株主優待とはどんな制度?優待の例や利用方法をわかりやすく解説

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#用語解説
株主優待制度は、企業が株主に対してモノやサービスの形で還元する制度です。優待の内容も多岐にわたり、株主優待を楽しみにしている投資家も多くいます。とはいえ、投資経験がなかったり、初心者だったりするとわからないことも多くあるでしょう。

そこで今回は、株主優待制度とは をテーマに、優待制度を利用する手順、注意点などを詳しく解説します。

株主優待制度とは?

株主優待制度とは?

株主優待制度は、企業が自社の株を買ってくれた株主に対して、配当金とは別にモノやサービスを贈る制度です。株主優待を実施する企業としては株式を多くの人に保有してもらうことや長く保有してもらう目的のほか、自社や自社商品の知名度を向上する目的があります。

ただし、すべての企業が株主優待制度を採用しているわけではありません。日本では全上場企業の約4割にあたる1,463社(2022年9月時点)が株主優待を実施しています。優待内容の具体例としては自社商品やサービスの割引券のほか、美術館や映画館への招待券、カタログギフトなど多岐にわたります。

なお株主優待は一般的に半年~1年に1度の提供が一般的で、優待を受け取るために必要な株数は企業によって異なります。さまざまな条件から各社の株主優待を検索できるサイトもあるため、どんな優待があるか知りたい方は利用してみると良いでしょう。

株主優待の具体例

株主優待の具体例実際にどんな企業がどんな株主優待を実施しているか、以下の6社をピックアップして紹介します。
企業名
優待内容
権利確定日
必要株数
イオン(8267)
 オーナーズカード(割引特典)

 2月末

 8月末

 100株
楽天グループ(4755) 
 楽天キャッシュ(電子マネー)など  12月末   100株
キリン(2503)
 ビール・ジュース・サプリメントなどから選択   12月末   100株
オリエンタルランド(4661) 

 1日パスポート券 

 3月末

 9月末

 500株以上 
日本航空(9201)

 株主割引券

 旅行商品割引券

 3月末

 9月末

 100株以上 
ANA(9202)

 国内線搭乗優待

 グループ各社優待

 3月末

 9月末

 100株以上

イオン(8267)

スーパーマーケットやショッピングモールで有名なイオンは、イオンでの買いものが割引になる「イオンオーナーズカード」を株主優待として配布しています。

買いものでの割引や持ち株数に応じたキャッシュバックがあるため、イオンを普段からよく利用する方に便利な優待です。

楽天グループ(4755)

ネットショッピングだけでなくポイントを利用する方も多い楽天は電子マネー「楽天キャッシュ」のほか楽天の各種サービスを無料で提供しています。

楽天キャッシュは保有株数と保有期間に応じて付与される金額が異なります。最低10万円以下で優待を受け取れるため、投資の初心者でも気軽に株を購入しやすい点も魅力です。

キリン(2503)

アルコールやジュースなどの飲料で有名なキリンは保有する株数に応じた優待品を提供しています。内容は自社グループの商品で、ビールやお茶、コーヒーのほかキリンシティでの食事券などから希望の品物を選べる点が特徴です。優待品を自分で選べる点も一つの楽しみになります。

オリエンタルランド(4661)

東京ディズニーランド・東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドの優待内容は各パークの1デーパスポートです。優待を受け取るには200万円以上が必要なため、ここで紹介するなかでは購入のハードルが高いといえますが、根強いファンも多い銘柄です。

日本航空(9201)

航空会社の日本航空(JAL)は国内線に通常の半額で搭乗できる割引券やツアー代金の割引券を発行しています。3年連続で保有すると追加配布があり、ビジネスや旅行で飛行機をよく利用する方には便利な優待内容です。

ANA(9202)

同じく航空会社のANAも国内線の搭乗割引券を配布しています。ほかにはANAグループが運営するホテルやゴルフ場の割引券や空港内売店・免税店の買いもので利用できる割引券、国内・海外ツアーで利用できるクーポン券があります。

JALとANAのように同じ業種の企業でも優待内容はそれぞれ異なるため、より身近で利用しやすいものを選ぶと良いでしょう。

株主優待制度を利用する3つのステップ

株主優待制度を利用する手順を簡単に説明します。なお、どの証券会社で株式を買っても株主優待の内容は変わりません。自分にとって使い勝手の良い証券会社を選びましょう。証券会社の選び方を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

以下が、株主優待制度を利用する3ステップです。

  1. 利用したい株主優待を調べる
  2. 目星をつけた銘柄を期限までに必要な株数買う
  3. 株主優待の到着を待つ

それでは、1つずつ詳しく解説していきます。

ステップ1.利用したい株主優待を調べる

まず利用したい優待を探しましょう。優待内容のカテゴリや必要な金額から銘柄を探せるサイトを利用すると便利です。また、優待内容のほかにチェックすべきおもな項目は次の3点です。

  • 優待を受け取るために必要な株数(金額)
  • 株式の購入期限
  • 企業の将来性

優待を受け取るために必要な株数(金額)

株主優待を受けるために必要な株数は各企業によって異なり、さらに同じ企業でも保有株数により優待内容が異なる場合もあります。ほしい優待を手に入れるためには何株必要なのか、金額にするとどれぐらい必要なのか、事前に確認しましょう。

