短期間に2度の行政処分「トラストレンディング事件」を徹底解説

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#リスクマネジメント #事例
初心者でも始めやすい、ほったらかし投資の1つとして人気が高まっているソーシャルレンディングですが、過去には不祥事も発生しています。投資の際にこうした自体に巻き込まれないためにも過去から学んでいくことも重要です。

今回は、2018年から2019年にかけて発生した「トラストレンディング事件」について解説します。

トラストレンディングとは

「トラストレンディング」は、株式会社トラストファイナンス(その後エーアイトラスト株式会社、さらにAI株式会社へと社名変更)が2015年11月にスタートしたソーシャルレンディングサービスです。

2005年設立の株式会社トラストファイナンスは、元々は金融機関向けのソフトウェア開発会社でしたが、やがて自社でも投資事業や債券の売買、金融事務代行などを手掛けるようになりました。2007年には貸金業登録を行い貸付事業を始めましたが、その資金は代表である松本卓也氏個人の資産でした。その後の2015年、貸金業の業務を市場からのお金で行えるよう、ソーシャルレンディング事業に参入しました。

そして、「トラストレンディング」は順調にユーザーを獲得し、2019年のサービス終了時点で会員数は約3,300人・成立ローン総額は約83億円にまで上りました

トラストレンディングのサービス内容

「トラストレンディング」は、不動産関連会社のほか、投資会社や船舶会社などを投資対象とするソーシャルレンディングサービスでした。

「トラストレンディング」で募集されたファンドの年換算想定利回りは10~12%のものが中心で、当時の事業者の中でもっとも高い水準でした。その高い利回りは投資家にとって大変魅力的で、実際「トラストレンディング」のファンドは募集されるとすぐに完売となっていました。

トラストレンディング事件の経緯

トラストレンディング事件の経緯

「トラストレンディング事件」は、運営会社のずさんな運営体制によって起こっています。その内容は以下です。

金融庁による1回目の行政処分

2018年12月7日、証券取引等監視委員会は「債権担保付ローンファンド」と「動産担保付ローンファンド」の取得勧誘に関して、虚偽の表示がされていたとして、「トラストレンディング」を運営するエーアイトラスト株式会社(当時)に対して行政処分を行うよう金融庁に勧告しました。

証券取引等監視委員会からの指摘は下記です。

証券取引等監視委員会からの指摘

【債権担保付ローンファンドについて】

該当する官公庁等が関与して行う除染事業は存在せず、このため、本債権ファンド借入人に対しては、上記の取得勧誘時の表示のような、官公庁等が関与して行う除染事業の存在及び実行を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていない。

【動産担保付ローンファンドについて】

実際には当該大手企業との業務提携等の予定は存在せず、このため、本動産ファンド借入人に対しては、当初から、上記の取得勧誘時の表示のような、当該大手企業との業務提携や、当該業務提携に係る事業による収益が返済原資となることなどを前提とした貸付けは行われていない。
各引用元:エーアイトラスト株式会社に対する検査結果に基づく勧告について|証券取引等監視委員会

いずれも、表示されている事業は実際には存在せず、貸付金は表示とは異なる用途に用いられているという内容でした。

金融庁からの行政処分

そして上記勧告から7日後の2018年12月14日、この勧告を受けて金融庁はエーアイトラスト株式会社(当時)に対して、以下の業務停止および業務改善命令を下しました。

(1) 業務停止命令
金融商品取引業のすべての業務を1か月間停止すること。
(2) 業務改善命令
①ファンド募集にかかる事務プロセスを網羅的に検証したうえで、今般の法令違反が発生した原因及び業務運営態勢上の問題点を究明すること。また、今般の法令違反について、責任の所在を明確にするとともに、金融商品取引業務を適切に行うための経営管理態勢及び業務運営態勢を再構築すること。

