過去に不祥事により行政処分を受けたソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディング事業者
公開日 2024/05/16
最終更新日 2024/05/22
今では多くのソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディング事業者がサービスを展開していますが、過去には当局から行政処分を受けた事業者もあります。
今回はそのような、過去に行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者・不動産クラウドファンディング事業者を紹介しつつ、その処分の理由・内容について解説します。
過去に行政処分を受けたソーシャルレンディングサービス事業者
まずは、より歴史のあるソーシャルレンディングの事例から見ていきましょう。ここでは以下7つのサービスのケースを紹介します。- maneo(マネオ)
- Crowd Bank(クラウドバンク)
- みんなのクレジット
- ラッキーバンク
- トラストレンディング
- TATERU Funding(タテルファンディング)
- SBIソーシャルレンディング
1.maneoマーケット株式会社のケース
ソーシャルレンディングサービス「maneo(マネオ)」などを手掛けていたmaneoマーケット社は金融当局から指摘を2回と行政処分を1回受けています。指摘
2014年10月、 maneoマーケット社は証券取引等監視委員会から、「maneoマーケット社の取り扱う事業性ローンファンドにおいて、借り手からの返済が延滞したが、保証会社の保証履行により配当及び出資金の返還が実施されたことを投資家に開示していなかった」として、指摘を受けています。
参照: 延滞案件の開示に関するご報告|maneo(マネオ)|ソーシャルレンディング
なお、この件に関しては行政処分はありませんでした。また上記の指摘はすでに償還済みのファンドに関するものであったため、投資家への影響はありませんでした。行政処分
さらに2018年7月、同社は証券取引等監視委員会から以下の指摘を受けています。- maneoマーケット社は、グリーンインフラレンディングにおいて、ウェブサイト上の資金使途の表示と実際の資金使途が異なる状態のまま募集を継続している
- またこの結果、maneoマーケット社は、虚偽の表示を行っていることになる
参照: maneoマーケット株式会社に対する行政処分について|関東財務局
上記の指摘を受け、関東財務局より同社に対し業務改善命令が下されました。また上記の指摘と前後して、maneoマーケット社は「グリーンインフラレンディング」の新規募集などのサービスを停止しています。
さらに同じ2018年7月、「グリーンインフラレンディング」の償還および分配の実施が留保され、返済遅延の状態となりました。そしてこの行政処分以降、maneoマーケット社が手掛ける他サービスでも返済遅延が多発し、相次いでサービスが停止されていきました。
2.日本クラウド証券株式会社のケース
ソーシャルレンディングサービス「Crowd Bank(クラウドバンク)」を手掛ける日本クラウド証券株式会社は金融当局から2回行政処分を受けています。1回目の行政処分
2015年7月、日本クラウド証券株式会社は証券取引等監視委員会から以下の指摘を受けました。- 顧客預り金残高を正確に把握できておらず、適切な分別管理ができていない状況を継続させていた
- 業務システムへの取引内容の入力遅延が発生したことにより、不正確な取引残高報告書を顧客に通知した
参照: 当社に対する関東財務局の行政処分について|クラウドバンク
関東財務局長より上記の行政処分を受け、業務停止命令に基づいて新規募集などの業務を停止していた日本クラウド証券株式会社は、システム面・運営面の改善を行った上で、2015年11月に業務を再開しています。2回目の行政処分
2017年6月、同社は2度目の行政処分を受けることになります。証券取引等監視委員会が指摘したのは以下の事項です。- ファンド募集時に実際の融資先と異なる融資先を表示していた
- リスク説明として、実際には、匿名組合出資を除く「エクイティ」が55万円しかないにもかかわらず、「エクイティ」の余力があることにより投資者が出資した資金が毀損するおそれが低いかのような表示となっていた
- 営業者報酬の一部を還元する「手数料還元お客様キャンペーン」をうたってウェブサイトに広告を掲載していたが、実際には手数料等の還元を一切行っていなかった
また、いずれの事象も広告担当者とファンド責任者の間の情報共有がうまくいっていなかったために発生したものであるとしています。
3.株式会社みんなのクレジットのケース
