“提供したいのは投資することで世の中が少しよくなるファンド。” ――「GOLD CROWD(ゴールドクラウド)」樋口広士氏インタビュー

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#事業者インタビュー
不動産クラウドファンディングソーシャルレンディング は着実な市場拡大が続いており、新規参入の事業者も増えています。そんな不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングのサービス事業者に焦点を当て、キーパーソンにインタビューを実施する当シリーズ。普段は表には出ないサービスの深い部分を“中の人”に直接語っていただきます。

今回は、不動産クラウドファンディングサービス「GOLD CROWD(ゴールドクラウド) を運営する、ゴールドトラスト株式会社の常務取締役・樋口広士氏にお話をうかがいました。

樋口 広士(ひぐち・ひろし)
ゴールドトラスト株式会社 常務取締役
1963年三重県生まれ。2003年アサヒグローバル株式会社に入社。賃貸管理部、土地活用営業部、注文住宅事業部、SPC(特別目的会社)ファンド組成に携わる。2007年ゴールドトラスト株式会社、ゴールドエイジ株式会社の取締役に就任。介護事業部、医療法人立上げ、医療・介護経営コンサルタント、高齢者施設建設フランチャイズ事業、SDGs産業廃棄物事業部、不動産特定共同事業ファンド企画組成等を経て、ゴールドトラスト株式会社常務取締役、スマイシアホールディング株式会社専務取締役に就任。

GOLD CROWD(ゴールドクラウド)とは?

ゴールドクラウド「ゴールドクラウド」は、2022年10月にサービスを開始した不動産クラウドファンディングサービスです。不動産クラウドファンディングはベンチャー企業が手がけるケースも多い中で、未上場ながら住宅建築や介護事業で実績あるゴールドトラスト株式会社が手がけています。また、業界初の介護型ファンドを5~8%の高利回りで募集するなど、サービス開始から間もないながらも注目を集めているサービスです。

「スルガ銀行問題」を契機に直接金融での資金調達を模索

――まずは「ゴールドクラウド」のバックグラウンドについて教えてください。

「ゴールドクラウド」は、スマイシアホールディング(HD)株式会社(本社:名古屋市)グループが展開する不動産クラウドファンディングです。スマイシアHD株式会社は、住宅の建て売り販売などを行うアサヒグローバルホーム株式会社(本社:三重県四日市市)、アパート・マンション・介護施設の建設や不動産クラウドファンディングなどを手掛けるゴールドトラスト株式会社(本社:名古屋市)、介護事業を手掛けるゴールドエイジ株式会社(本社:名古屋市)の3社を中心に構成されており、「ゴールドクラウド」はゴールドトラスト株式会社が中心となってサービスを展開しています。

グループの業歴としては、住宅事業からスタートして創業48年となりました。当社グループは“社会貢献”を企業理念に据えており、株主利益追求の方向にならざるを得ない株式上場は行っておらず、今後もその予定はありません。

――各事業の売上比率はどのような状態なのでしょうか? 

グループ全体としては、社員数が約1,500名で、売上高は約300億円です。売上高の内訳としては、住宅120~130億円・介護90億円・建設70~80億円というのがアバウトな数字です。当社グループは住宅建築からスタートして、マンション、さらに介護施設の建設に進出しました。そして、自社建設した介護施設で自ら介護サービスの事業者となっている点が最大の特徴といえます。上場会社含めて多くの介護サービス事業者がある中で、当社グループは全国では7~10位の規模で、非上場会社では全国第1位の介護サービス事業者です。年間4~5棟のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を建設して運営数を増やしており、今年の年末で50棟となる予定です。

――不動産クラウドファンディングの「ゴールドクラウド」を開始した経緯について教えてください。

2018年にスルガ銀行の不正融資問題が大きな社会的注目を集めたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。スルガ銀行問題は、不動産業界に大きな影響を与えました。スルガ銀行問題の発覚を契機に、銀行などの金融機関の融資の審査期間が大幅に長くなりました。介護施設の場合、それまで半年程度だった審査期間が約1年半になってしまったんです。当社グループの建設部門のビジネスモデルは、不動産オーナーにマンションや介護施設を建設していただく、というものです。しかし融資決定までの期間が長くなれば、良質な不動産を仕入れる機会損失が発生せざるを得ません。

