山口発!不動産クラウドファンドで描く地方創生の未来。「田村ビルズクラウドファンディング」田村伊幸氏インタビュー
公開日 2025/01/06
最終更新日 2025/01/06
少額から投資でき、運用に手間がかからないことなどから、不動産クラウドファンディングに注目が集まっています。サービスに参入する事業者も年々増えており、さらなる市場拡大も期待されています。
当インタビューシリーズでは、そんな不動産クラウドファンディングのサービス事業者に焦点を当て、“中の人”にサービス運営の裏側を伺っていきます。
今回は2024年に新たに不動産クラウドファンディング事業に参入し、6月の1号ファンドから継続的にファンド募集を行っている、「田村ビルズクラウドファンディング」を手がける株式会社田村ビルズ代表取締役・田村伊幸氏にお話を伺いしました。
(取材日:2024年12月24日)
田村 伊幸(たむら・よしゆき) 株式会社 田村ビルズ 代表取締役 |
1969年生まれ。1992年に法政大学経営学部を卒業後、「株式会社船井総合研究所」に入社。1995年、「田村建材株式会社」に転職し、実務経験を積む。2009年には株式会社田村ビルズの代表取締役に就任し、経営の舵取りを担う。 |
田村ビルズクラウドファンディングとは?
田村ビルズクラウドファンディングは、山口に本社を置き建築・不動産事業などを行う株式会社田村ビルズが手がける不動産クラウドファンディングです。2024年6月に1号ファンドの募集を行い、その後も数百万円規模の小型ファンドの募集をコンスタントに行っている、新しい不動産クラウドファンディングサービスとなります。
画像の引用元:田村ビルズクラウドファンディング公式サイト
田村ビルズクラウドファンディングを展開する田村ビルズグループについて
ーー本日はよろしくお願いします。最初に田村ビルズクラウドファンディングを展開する、田村ビルズについて沿革や事業内容などを教えてください。
田村ビルズは明治時代のコンニャク芋の生産・販売からスタートしており、私で5代目の山口県山口市に本社を置く企業グループです。現在の売上構成は、建築・不動産事業が8割、環境事業と呼んでいる廃棄物処理事業が2割で、建築・不動産事業が中心となっています。
なお、山口県に加えて九州でも事業を展開しており、昨年福岡市にも本社を置き山口本社との2本社体制となっています。不動産・建築事業者としては、山口県内に最多の拠点を持つ事業者であり、前期のグループ全体の売上高は約68億円でした。
ーー御社が事業基盤を置く山口県の経済は現在どのような状況なのでしょうか?
山口県は瀬戸内海と日本海の2つの海に接する県です。瀬戸内海側は工業地帯などがあり景気状態は良好です。一方、日本海側は目立った産業がなく景気拡大の恩恵を受けられず、山口県の景気は二面性があります。
また、山口県は他府県と比べると県内に飛び抜けて大きな都市がなく、山口市、下関市、萩市、宇部市など中規模の都市に人口が分散しており、各自治体で若者の流出が大きな問題となり人口減少が進んでいます。
ーー不動産クラウドファンディング事業に参入した経緯や狙いを教えてください。
当社グループは、山口県下では最多の拠点を持つ不動産・建築事業者であり、山口県と運命をともにする存在です。山口県が発展すれば当社も発展しますし、山口県が停滞すれば当社も停滞せざるを得ません。先ほど申し上げた通り、山口県は各自治体で人口減少が進んでいます。県庁所在地の山口市も例外ではありません。また都市の規模としては、県庁所在地の山口市よりも下関市の人口が多く、さらに下関市は経済的には九州圏となります。
このような状況下、山口の地域活性化を目的に不動産クラウドファンディング事業に参入しました。山口県を地盤とする主力企業の1社として、山口県の活性化は当社にとって欠かせません。また県内に多数の拠点を持つ企業として、さらに不動産・建築という地域密着の事業を展開する企業として、県活性化の役割もあると感じています。
地域活性化を果たしたい、またそのために不動産クラウドファンドの活用で共感投資を呼び込みたい、との思いから、「社会貢献で資産形成。」をキャッチフレーズに不動産クラウドファンディング事業を開始しました。
ーー不動産クラウドファンディング事業への参入を決意したのはいつ頃ですか?