ソーシャルレンディングサービス「みんなのクレジット」を手掛けていた株式会社みんなのクレジット(当時)は金融当局から2回行政処分を受けています。1回目の行政処分
2017年3月、株式会社みんなのクレジットは証券取引等監視委員会から以下の指摘を受けています。- 「みんなのクレジット」の貸付先は、そのほとんどが親会社であるブルーウォールジャパン(現テイクオーバーホールディングス)およびその関係会社であるが、その旨をウェブサイト上に明記していなかった
- みんなのクレジットサイトでは、貸付先から不動産もしくは有価証券の担保を受け入れていると表示しているが、実際には、設定された担保の大半がブルーウォールジャパンの発行する未公開株式となっており、中には担保が設定されていない貸付けも存在している
- 償還期限が到来していないファンドの資金が、既に償還されたファンドの償還金の原資に充当されている
- キャッシュバックキャンペーンの原資に、ファンド出資金が充当されている
- 白石代表は、ファンド出資金を自身の預金口座及び自身の債権者に送金させている
- ファンド出資金がブルーウォールジャパングループ内で貸付け、借入れが繰り返された後にグループの増資に充当されている
- ファンド出資金の最大の貸付先であるブルーウォールジャパンは、毎月多額の損失を出し続け、債務超過の状態にあり、これらの貸付けは返済が滞る可能性が高い
参照:株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について|証券取引等監視委員会
上記の指摘を受け、株式会社みんなのクレジットは関東財務局より1カ月間の業務停止命令の行政処分および業務改善命令が下されています。2回目の行政処分
2017年8月、株式会社みんなのクレジットは証券取引等監視委員会から2度目の指摘を受けます。内容は以下の3点です。- 過大担保の徴求
- 利息制限超過の契約違反
- 契約締結時の書面の交付違反
以降しばらくはファンドの分配がなされていましたが、2017年7月には、ほぼすべてのファンドで一斉に返済遅延が発生し、以降投資家への返済がされなくなりました。
結局、2018年2月にみんなのクレジット社は、テイクオーバーホールディングス(旧株式会社ブルーウォールジャパン)、株式会社ブルーアートおよび株式会社らくらくプラスに対する債権を債権回収会社に譲渡することになります。
テイクオーバーホールディングスグループに対する債権額は約31億円でしたが、これを9,660万円で譲渡し、2018年3月にはこの譲渡額に相当する金額が投資家に返金されています。ただし、この額は債権額のわずか3%ほどです。
>>ソシャレン業界激震・みんなのクレジット事件を解説
4.ラッキーバンク・インベストメント株式会社のケース
ソーシャルレンディングサービス「ラッキーバンク」を運営していたラッキーバンク・インベストメント株式会社は金融当局から2回行政処分を受けています。1回目の行政処分
2018年2月、ラッキーバンク・インベストメント株式会社は証券取引等監視委員会から以下の指摘を受けています。- 田中代表の親族が経営する不動産会社に対して、借入金の返済が困難な状況となっていることを認識したにもかかわらず、貸付を行っていた。
- 正式な不動産鑑定評価を行っていないにも関わらず、「不動産価格調査報告書」をウェブサイト上の募集要領に掲載している
なお、実際に投資家に返済された金額は、投資額の30%ほどしかありませんでした。
2回目の行政処分
2019年3月にラッキーバンク・インベストメント株式会社は証券取引等監視委員会から以下の指摘を受けています。- 貸付先が債務不履行に陥って以降、貸付債権の回収に向けた十分な取組みを行っていない。また、担保不動産の競売見込価額の評価は、非常に杜撰である
なお、「ラッキーバンク」はすでにこの時点でサービスを停止しており、また債権譲渡および投資家への分配も行われた後だったため、実質的な効力はありませんでした。
5.エーアイトラスト社のケース
ソーシャルレンディングサービス「トラストレンディング」を運営していたエーアイトラスト社(現AI株式会社)は金融当局からの行政処分を2回受けています。1回目の行政処分
2018年12月、 エーアイトラスト社は証券取引等監視委員会から以下の指摘を受けました。- 「債権担保付ローンファンド」について、募集ページに記載されているような官公庁等が関与して行う除染事業は存在せず、貸付先に対して、こうした事業の存在を前提とした資金使途のための貸付が行われていない
- 「動産担保付ローンファンド」について、実際には募集ページに記載されているような大手企業との業務提携等の予定は存在せず、貸付先に対して、こうした業務提携を前提とした貸付けが行われていない
2回目の行政処分
