【プロ解説】話題の少額投資「単元未満株」とは?メリット・デメリットは?

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2024年から新しいNISA(少額投資非課税制度)がスタートしました。これをきっかけに株式投資を始めようと考える人が増えており、そんな中で少額から株式投資を行える「単元未満株」に注目が集まっています。

そこで今回は、単元未満株投資とは?について、元ベテラン証券マンの著者がわかりやすく解説していきます。

株式投資における単元とは?

まずは、そもそも「単元未満株」とは何なのか、詳しく解説していきます。株式投資における「単元」とは、証券取引所にて売買する際の基準となる株式数(売買単位)のことを指します。

ひと昔前までは、単元に定めはありませんでしたが、2018年10月1日以降、全国の取引所で売買単位が100株に統一されました。つまり、日本における株式の単元は100株で、通常株式を購入する際は100株単位で行わなければなりません

単元未満株投資とは?

では、単元未満株とは何かというと、文字通り単元に満たない株式の取引のことを指します。近年、主にネット証券でこの単元未満株を購入できるサービスが出てきています。

単元未満株とミニ株の違いは?

単元未満株と似た用語として「ミニ株」という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。結論からいうと、単元未満株とミニ株は同じものを指します。単元未満株は金融用語で少々難しい言葉になるため、よりカジュアルな呼び方ということでミニ株という呼び名が出てきたようです。

ちなみに証券会社によっては「単元未満株の売買単位」が1株のサービスもあれば、10株のサービスもありますので、利用前によくチェックしておきましょう。なお、単元未満株の取引サービスは、証券会社ごとに以下のようなものがあります。

  1. SBI証券「S株」
  2. 楽天証券「かぶミニ」
  3. マネックス証券「ワン株」
  4. auカブコム証券「プチ株」
  5. SMBC日興証券「キンカブ」

単元未満株に投資する3つのメリット

単元未満株への投資は、通常の株式投資と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは3つピックアップしてご紹介しましょう。

1.少額から株式投資ができる

読者のみなさんのなかには、「株式投資はお金持ちがやるもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。そのイメージはある意味では正しく、実際、一昔前までは株式投資家のほとんどが富裕層の人たちでした。2018年から単元が100株に統一された、とお伝えしましたが、それ以前はより単元の大きな銘柄も多く存在していたことも要因の1つといえます。

少額から株式投資ができる

参照:売買単位の統一|日本取引所グループ

株価が1,000円の銘柄を1単元(100株)買おうとすれば最低10万円の資金が、株価が1万円の銘柄であれば最低100万円もの資金が必要になります。これを分散投資しようとすれば、さらにこの何倍ものお金が必要になるため、なかなかハードルの高い投資だったわけです。

その点、単元未満株投資は最低1株から投資が可能です。株価の安い銘柄なら1株数百円程度から、比較的株価の高い銘柄でも1株数万円程度という少額から株式投資が可能になるため、従来よりも断然気軽に株式投資を行えるようになります。

2.分散投資がしやすい

少額で投資できるということは、分散投資のしやすさにもつながります。「卵を1つのカゴに盛るな」という格言もあるように、投資をするうえでは複数の銘柄を保有してリスクを分散させるのが鉄則です。1単元100万円の銘柄を分散させるのは難しくても、数千円、数万円程度であれば銘柄を分散して保有するハードルはぐっと下がります。

少額から始められてリスクを抑えられることに加えて、分散投資ができることでさらにリスクを抑えられるため、株式投資初心者にとっても非常に始めやすい投資といえます。

3.株式投資や経済の勉強に最適

金額が少ないからといっても、配当がもらえたり、売買によって利益や損失が出たりする点では通常の株式投資と違いはありません。単元未満株であっても、株式投資の魅力や醍醐味、あるいは恐ろしさを十分に味わうことができるのです。

いずれ本格的に株式投資を始めたいと考えている人にとっては、低リスクでスタートできる絶好の機会となるでしょう。また、株式を保有すれば、保有銘柄(企業)の事業の動向や決算が気になるようになるでしょう。業績がよければ嬉しくなり、悪ければがっかりもするでしょう。いずれ、その企業の業界のこと、さらにはその企業が影響を受ける関連業界のことまで気になってくるかもしれません。

株式投資をするということは、その企業が行う経済活動に参加するということに他なりませんから、“株主=当事者”として周辺経済のことを勉強するきっかけにもなるはずです。

単元未満株に投資するデメリットは?