②募集したファンド全件について、取得勧誘及び運用・管理の状況等(貸付先の資金管理の実態や資金の使途を含む)を精査したうえで、投資者保護に必要な対応を図ること。

③本件行政処分の内容および改善対応策について、すべての顧客を対象に、適切な説明を実施し、説明結果を報告すること。

④顧客からの問い合わせ等に対して、誠実かつ適切に対応するとともに、投資者間の公平性に配慮しつつ、投資者保護に万全の措置を講ずること。

⑤上記①から④までの対応について、平成31年1月11日までに、進捗状況及び対応結果について報告すること。

関東財務局による2回目の行政処分

1回目の行政処分から約2カ月後の2019年2月22日 証券取引等監視委員会は、「高速道路工事請負代金債権担保ローンファンド」「公共事業コンサルティング債権担保ローンファンド」「燃料売掛債権担保ローンファンド」の募集ページにおいて、虚偽の表示がされていたとして、エーアイトラスト社(当時)に2回目の行政処分について勧告しました。

また、いずれも借入人は実際にはそれらの事業を実施していなかったとのことでした。

関東財務局から発表された行政処分

2019年3月8日、この勧告を受けて関東財務局から行政処分の内容が発表されました。処分の内容は、「第二種金融商品取引業者の登録取消」および「業務改善命令」という非常に重いものでした。

そして、ソーシャルレンディング事業者で第二種金融商品取引業者の登録取消処分を受けた初の事案となりました。この処分を受け、エーアイトラスト社(当時)は「今後新規会員および新規ファンドの募集は行わず、既存ファンドの運用業務・資金回収業務のみを行う」と発表しました。

この時点で事実上トラストレンディングはサービス終了したといえます。

エーアイトラスト社(当時)による山本幸雄氏に対する損害賠償請求訴訟

エーアイトラスト社(当時)は、2回目の行政処分を受けた後、1回目・2回目の行政処分勧告を受けた対象案件はいずれもエーアイトラスト社の取締役である「山本幸雄氏」からの紹介案件であったと発表しました。

また、募集された資金のうち、少なくとも15.8億円がこの山本氏が実質的に支配する法人へ流出していたとのことです。トラストレンディングの累計募集総額は83.2億円であり、上記金額はその約20%にあたります。

これを受けてエーアイトラスト社(当時)は、これらの案件の借り手企業および山本氏に対して、損害賠償請求訴訟を起こすことを発表しました。そして約2年後の2021年3月31日、AI株式会社は山本氏に対する損害賠償請求訴訟について請求を認容する判決が出たと発表しました。

判決内容は、山本氏に対し5,000万円およびこれに対する2019年11月6日から支払済みまで年5分(5%)の割合による遅延損害金をAI株式会社へ支払うよう命じるものとなりました。

最終融資先や事業内容は必ず確認しよう

トラストレンディング事件について詳しく解説しました。

トラストレンディングを運営するエーアイトラスト社(当時)は、短時間のうちに2度の行政処分を受け、第二種金融商品取引業者の登録取消という非常に重い処分を受けたことで世間の注目を集めました。なお、「トラストレンディング」において発生した返済遅延金額は約52億円で、現在でもその大半は投資家に対して返還されていません

最後に、このような事件が発生した背景についても触れておきます。「 トラストレンディング」は、年利回り10~12%といった非常に高い利回りを謳って投資家から短期間で多くの資金を集めていましたが、大半の募集ファンドについて、投資先企業および事業内容に関する情報は不透明でした。

その要因となっていたのが、当時金融庁が、借り手企業の情報の匿名化を義務付けていたことです。しかしこの事件から約1カ月後の2019年3月、金融庁はソーシャルレンディングの借り手に関する匿名化の義務付けを廃止しました。現在では、多くのソーシャルレンディングサービスにおいて、借り手の具体的な社名や事業内容は明示されるようになっています。

 このようなトラブルは頻発するものではありませんが、万が一のリスクを自分自身で少しでも抑えるために、ソーシャルレンディングに投資する際は、対象企業および事業内容について十分確認されることを強くおすすめします。

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  • 記事を書いた人 中田健介

    IT系企業に勤務する傍ら、2010年からソーシャルレンディングでの資産運用を開始。同時にブログ「けにごろうのはじめてのソーシャルレンディング日記」を開設。 著書に「年利7%! 今こそ『金利』で資産を殖やしなさい!~日本初! 融資型クラウドファンディング投資の解説書」(ぱる出版)がある。

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