株式の購入期限

株主優待制度は、必要な株数を権利確定日までに保有することが条件です。そこで、優待を得るために覚えておきたい3つの日にち、「権利付最終日」・「権利落ち日」・「権利確定日」を解説します。
  • 権利付最終日: 権利確定日の2営業日前。株主優待や配当金を受け取るためにはこの日までに買付注文が成立する必要がある。
  • 権利落ち日: 権利確定日の1営業日前かつ権利付最終日の翌営業日。この日に買付の注文が成立しても今回の株主優待は受け取れない。
  • 権利確定日: 株主としての権利が確定する日(株主名簿に記載される)。株式を権利確定日に保有していれば株主優待や配当金を得られる。

株式の注文では代金の決済が注文成立の2営業日後であるため、株主優待制度を利用するには権利確定日に決済まで終えていなければいけません。つまり、権利付最終日までに買付注文が成立している必要があります。また権利付最終日に株式を購入し、翌営業日の権利落ち日に売却してしまったとしても今回の株主優待は受け取れます。

株式の購入期限

企業の将来性

いくら株主優待が魅力的でも、業績が振るわない企業はおすすめしません。たとえ株主優待を受け取ったとしても、株価が安くなれば受け取った優待以上に損してしまう可能性があるからです。証券会社のWebサイトをはじめ企業の情報は手軽に調べられます。赤字が続いていないか、今後も成長が見込めそうな業種かどうかなどをチェックしておきましょう。

ステップ2.目星をつけた銘柄を期限までに必要な株数買う

ステップ1で銘柄と必要な株数(金額)、権利付最終日を調べたら、間に合うように株式を買いましょう。権利付最終日が近づいてくると株価が上昇するケースも見られます。できればギリギリに購入するのではなく、スケジュールに余裕を持った買い付けをおすすめします。

ステップ3.株主優待の到着を待つ

株主優待の到着は権利確定日から2~4カ月後になるケースが一般的です。もし株主優待の受け取りまでに転居する場合は、企業や株主名簿管理人に問い合わせましょう。また証券会社での住所変更もすみやかに済ませましょう。

株主優待制度を利用する際の3つの注意点

株主優待制度を利用する際の3つの注意点株主優待はとくに個人投資家から人気の制度で、優待を楽しみに株式投資を始めたり、株式を買い付け・保有したりする方が多いのも事実です。株主優待制度の利用にあたって、次に紹介する3つの注意点を忘れないようにしましょう。

1.株主優待の内容や条件を確認する

上場企業のなかにはそもそも株主優待制度を実施していない企業もあります。どの株式を買っても株主優待を受け取れるわけではない点は頭に入れておきましょう。また繰り返しになりますが、株主優待の内容や必要な株数、各社の権利付最終日は企業ごとに異なります。

JALのように長期保有によって優待の内容を変えている企業も多くあり、長期保有の定義も1年以上、3年以上などと各社さまざまです。株主優待を利用するための条件をよく確認しましょう。

2.株主優待が廃止・改悪される場合がある

最近の風潮として株主優待を廃止する企業が増えています。個人投資家からは人気の制度ですが、海外投資家や機関投資家(金融機関や投資会社など)にとってはメリットが薄いためです。実は日本株の個人株主は2割にも満たず、海外投資家や機関投資家は株主優待よりも配当金や株価の値上がりを狙って株式投資をおこなっています。株主の平等性の観点から株主優待を廃止する企業が出てきています。

また、株主優待の実施にはコストがかかるため、企業の業績が芳しくなければ優待内容が改悪されるかもしれません。株主優待だけを理由に株式を購入するのではなく、配当金や株価の上昇なども考えて投資しましょう。

3.元本割れする可能性がある

株主優待を受け取ったとしても株価が下がれば投資元本がマイナスになる可能性があります。株価は企業の業績や景気、為替の動き、世界情勢などで上下するため、長い目で見て経営が安定しているか、成長性があるかどうかも考慮しましょう。

先述のように株主優待制度を撤廃する企業が増えています。株主優待制度を撤廃すれば優待目当ての株主からの売却を招き、株価の下落を招きます。株主優待も投資の魅力の一つではありますが、優待以外の魅力も持った企業を探してみましょう。

株主優待制度も含めて魅力ある企業に投資しよう

今回は、株主優待制度とはをテーマに、優待制度を利用する手順、注意点などを詳しく解説しました。

株主優待制度は企業からモノやサービスを受け取れる個人投資家から人気の制度です。株式投資に興味のある方は、株主優待制度をきっかけに楽しく投資を始められるかもしれません。実際に形ある「モノ」が届くことで、株主になった実感も味わえます。

ただし、株主優待は改悪や廃止になる可能性も忘れてはいけません。株式投資は「絶対」がない不確実な世界です。株式を購入する際には株主優待だけを目的にするのではなく、配当金や株価の値上がりなども視野に入れましょう。

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  • 記事を書いた人 紗冬 えいみ

    1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®保有。証券会社、税理士事務所を経てWebライターに。現在はIFA事務所でアシスタント業務も行う兼業ライター。所属事務所のメルマガやFP事務所のブログ記事、金融メディアでの記事制作など年間250記事以上を執筆。モットーは「お金の世界をことばでひらく」。

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