約2年前です。その後、不動産特定共同事業法(不特法)の許可申請を行い、許可が下りたのは2023年11月です。許可取得まで8~9ヵ月かかりました。そして2024年6月に1号ファンドの募集を行いました。
田村ビルズクラウドファンディングについて
ーーこれまでの田村ビルズクラウドファンディングの実績について教えてください。
今年6月の1号ファンド「ぶちええ山口1号ファンド 山内ヴィラージュ緑町」募集を皮切りに、これまで合計5本のファンド募集を行いました。
募集金額は360万円から670万円と他社ファンドに比べると小型なファンドで、期間も約3ヵ月と短くなっています。
ーー他社ファンドに比べると、小型かつ期間も短いのは何か理由があるのでしょうか?
山口に根差した当社にとって、不動産クラウドファンディング事業は失敗を許されない事業です。また、投資をしてくださる投資家の方は地元中心となりますが、投資に慣れない地元の方にご迷惑をおかけする訳にはいきません。
さらに当社にはファンド事業のノウハウの蓄積がなく、不手際があってはいけないと考えて、まずは慎重かつ着実にスタートしました。2024年の不動産クラウドファンディング事業はスタート段階、との位置付けです。
ーー既に償還されたファンドもありますが、今年から始まった不動産クラウドファンディング事業の感触はいかがですか?
予定通りにスタートして着実に進んでいる、と感じています。既に2本のファンド償還も無事に終えており、ファンドの募集から償還まで一連の流れを2024年中に経験できました。
ーーファンドの保有物件は期限到来後、どのようになるのでしょうか?
ファンドに組み入れた物件は元々当社が保有する収益物件でもあり、ファンドは予定通りの利回りで着地しました。
その後の物件は、1件については別ファンドでロールオーバーを行い、1件については当社で引き取りました。当社としてはファンド終了時のオペレーションも手探りの部分がありましたが、無事に想定通りの利回りでファンドの払い戻しまでを終えました。
地域活性化ファンドとしての「やまぐち応援1号ファンド 米屋町商店街 LFB TOWER」について
ーー最新の「やまぐち応援1号ファンド 米屋町商店街 LFB TOWER」は他のファンドとは異なる性格を持ちますが、内容を教えてください。
「やまぐち応援1号ファンド 米屋町商店街 LFB TOWER」は地域活性化を目的に立ち上げたファンドです。
山口活性化を目的とする共感投資を呼び込むため、1口1万円、合計150万円、期間1年で募集を行いました。ファンドの内容としては、山口市内のメインストリートに面し、市役所近くで当社が保有するビルの地下1階フロアから発生する賃料収入を配当原資とするものです。
ーーどのような部分が地域活性化につながるのでしょうか?
調達した資金でリノベーションをしており、また音響設備や展示設備などもあることから、イベントや展示スペースとして利用可能です。投資対象の地下1階は『LFB HUB』の名称で、地域コミュニティの活性化を目指し、定期的にイベントや交流の場を提供し、人々が繋がる場所及び機会を創出しています。
『LFB HUB』のイベントなどで、山口市内に人を呼び込むことが市街地の活性化に繋がると考えています。またファンドの投資家の方は、ビルの1階と2階にある『LFB CAFE』でドリンク1杯無料のサービスを受けられる、というのも特徴です
ーー不動産クラウドファンディング事業全体のなかで「やまぐち応援1号ファンド 米屋町商店街 LFB TOWER」の位置付けはどのようになっているのでしょうか?
当社としては「やまぐち応援1号ファンド 米屋町商店街 LFB TOWER」のような地域活性化ファンドと、通常の不動産ファンドは、不動産クラウドファンディング事業の両輪と考えています。地域活性化を目指して同事業を立ち上げてはいますが、不動産を対象とするファンドと異なり、地域活性化案件はコンスタントにある訳ではありませんし、一定の収益も見込めるのが前提です。
例えば、山口市内には映画館がなく、県庁所在地に映画館のない全国でも珍しい市です。ファンドで映画館を立ち上げる、というアイディアもありますが、映画館単独での収益化は簡単ではありません。
しかし、地域交流スペースを設ける形なら収益化できる可能性もあります。コンスタントに不動産ファンドを立ち上げつつ、地域活性化ファンドも企画と採算性を見ながら適宜立ち上げる、という2軸での事業展開を予定しています。
当初から人気化、ファンドの募集と出資者について
ーー不動産型のファンドに加え、「やまぐち応援1号ファンド 米屋町商店街 LFB TOWER」も募集金額を大幅に上回る応募金額となりましたが、プロモーションなどを行ったのでしょうか?
