不動産投資ローンと住宅ローンの違いは?併用・代用はできる?
公開日 2024/05/09
最終更新日 2024/05/09
不動産の購入時に活用できるローンには、主に不動産投資ローンと住宅ローンの2つがあります。不動産投資ローンは収益用不動産、住宅ローンは自宅用不動産を購入するためのローンです。両者には借入の目的以外においてもさまざまな違いがあります。
今回は、不動産投資ローンと住宅ローンの違い、そして不動産投資ローンと住宅ローンの併用する上での注意点について解説します。それぞれの特徴をしっかりと理解したうえで、自身の目的にあわせて上手にローンを活用しましょう。
不動産投資ローンとは
不動産投資ローンとは、自身の居住用としてではなく家賃収入を得る目的でアパートやマンションなどを購入する際に利用するローンです。「アパートローン」とも呼ばれます。不動産投資をするにはまず不動産を所有する必要がありますが、不動産を購入するには少なくとも数百万円以上の大金が必要になります。不動産投資ローンを利用することで、少ない自己資金でも投資用物件の購入が可能になります。
不動産投資ローンは、銀行や信用金庫、信用組合、日本政策金融公庫、ノンバンクなどさまざまな金融機関が取り扱っています。年収基準などの返済能力のほか、物件そのものの収益力なども加味されて審査されます。
住宅ローンとは
住宅ローンは、自身やその家族が住むための建物や土地を購入する際に、金融機関からお金を借りる住宅取得専用のローンです。新築住宅だけでなく中古住宅の購入時にも利用できるほか、リフォームや建て替え時でも利用可能です。ローンには、公的ローン(公的融資)と民間ローン(民間融資)の2種類があります。公的ローンは国や自治体など公的機関による融資、民間ローンは銀行や信用金庫、生命保険会社などの民間機関による融資です。「銀行ローン」とも呼ばれます。
また、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している「フラット35」は、国と民間の中間的立ち位置にあるといえます。現在の新規ローンでは、民間ローンとフラット35が主流です。
借り入れ要件は融資元によっても異なりますが、基本的に対象の下限年齢は20歳とされており、勤続年数などの勤務状態や年収基準、保険加入の有無などが審査項目として挙げられます。
不動産投資ローンと住宅ローンの違い
不動産投資ローンと住宅ローンにおける主な違いを、次の4つの点からみていきましょう。1.金利
不動産投資ローンは、住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。これは、それぞれの目的の違いによるものです。住宅ローンは居住するための物件購入が目的であり、住宅購入の「資金補助」としての役割も担っています。給与が高くない方や資産が少ない方でも住宅を購入できるよう、住宅ローンの金利は優遇されており低い傾向にあります。
また、住宅ローンは事業用ローンではないことも、不動産投資ローンと比べて金利が低い理由の一つです。不動産投資の場合、空室が続いてしまったり思わぬ家賃の下落が生じてしまう可能性もあります。
賃貸事業が上手く行かずに想定していた通りの家賃収入が得られなかった場合、貸し手である金融機関側には貸し倒れのリスクが高まります。そのリスクを考慮して、不動産投資ローンは金利が高めに設定されているのです。
2.融資金額
住宅ローンよりも不動産投資ローンのほうが融資金額の上限が大きいことも大きな違いです。これは、それぞれ想定されている返済原資が異なるからです。
住宅ローンの場合、ローンを組んだ借主の収入や貯蓄が主な返済原資となります。一方で、不動産投資ローンについては、購入した投資物件から得られる家賃収入が主な返済原資とされています。つまり、個人に対する融資なのか、不動産事業を行う投資家に対する融資なのかという違いです。
住宅ローンの融資金額は、一般的に個人の年収に対して5〜6倍程度が適切とされています。個人の属性によっては、年収の7~8倍程度借り入れできることもあります。一方、不動産投資ローンの融資金額は、借主の年収や資産に加えて、不動産自体の資産性や家賃収入が加味されることから、年収の10〜20倍程度まで借入が可能となります。
3.審査内容