次に、単元未満株のデメリットも押さえておきましょう。

1.取引できる証券会社が限られる

通常の株式投資であれば、どの証券会社を選んでも同じように取引が可能ですが、単元未満株投資の場合はそうはいきません。単元未満株の取引サービスは各証券会社が独自に提供しているサービスであるため、取引できる証券会社とできない証券会社が存在します。サービス展開をしているのはネット証券が中心で、冒頭で述べた楽天証券のほか、SBI証券、マネックス証券といった大手ネット証券が参入しています。単元未満株投資を始めたい場合は、まずサービスを扱っているかどうかを調べるところから始めましょう。

2.リアルタイム取引ができない場合が多い

単元未満株投資が、通常の株式投資と大きく異なるのが、基本的にリアルタイム取引ができないという点です。通常、株式は市場の開いている時間帯であればいつでも売買の注文を出すことができますが、単元未満株では証券会社が定めているタイミングでしか売買できないことが多いほか、自分の希望する株価(指値)での取引ができません。

そのため、基本的に成行注文(株価を指定しない注文)となります。また、リアルタイム取引ができないため、ある銘柄を同じ日のうちに売買する日計り取引(デイトレード)もできません。

3.手数料が高くなりがち

株式を売買する際には、証券会社に対して手数料を支払う必要があります。手数料は証券会社によって異なるため一概にはいえませんが、例えば同じ100株を買うにしても、通常の取引として一度に買う場合と、単元未満株として複数回に分けて買う場合では後者のほうが手数料がかかりやすくなります。

そのため、売買にかかる手数料も証券会社選びの重要な指標になり得ます。たとえば、SBI証券やマネックス証券は、買付手数料が無料で売却時にのみ手数料がかかる仕組みで、比較的お得に取引が行えるようになっています。

4.議決権が得られない

通常、株主は企業への出資を通して経営に参加する権利を持ちます。具体的にいうと、1単元株以上の株式を保有する株主は、株主総会へ出席し、議案に対して賛否の議決権を行使できるのです。単元未満株は1単元に満たない株なので、議決権は得られないということになります。

【F澤のワンポイントメモ~単元未満株が100株になったらどうなる?~】
単元未満株を買い増して100株になった場合、単元株扱いとなり、通常通り議決権が与えられます。また、銘柄によっては単元未満株でも株主優待を用意しているところもありますが、単元株の株主になればその対象銘柄も大きく広がるため、保有するメリットも大きくなります。

なお、100株以上の株を保有している場合、売却は単元株として行います。仮にある銘柄を110株保有している場合、100株は単元株として売却し、10株を単元未満株として売却することになります。逆にいうと、この場合「20株だけ売却する」というようなことはできなくなります。

単元未満株サービス主要5社の手数料を比較

単元未満株を購入できる主要な証券会社の特徴を詳しく紹介していきましょう。ここでは、以下の5社のサービスについて比較していきます。
  1. 楽天証券「かぶミニ」
  2. SBI証券「S株」
  3. マネックス証券「ワン株」
  4. SMBC日興証券「キンカブ」
  5. auカブコム証券「プチ株」

各社の手数料・銘柄数の比較表

まずは各社の手数料と取扱銘柄数を比較してみましょう。

  楽天証券 SBI証券 マネックス証券 SMBC日興証券 auカブコム証券
買付手数料 無料 無料 無料 無料 0.55%
最低手数料55円
売却手数料 無料 無料 0.55%
最低手数料52円
無料 0.55%
最低手数料55円
スプレッド 0.22%(リアルタイム取引の場合) なし なし (買付)
100万円以下は無料/100万円超は1.0%
(売却)
100万円以下は0.5%/100万円超は1.0%
なし
取扱銘柄数 約1,600銘柄
リアルタイム取引は約750銘柄
約3,800銘柄(東証) 約4,000銘柄(東証+名証) 約3,900銘柄(東証) 約4,000銘柄(東証+名証)

手数料の面で断然有利なのがSBI証券「S株」と楽天証券「かぶミニ」です。SBI証券は取引コストは0円、楽天証券も寄付での取引であれば0円、リアルタイム取引(後述)の場合のみ、0.22%のスプレッドがかかります。