またスルガ銀行問題を契機に、金融機関が不動産オーナーに対し自己資金を多く求めるようにもなりました。このような環境の変化があり、当社グループは直接金融の手法による資金調達手段を模索しました。さまざまな方法を検討した結果、不動産クラウドファンディングによる資金調達を始めることになり、2022年10月に1号ファンドの募集を行い現在に至っています。

不動産クラウドファンディングとして日本初の介護特化型ファンドを提供

――「ゴールドクラウド」は、不動産クラウドファンディング初の介護事業者案件を提供して話題になりましたね。

はい。不動産特定共同事業法(不特法)を活用して、不動産クラウドファンディングで資金調達を行った介護事業者は当社グループが日本初です。現状は介護特化型のファンド組成となっていますが、当社グループは“社会貢献”を理念にもっと幅広い視野で事業を展開しています。よって、“社会貢献”の理念に合致するなら、介護特化にこだわってはいません。

実際にゴールドトラスト株式会社は環境事業なども手掛けており、「ゴールドクラウド」による資金調達も、将来は幅広い分野で行うことを視野に入れています。とはいえ現状のクラウドファンディング事業は、専任が2名で兼務含めて3~4名の体制で運営しており、まずは着実に事業を展開する予定です。 

――「ゴールドクラウド」のこれまでの実績を教えてください。

ゴールドクラウドの2億円超えファンド

2022年10月に第1号の約1,600万円の分譲マンションファンドの募集からスタートして、これまで約5.3億円を調達しました。当サービスとしては過去最大の2億円のファンドが2023年10月に募集を終えたところです。いずれのファンドも応募金額は募集金額を超えており、投資家からご評価をいただいています。またファンドの利回りは、当初から年利5%以上出すことを目標としています。いずれのファンドも5%以上の予想利回りで募集しており、8%以上のファンドも2本募集しました。基本的に利回り5%以上で、たまに8%以上のファンドがある、というイメージで展開しています。ちなみに、一本だけ実験的に先着方式で募集したのですが、サーバーダウンなどのトラブルが発生したため、現在は抽選方式での募集に絞っています。 

――「ゴールドクラウド」のファンドは、御社グループが最終的に買取を行うことで投資家の資金を現金化するのが特徴ですね。

「ゴールドクラウド」のファンドは、運用期間が6カ月と1年です。第1~2号は6カ月のファンドでしたが、現在は1年のファンドが続いています。「ゴールドクラウド」のファンドの大きな特徴は、最終的に当社グループが投資家の持ち分を買い取る部分にあります。ファンドに組み込むものは、すでに完成して入居済みの物件が対象です。入居者からの家賃収入を配当原資とするインカムゲイン型のファンドとなるため、募集の段階で利回りが読める状態です。これにより、ファンドは無理に売却を行うことなく安定した利回りを出すことができ、また最後は我々が買い取ることもできます。このようなサイクルができるのは、当社グループが実際に介護事業を展開しているからに他なりません。

また期間終了後も再投資ができる仕組みであり、投資家は期間終了後にファンドの償還を行うか、そのまま投資を続けるかの選択が可能です。投資を続ける場合は、配当金のみお支払いして投資元本部分はそのまま次のファンドの投資に充当されます。これにより、投資資金は償還されたものの次のファンドでまた抽選競争に参加する必要がある、という状況を避けて継続的な投資ができます。

現在の会員数は約800名、2~3年で2,000名を目指すものの数字は追わない

――「ゴールドクラウド」の会員数などについて教えてください。

現在の「ゴールドクラウド」の会員数は約800名です。そのうち、当社の審査を経て投資可能な会員は500~600名で、実際に投資している方が約350名となっています。会員の約7割が投資可能で、さらにそのうちの約7割が実際に投資している、というイメージですね。

――会員の男女比や年齢層はどのようになっているのでしょうか? 