住宅ローンと不動産投資ローンは想定される返済原資が異なるため、融資審査の内容においても違いがあります。住宅ローンでは、個人の「属性」をもとに返済能力の有無を判断します。具体的には、年齢、勤務先、勤続年数、年収、資産状況、その他の借入状況などです。一般的に、公務員や会社員などのように安定して収入を得られる給与所得者は、住宅ローンの審査に通りやすい傾向にあります。
一方、不動産投資ローンでは、個人の属性だけでなく、投資する不動産物件の収益性なども判断材料となります。具体的には、物件の資産価値や立地エリア、築年数、駅からの距離などが挙げられます。賃貸運用が上手くいかなければ返済が滞るリスクがあるため、いくら個人の属性が良好でも投資物件の収益性が低いと判断されると審査に落ちることも十分考えられます。
4.年齢制限
契約者の年齢制限という点でも両者に違いがあります。住宅ローンの主な返済原資は給与収入であるため、一般的には定年までの65歳〜70歳未満(申し込み時)に年齢上限が設定されています。一方、不動産投資ローンでの主な返済原資は家賃収入であるため、購入物件の収益性や資産状況によっては70歳以上での借り入れも可能となります。
不動産投資ローンと住宅ローンは併用できる?
結論からお伝えすると、住宅ローンと不動産投資ローンの併用は可能です。これは、それぞれ借り入れる目的が異なるからです。投資用不動産と住宅用不動産、どちらを先に買うべきか
では、併用する場合、住宅ローンと不動産投資ローンのどちらを先に組むのがよいのでしょうか。一般的には、先に不動産投資ローンを利用して投資物件を購入し、その後住宅ローンで自身の住居を購入するほうがよいとされています。
なぜなら、先に住宅ローンを組んだ場合、不動産投資ローンにおける審査において、住宅ローンでの残債がマイナスに働く可能性があるためです。一方、先に不動産投資を始めて安定した収益が得られていた場合、住宅ローンの審査時にプラスに働く可能性があります。
ただし、不動産投資ローンの対象となる物件の収益状況があまりよくない場合、住宅ローンの審査で融資枠が減額されたり、最悪の場合は審査に落ちてしまったりする可能性もあります。
住宅ローンが残っていても不動産投資はできる?
住宅ローンをすでに組んでいる場合でも、不動産投資ローンを利用することは可能です。ただし、先に住宅を購入するとローン残高が増えることになるため、本来不動産投資ローンで受けられる融資額がその分減額されることになります。ローンが残っていると個人の信用力が低下して属性に影響を及ぼすことになるため、審査は厳しくなるといえます。
住宅ローンで不動産投資物件は購入できる?
住宅ローンは住宅購入の「資金補助」としての役割も持つことから、不動産投資ローンよりも好条件で借りられます。そのため、中には「住宅ローンを使って不動産投資用物件を購入すればよいのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、収益を目的とした不動産投資物件の購入に住宅ローンを活用することはできません。この活用の仕方は「不正利用」にあたります。住宅ローンはあくまで自宅として使用する物件に対する融資です。
この不正が発覚した場合は「契約違反」とみなされ、金融機関から一括返済を求められることが通例です。また、虚偽申告をしたとなれば、その金融機関からのその後の融資にも影響するでしょう。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いを正しく理解しよう
不動産投資ローンと住宅ローンの違い、そして不動産投資ローンと住宅ローンの併用する上での注意点について解説しました。不動産投資ローンと住宅ローンは借入れの目的が異なるゆえ、金利や融資金額などさまざまな点で違いがあります。
そして、不動産投資ローンに比べて住宅ローンは金利面などで優遇されているものの、不動産投資物件の購入に利用することはできません。そのため、目的にあわせて使い分ける必要があります。
不動産投資ローンと住宅ローンは併用が可能ですが、どちらも大きな資金を借り入れることになるため、無理のない返済計画を立ててローンを組むようにしましょう。
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