また取扱銘柄では楽天証券はやや少なめで、リアルタイム取引の場合はさらに銘柄数は限られます。楽天証券以外では、基本的に東証の銘柄はすべてカバーしています。

単元未満株サービス主要5社の特徴

具体的に各社のサービスの特徴を見ていきましょう。

1.楽天証券「かぶミニ」の特徴

かぶミニ まずは楽天証券の「かぶミニ」です。

「かぶミニ」の特徴1.リアルタイム取引が可能

単元未満株投資のデメリットとして、「リアルタイム取引ができない」を挙げましたが、楽天証券の「かぶミニ」ではこれが可能になるということで発表時に大きな話題になりました。

リアルタイム取引ができることで、通常の株式投資と同じように取引できるようになります。また1株からの日計り取引(デイトレード)も可能になり、投資スタイルに合わせて柔軟な取引が行なえます。

このような単元未満株のリアルタイム取引は大手ネット証券では初の試みで、今後追随してくる証券会社も出てくるかもしれません。

「かぶミニ」の特徴2.楽天証券の各サービスにも対応

楽天証券の「かぶミニ」では、「ポイント投資 国内株式」にも対応しています。楽天ポイントを1ポイント=1円として投資に利用可能なので、よりお得に株式投資が行なえます。

また、楽天銀行との連携サービスである「マネーブリッジ」が利用可能で、自動入出金が行えるほか、待機資金にも優遇金利(0.10%)がつくなど楽天グループならではのサービスが受けられるのも魅力です。

「かぶミニ」の特徴3.手数料が業界最低水準

先にも述べたように、楽天証券の「かぶミニ」は業界最低水準の手数料を大きなセールスポイントとしています。売買手数料は基本的に無料で、リアルタイム取引のときおんみ、0.22%のスプレッドが発生します。

2.SBI証券「S株」

S株 続いてSBI証券「S株」の特徴です。

「S株」の特徴1.売買手数料が0円

SBI証券では、2023年9月に株式などの手数料が無料になる「ゼロ革命」を発表。「S株」もその対象となっており、買付・売却注文時の手数料が完全無料となっています。

なお、単元未満株を買い増して単元株になった場合も取引手数料は無料で、大きなアドバンテージといえます。

「S株」の特徴2.東証の全銘柄をカバー

楽天証券の「かぶミニ」は、約1,600銘柄(リアルタイム取引の場合は約750銘柄)の取り扱いにとどまっていますが、「S株」は東証に上場する約3,800銘柄の取引が可能です。

「S株」の特徴3.ポイント投資が可能

「S株」では、TポイントやVポイント、dポイントなど、SBI証券ポイントサービスで「メインポイント」を設定することで、1ポイント=1円としてポイント投資も行えます

3.マネックス証券「ワン株」

ワン株 マネックス証券「ワン株」の特徴を紹介します。

「ワン株」の特徴1.株の貸出(貸株)ができる

「ワン株」は国内の主要なネット証券で唯一、単元未満株でも株式の貸出(貸株)が可能なのが大きな特徴です。貸株とは、株をマネックス証券に貸し出すことで貸株金利を得ることができるサービスのことを指します。

マネックス証券では1株から貸出ができ、毎日金利がつくためコツコツ資産を増やしたい人にも向いています。

「ワン株」の特徴2.株を信用取引の担保にできる

マネックス証券では、通常の単元株と同じように信用取引の担保(代用有価証券)として「ワン株(単元未満株)」が利用できます

信用取引とは、現金や株式を担保として証券会社に預けることで、証券会社から売買に必要なお金を借りて行う取引のことをいいます。信用取引の担保には一般的に現金のほか、単元株が利用されますが、マネックス証券では単元未満株も担保にできるので、気軽に信用取引が行えます。

「ワン株」の特徴3.取扱銘柄が豊富

「ワン株」では、買付の場合は東証上場銘柄と名証上場銘柄、売却の場合はさらに福証・札証の上場銘柄も取引が可能です。

4.SMBC日興証券「キンカブ」

キンカブ 次に、SMBC日興証券「キンカブ」の特徴を紹介します。

「キンカブ」の特徴1.株数のほか、金額指定でも購入できる

一般的な単元未満株サービスでは1株ごとの取引が可能になっていますが、「キンカブ(金額・株数指定取引)」では、その名前の通り金額を指定しての取引が可能です。

例えば、株価500円の銘柄を1株買うには通常500円が必要ですが、「キンカブ」であれば株価未満の金額でも100円から100円単位で購入可能です。そのため、「〇〇の株を10万円分」といった買い方ができ、銘柄ごとの均等なポートフォリオ作成などにも便利です。