2019年2月、エーアイトラスト社は証券取引等監視委員会から、2度目となる以下の指摘を受けました。- 「高速道路工事請負代金債権担保ローンファンド」「公共事業コンサルティング債権担保ローンファンド」「燃料売掛債権担保ローンファンド」の募集ページにおいて、虚偽の表示がされており、いずれも、貸付先は実際にはそれらの事業を実施していない
参照:エーアイトラスト株式会社に対する行政処分について|金融庁
エーアイトラスト社は、この2回目の処分を受けて業務を停止しました。以降、貸出中のファンドで相次いで返済遅延が発生し、最終的にはすべてのファンドが返済遅延となりました。
6.株式会社TATERUのケース
ソーシャルレンディングサービス「TATERU Funding(タテルファンディング)」を運営していた株式会社TATERU(現Robot Home)は、国土交通省から行政処分を受けています。行政処分
2019年6月、 TATERU社は国土交通省から以下の指摘を受けました。- TATERU社は、金融機関から融資承認を得る目的で買主が提出した融資審査に必要な自己資金を示す証憑を改ざんした上で、これを金融機関に提出して、融資承認を得させた
参照:宅地建物取引業者に対する監督処分等情報|国土交通省関東地方整備局
この行政処分を受けて以降、TATERU社では新規アパート建設を中止しています。それに併せて「TATERU Funding」も2020年1月にサービス停止となりました。
なお、「TATERU Funding」においては返済遅延や貸し倒れが発生することはなく、すべてのファンドにおいて予定通り分配が行われています。
7.SBIソーシャルレンディング株式会社
ソーシャルレンディングサービス「SBIソーシャルレンディング」を運営していたSBIソーシャルレンディング株式会社は、金融当局からの行政処分を受けています。行政処分
2021年6月、SBIソーシャルレンディング株式会社は関東財務局から行政処分を受けました。処分の事由は以下の通りです。- ファンド募集ページ上の資金使途の表示が実際と異なっていた
- ファンド募集ページにおいて、「貸付審査及びモニタリングを実施している」と表示していたが、実際には行っていなかった
- 貸付先の開発スケジュール遅延や資金の不正使用を認識していながら、その貸付先に対する新規ファンド募集を行った
参照:SBIソーシャルレンディング株式会社に対する行政処分について|関東財務局当行政処分
「 SBIソーシャルレンディング」は、この行政処分の少し前にあたる2021年4月、プロジェクトの進行に問題が生じたことなどによる未償還元本相当額についてSBIグループとして補填することを発表し、後日実行しました。
投資家への損失補填は法律によって原則として禁止されていますが、このケースでは事故によるものとして認められました。これにより、結果的に投資家の損失は避けられました。この措置により、SBIグループは特別損失として145億円を計上しています。
なお、この年のグループ全体の税引き前利益は1,403億円でした。また、SBIソーシャルレンディングは2021年4月に新規募集を停止。その後募集が再開されることはなく、結果的にソーシャルレンディング事業から撤退することになりました。2022年3月、SBIソーシャルレンディング株式会社は株式会社バンカーズにより買収されました。
>>SBIソーシャルレンディング事件とは?経緯・あらましを解説
過去に行政処分を受けた不動産クラウドファンディングサービス事業者
2024年5月時点で、行政処分を受けた不動産クラウドファンディングサービスは確認できませんでした。現状はクリーンなサービス運営がなされているといえるでしょう。今後も引き続きトラブルゼロに期待したいところです。>>【徹底比較】不動産クラウドファンディング人気サービス8選
クラウドファンディング投資のリスクも知っておこう
今回は、過去に当局からの指摘・行政処分を受けたソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディング事業者について解説しました。不動産クラウドファンディングでは大きな不祥事が発生していませんが、ソーシャルレンディングにおいては指摘・行政処分を受けた事業者は意外に多いことがわかります。
しかしながら、こうした処分を受ける前にその兆候を見つけるのは難しいのも事実です。ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで投資を行う際は、このようなリスクがゼロではないことを念頭に置き、募集内容の確認や分散投資といった投資の基本にあらためて気を付けるようおすすめします。
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