特別なプロモーションはしていません。先ほど申し上げたように、不動産クラウドファンディング事業は当社としても初の試みであり、投資家に迷惑はかけられない、との考えの下で小さく確実にスタートさせています。ただし蓋を開けてみると、ファンドには予想以上の応募がありました。
ーー予想以上に多くの応募があった理由はどこにあったとお考えでしょうか?
ご祝儀相場があったこと、もの珍しさがあったこと、地元では当社に一定の知名度があったこと、このあたりが理由ではないでしょうか。もの珍しさの観点では、当社が中国・四国地方では初の不動産特定共同事業法(不特法)の県知事許可を取得した事業者です。
ーー出資者の地域別の比率はどのような状態でしょうか?
不動産クラウドファンドへの出資者、というと首都圏の投資家のイメージもありますが、当社ファンドの出資者は首都圏が3割、西日本が7割です。そして西日本のほとんどが中国・四国地方の方です。その中で、ファンド募集回数が増えるとともに山口県の方の割合が減少しています。
ーー他地域の方にも田村ビルズクラウドファンディングの浸透が進んでいるという理解でよいでしょうか?
その通りです。投資家の登録者数が増えた結果、山口県の出資者の割合が相対的に減少しています。現在も着実に登録者数は増加中です。
ーーちなみに、すべてのファンドが「抽選式」で募集されている理由は何ですか?
ファンドの募集形式には「先着順」と「抽選式」の2種類がありますが、当社は地方貢献をコンセプトにしており、平等という観点を重視して抽選式としています。そのため、当面は抽選式でファンド募集を行う予定です。
2025年が本当のスタート、不動産クラウドファンディング事業の今後の展望について
ーー不動産クラウドファンディング事業の今後の展望について教えてください。
2024年6月に1号ファンドを立ち上げ、その後、ファンドの償還や地域活性化ファンドの立ち上げを経験しました。
不動産クラウドファンディング事業は、当初から「小さく確実にスタートする」という方針で進めており、2024年は助走期間と位置づけています。本格的な展開は2025年からと考えています。
ーー2025年はどのような施策を考えておられますか?
不動産ファンドと地域活性化ファンドという「2軸」の基本方針は変えませんが、次のような方向性で取り組みを進める予定です。
まず、より多くの投資家に参加いただけるように、ファンドの対象となるプロジェクトの幅を広げていきます。また、投資家のニーズに応える形で、資金運用の期間についても現状より長めのスケジュールを検討しています。
先ほど、地域活性化ファンドによる「共感投資」のお話をしましたが、地方にとっては不動産の流動化も重要であり、不動産の流動化は地域活性化の大きなキーワードです。地方の不動産は固定化が進んでいるものの、流動化することで人・モノ・金の動きが生じます。コンスタントに不動産ファンドを投入して、山口の不動産の流動化を後押ししたいですね。
気軽に地方の物件に投資してもらえる環境を整備して、多くの方に地方の物件に興味を持っていただきたいと思っています。
ーーファンドの運用期間を長くするとのお話もありましたが、どの程度の期間をイメージしておられますか?
現在、投資家の方から「3ヵ月では短い」というご意見をいただいています。他社の事例を参考にすると、不動産クラウドファンドでは1年程度の運用期間が多い傾向にあります。当社でもそのような期間を目安にしつつ、投資家のニーズを考慮した期間設計を進めていきたいと考えています。
ーー今後のプロモーション予定などはありますか?
2025年1月6日から31日まで、「お年玉キャンペーン」を実施予定です。
期間中に出資者登録をしていただいた方全員に、アマゾンギフト券1,000円分をプレゼントいたします。
このキャンペーンを通じて、より多くの方に地方物件への投資に関心を持っていただくきっかけになればと考えています。
ーー最後に読者の方にメッセージをお願いします。
地方の活性化は、地方創生という観点で国策ともなっています。当社は不動産の流動化、そして共感型の地域活性化ファンドで、地域活性化のモデルを山口から作っていきたいと考えています。当社の取り組みが成功し、同様の取り組みが全国に広まることで、当社のある中四国以外の東北地方などでも地域活性化が進むのではないでしょうか。
また地方活性化には、不動産の流動化も重要です。地方物件への投資に興味を持っていただき、まずは少額でふるさと納税のように当社不動産クラウドファンディングサービスを利用していただければと思います。
不動産クラウドファンドを活用した、地方活性化のムーブメントを山口から起こしたいですね。
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