厳格なコンプライアンスに基づき運営している不動産クラウドファンディングです。

トーセイグループ全体では2兆円以上の資産を顧客から預かっています。「TREC FUNDING」のファンドは、これまでトーセイがプロの投資家向けに行ったファンド運営をそのままの品質で、個人投資家に向けて開発したファンドです。

不動産投資で儲けられるのはプロだけではなく、個人投資家でも可能です。当社のプロ品質のファンドで、不動産投資の醍醐味を味わっていただきたいですね。

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  • 記事を書いた人 石井 僚一

    大手証券グループ投資会社への勤務を経て、個人投資家・ライターに。株式及び為替などの金融・投資ライティングに加え、ビジネスライティングも手掛けている。Yahoo!トップページの掲載実績および書籍ライターの経験あり。証券外務員第一種資格保有。writer_ishii

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