「キンカブ」の特徴2.東証の約3,900銘柄をカバー

「キンカブ」では、東証の各区分(プライム・スタンダード・グロース)に上場する株式やETF、REITのうち、SMBC日興証券が選定する約3,900の銘柄に投資できます。

5.auカブコム証券「プチ株」

プチ株 最後に、auカブコム証券「プチ株」の特徴を紹介します。

「プチ株」の特徴1.Pontaポイントで購入可能

「プチ株」では、Pontaポイントを利用して、ポイント投資が可能です。ポイント投資では、1ポイント=1円、100円以上1円単位で利用でき、約1,400銘柄が対象となっています。

「プチ株」の特徴2.単元未満株の積立投資ができる

auカブコム証券では、「プチ株」のプレミアム積立サービスがあります。これは毎月の積立金額を500円以上1円単位で指定して単元未満株を購入できるサービスです。買付手数料が無料なのもうれしいポイントです。

「プチ株」の特徴3.信用取引等の担保に利用できる

「プチ株」で購入した単元未満株は、信用取引のほか、指数先物取引・指数オプション取引、外国為替証拠金取引における担保として活用できます。

単元未満株投資をする際のポイント

単元未満株投資をする際のポイント

最後に、単元未満株投資をする際に気をつけたいポイントについてお伝えしましょう。単元未満株の取引を検討している人には株式投資初心者も多いでしょうから、それを踏まえたアドバイスになります。

「売りどき」をどう判断するか?

株式投資においては配当を期待して長期保有するのも有効な資産形成方法の1つですが、単元未満株においては少額投資が基本になるので、せっかくですから多少のリスクを承知で短期売買によるキャピタルゲインを狙ってみるのもおすすめです。とはいえ、株式投資において何より難しいのが「売りどき」の判断です。

インデックスファンドであれば市場の指数に連動して長期的には上がっていくだろう、ということがざっくり想像できるため長期保有が前提となるわけですが、個別の株式においてはなかなかそうはいきません。そのためにも、買付をしたときに売却価格の目安を決めておくことも重要ですし、大まかな売却時期を想定しておくことも投資妙味を向上させる一助になるでしょう。

「ベスト」よりも「ベター」を目指す

株式投資の基本は「安く買って高く売ること」です。一番株価が下がったタイミングで買い、一番上がったタイミングで売却できれば最高なわけですが、それは口でいうほど簡単なことではありません。

例えば、株価1,000円で買った銘柄が1,500円になって売ったとしたら投資としては大成功です。でも、売却後に株価が2,000円になったら、むしろ損した気持ちになってしまう……このようなことは投資家であれば誰しもが経験することです。しかしながら、このような値動きを完璧に予測することは基本的に不可能なのです。

重要なのは「最高のタイミングで売る」ことではなく「プラス収支で終える」ことです。そのため、他人と比較するのではなく、常に評価の軸を自分の収支にフォーカスすることが重要です。

単元未満株は株式投資初心者にも超おすすめ

今回は元ベテラン証券マンの著者が、単元未満株投資について詳しく解説してきました。

株式投資というと、以前はある程度のまとまったお金がないとできないというイメージがありましたが、単元未満株取引の裾野が広がってきたことで、かなりの少額からでもスタートできるようになりました。

これは、「株式投資に興味はあったけれど資金不足でトライできなかった」という層に対して大きなアピールになるはずで、さらに株式投資家が増えていくきっかけになる可能性を秘めています。

初心者にとっては株式投資を始めるきっかけとして最適な方法といえるので、ぜひNISA枠の活用も視野に入れつつ、投資を検討してみてはいかがでしょうか。

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  • 記事を書いた人 元証券マン・ミスターF澤

    メガバンク系証券会社に32年勤務。支店長、コンプラ部門を歴任。コンプラ部門ではマネーローンダリング対策を専門とし、FATF対応にも従事。暗号資産会社取締役を経て現在株式会社LBIコンプライアンス部長。

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