ソーシャルレンディングの市場規模は?将来性はあるか

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#市場規模
近年、企業が事業を行う上での資金調達手段として注目されているのが「ソーシャルレンディング」です。「融資型クラウドファンディング」という別名もあるように、複数の投資家から借り入れ資金を集める仕組みです。

今回は、そんなソーシャルレンディングの市場規模や将来性について解説します。投資を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

ソーシャルレンディングは比較的新しい市場

ソーシャルレンディングは、2000年代初頭に英国で始まった投資手法です。ネット上で不特定多数の人から資金を集めるクラウドファンディングの一種で「融資型クラウドファンディング」とも呼ばれています。

ソーシャルレンディング事業者は一般の投資家から資金を集め、資金調達を希望する企業に貸し付けます。投資家はその見返りとして、融資によって付く利息を原資とした配当を受け取ることができるという仕組みです。

なお、ソーシャルレンディング事業者は「第二種金融商品取引業」の登録を受ける必要があります。

ソーシャルレンディングの特徴

ソーシャルレンディングの大きな特徴は以下の5点です。

1.運用期間や利回りが決まっている

ソーシャルレンディングは運用期間だけでなく、利回り(受け取れる金額)も事前に設定されています。基本的に運用中の値動きがなく、どれくらいの時期にどれくらいの利益を得られるかが事前にわかるため、投資家は運用期間や利回りを見て資産運用計画を立てながら投資することができます。

2.事業に対して投資を行う

ソーシャルレンディングでは株式のように企業の成長を見込んで投資するものではありません。「株式会社Aの新規店舗出店プロジェクト」のように、プロジェクトごとにファンドが募集され、投資家は、そのプロジェクトが魅力的であるか、融資先の信用は十分であるかといった情報をもとに投資(融資金のもとになるお金の出資)を行います。

3.少額からの投資が可能

ソーシャルレンディングの多くのファンドでは最低投資額1万円から投資が可能です。必ずしもまとまった資金は必要ないため、初心者でも始めやすいのが特徴です。

4.元本保証はない

ソーシャルレンディングは投資であり、元本保証はありません。運用期間や利回りは事前に設定されていますが、保証されるものではなく、償還遅延や貸し倒れが発生するリスクもあります。

5.原則として中途解約ができない

ソーシャルレンディングは原則として運用中に中途解約ができません。一度出資したお金は運用終了まで拘束され戻ってこないため、その点に留意しながら運用していく必要があります。

ソーシャルレンディングの市場規模・推移

一般社団法人 日本クラウドファンディング協会が2021年7月に発表した調査結果によると、2017年~2020年の市場規模は以下のように推移しています。
  • 2017年:1,316億円
  • 2018年:1,764億円
  • 2019年:1,113億円
  • 2020年:1,125億円

ソーシャルレンディング市場は2018年に1つのピークを迎え、以降はやや低迷している状態です。ソーシャルレンディング業界ではこの数年、不祥事が続いていました。具体的には次のような出来事がありました。

  • 投資家から集めた資金を目的以外のことに利用していた
  • ソーシャルレンディング事業者が投資家から預かった資金を分別管理できていなかった
  • 架空の融資話で資金を集めていた

中には行政処分勧告が出された後に資金が返済されなかったケースもありました。このようなこともあり、ソーシャルレンディングという投資商品自体の信用が低下したことや、不祥事を起こした事業者の撤退(業務停止)などが影響し、市場規模の縮小につながったと考えられます。

ソーシャルレンディングの将来性は?

ソーシャルレンディングの将来性ソーシャルレンディングは、事業者にとっては銀行融資や株式・債券などと違った新しい資金調達方法です。現在のところ市場規模は1,000億円を超える程度で推移していますが、将来に期待できるのかも探ってみましょう。金融庁は、2019年3月にソーシャルレンディングに関する不祥事を防止するため、以下の内容を注意喚起として挙げました。
  • 第二種金融商品取引業の登録を受けていない事業者には関わらないこと
  • 登録を受けている場合でも、信用力を確認した上で取引すること
  • 情報開示がきちんと行われているか、利回りが高い場合、返済遅延などのリスクが高くなることを意識すること
  • 利回りなどだけでなく、事業者が提供する様々な情報を確認すること。リスクが明示されていない事業者との取引には注意すること
ソーシャルレンディングは、比較的簡単な審査で事業資金を集められる手段として注目を集めていました。それだけに、銀行融資の審査を通過できない信用度の低い企業に利用されていたのも事実です。

しかし、金融庁が注意喚起を出したことで、ずさんな運営を行う事業者が次第に淘汰され融資先事業者への与信も厳しくなっていくことが期待されています。投資家からすれば、このような規制の動きが強まることは詐欺的な案件の減少につながるため喜ばしいことです。

新NISAスタートが追い風に?

2024年からは新しいNISA(少額投資非課税制度)がスタートしたことで日本全体の投資に対する意欲が高まっており、少額から始められる投資としてソーシャルレンディングも再度注目を集めつつあります。

今後さらなる成長・市場拡大を目指していくには、まず大前提として健全なサービス運営を徹底すること、さらに投資としての有用性を幅広い層に訴求していくことが重要になるでしょう。

また、ソーシャルレンディングに似た仕組みとして、不動産クラウドファンディングの人気も近年高まっています。こうした世の中の流れに乗っていくことも市場拡大の大きなカギになっていくでしょう。

ソーシャルレンディングの市場規模は拡大の余地あり

ソーシャルレンディングの市場規模と将来性について解説してきました。

ソーシャルレンディングは比較的が高い利回りで運用可能で値動きもなく、さらに少額から始められるといった特徴から、投資初心者でも始めやすい投資商品の1つといえます。

過去には不祥事などもあり投資商品としてのイメージが下がった時期もありましたが、それによって規制強化の動きが強まり、結果として安心感の醸成につながったことは「怪我の功名」といえるかもしれません。

海外の事例と比較しても、まだまだ成長のポテンシャルはあると考えられ、今後はさらなる信頼の積み重ねや新規投資家への魅力の訴求が求められるでしょう。

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  • 記事を書いた人 田尻 宏子

    2級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員第一種資格保有。証券会社、生命保険会社など複数の金融機関勤務後、2016年にライターとして活動開始。現在は「分かりにくいことを分かりやすくお伝えする」をモットーに、株式などの投資関連から、保険や家計管理まで幅広く金融関連記事を執筆中。

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