 会員の年齢層は20~80代までで幅広いものの、40~60代がボリュームゾーンです。男女比はおおむね男性7:女性3ですが、少しずつ女性の比率が増えつつあります。ゴールドトラスト株式会社には「100億円資産形成倶楽部」という、資産100億円を目指す会員組織があります。不動産オーナーなどの加入する会員組織ですが、「100億円資産形成倶楽部」の会員が「ゴールドクラウド」の会員に登録するケースも少なからずあります。それも影響しているのか、当社のファンドは平均すると投資家一人当たりの出資額が100万円を超えています。

10月に募集したファンドは、1,000万円の出資を行った方が複数人おられました。他の不動産クラウドファンディングは投資家一人当たりの平均投資額が数十万円と聞いており、当社ファンドに出資する投資家は、一人当たりの投資金額が他社に比べ多いのではないでしょうか。 

――今後の会員数の目標などはありますか? 

まずは、年内に会員数を1,000名とすることを目標としています。さらに次の段階としては、2~3年で会員数を2,000人とするのが目標です。先ほど、“投資できる会員が約7割で実際投資する会員が約7割”と申し上げましたが、この計算式だと、会員の約50%が実際に投資する計算になります。そして、当社ファンドの一人当たりの投資額(約100万円)を考えると、会員数2,000人で年間10億円のファンドを募集できる計算です。年間10億円の資金調達ができるようになると、ニーズがあっても資金的な制約から手掛けることができていない、都心型の非介護者向け高齢者住宅なども手掛けられます。よって、まずは会員数2,000人を目標に会員数を増やしたいと考えています。

ただし、着実にサービスを進める計画であり、単に会員数のみを増やすプロモーションは考えていません。「ゴールドクラウド」の会員数は800名とまだ少ないものの、優良な投資家には恵まれているという印象を持っています。今後会員数2,000人を目指しますが、引き続き、当社の“社会貢献”の理念に賛同いただける投資家を継続的に増やしていきたいですね。

社会貢献を重視しながらさまざまなファンドを提供したい

――今後のサービス展開の方向性などを教えてください。 

今後の当社のグループ戦略としては、10年で介護施設を現在の約2倍の100棟とする計画です。クラウドファンディング事業については、先ほど申した会員数2,000人が今後2~3年の目標です。会員数が2,000人を超えると年間10億円の資金調達が可能という計算が立つので、さまざまなチャレンジができると考えています。一方で、短期的な目標としては、月1本のファンド募集を継続的にできる体制作りを目指しています。これまでは、当社グループの拠点がある東海地区の物件でのファンド組成に絞っていましたが、今後は全国展開も課題と考えています。建築事業の拠点は全国に存在するため、全国展開するポテンシャルは充分あると自負しています。

ただし介護事業はいわゆるドミナント戦略を採っており、1つの拠点地域に複数施設を集中的に出店するため、進出地域は慎重に検討せざるを得ません。この点が、介護事業の全国展開のネックとなっています。また、現在はすでに入居済みの物件でインカムゲイン型のファンドを提供していますが、土地の仕入れからスタートする開発型のファンドや、賃貸物件のサブリース型のファンドを組成する構想もあります。今後はさまざまな種類のファンドを出していきたいですね。

――最後に、あらためて「ゴールドクラウド」のアピールをお願いします。 

 当社グループは“社会貢献”を重視しており、例えば先ほど紹介した「100億円資産形成倶楽部」では利益の10%を社会貢献に投じることを想定しています。介護事業は社会的ニーズが高く今後も成長が見込まれる分野ですが、介護施設の運営には施設長の育成などに高いノウハウと時間が必要です。よって当社では、人材の育成状況に合わせて出店をコントロールしています。介護事業は利益追求のみでは成立しえない事業であり、“社会貢献”という考え方が必要不可欠です。

また“社会貢献”という観点では、当社グループは介護事業以外にも環境事業などで貢献ができるサービスがあります。将来的には環境事業などでも、ファンドによる資金調達も手掛けていきたいと考えています。当社グループはまだクラウドファンディング事業へ参入が1年経過した状態であり、勉強中の面も多くあります。今後も“社会貢献”の使命感を持ってファンドを運営し、投資家の方が投資することで世の中が少しでも良くなるようなファンドを提供していきたいですね。(了)

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  • 記事を書いた人 石井 僚一

    大手証券グループ投資会社への勤務を経て、個人投資家・ライターに。株式及び為替などの金融・投資ライティングに加え、ビジネスライティングも手掛けている。Yahoo!トップページの掲載実績および書籍ライターの経験あり。証券外務員第一種資格保有。writer_ishii

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