スマートコントラクトとは?仕組みや活用事例をわかりやすく解説

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#用語解説
スマートコントラクトとはブロックチェーン上における自己実行型契約のことです。設定されたルールに従って取引を自動実行するため、確実で透明性の高い業務の遂行が可能になります。

この革新的な技術は金融業界だけでなく、さまざまな業界で注目を集めています。そこで本記事では、スマートコントラクトについて詳しく解説していきます。

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で自動実行される契約のことです。契約履行管理が自動化されることによって中間業者を排除でき、取引の透明性や安全性を高めることができます。また、契約の追跡も可能です。

近年では金融業界や不動産業界などのさまざまな分野でスマートコントラクトが利用されており、今後もさらに普及していくと予想されています。

スマートコントラクト開発の歴史

スマートコントラクトのアイデアは、1990年代初頭にNick Szabo氏によって提唱されました。当時の目標は契約の自動化による信頼性の向上とコスト削減にありました。Szabo氏はスマートコントラクトの概念の例として自動販売機を挙げ、「購入したい商品を選択して代金を投入すれば、商品を購入者に渡すというルールに従って自動実行される」と説明しています。

2008年にはサトシ・ナカモト氏がビットコインのブロックチェーン技術を発表し、2013年にはVitalik Buterin氏がイーサリアムに実装可能なスマートコントラクトを開発して構築が広がりました。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは「分散型台帳技術」の一種で、その中でも特に広く利用されている仕組みです。データをブロックと呼ばれる単位に分け、それらをつないで連結したチェーン状のデータ構造にすることで、データの改ざんを困難にするとともに、セキュリティを強固にし不正アクセスなどを防ぐことができます。

従来の方法では中央集権的な第三者機関が取引履歴を管理して信頼性を担保していましたが、ブロックチェーンは全参加者が取引履歴をコピーし続ける「自律分散システム」であるため、不正や改ざんが容易ではなく、公正な取引と高い信用度の確保が可能です。

「ブロックチェーン=仮想通貨の技術」とイメージする人も多いかもしれませんが、近年では金融業界や不動産業界などのさまざまな分野で利用されており、今後は物流や医療など、さらに多様な分野へ普及が拡大していくものと予想されています。

スマートコントラクトのメリット

3つスマートコントラクトの主なメリットを3つご紹介します。

1.高速で正確な処理が実現する

契約が自動的に処理されるため、人為的なミスがなく効率的です。また、ブロックチェーン上で実行されるスマートコントラクトは、中央集権的なシステムよりも高速で処理できます。

2.不正を防止できる

組み込まれたルールに沿って自動的に実行されるスマートコントラクトは透明性が高く、改ざんが困難です。従来の方法と比較すると不正を防止できる可能性が高まります。

3.コストを削減できる

スマートコントラクトの自動処理によって業務プロセスが効率化され、コストの削減が期待できます。特に人的コストの削減は大きなメリットになるでしょう。削減されたコストは、サービスの充実や料金の値下げといった形で利用者に還元される可能性もあります。

スマートコントラクトのデメリット3つ

利便性と高セキュリティでメリットのあるスマートコントラクトですが、デメリットもあるので確認しておきましょう。

1.スケーラビリティの課題

スマートコントラクトのプラットフォームは処理能力が限られており、多くのトランザクション(取引)を処理するのに時間がかかることがあります。この問題に対処するため、スケーラブルなブロックチェーン技術の採用やサイドチェーン技術、既存のブロックチェーンを拡張する技術などが開発されています。

2.プログラムの不具合による問題

スマートコントラクトは自動的に実行されるため、プログラムに不具合がある場合は、その不具合が永続的に実行される恐れがあります。実運用の前には慎重なテストと監視が必要です。

2.不十分な法整備

自己執行性の高さや実行後の取消し不可といった特性から、契約違反が発生した際の責任所在について明確なルールが整備されていない面があります。

また、意図しない動作をした場合の責任についても議論が活発化しています。いずれにしても、従来の法的枠組みで対応できないケースがあるということは覚えておきましょう。

スマートコントラクトの実装例

スマートコントラクトは、次のような業界で活用されています。
  • 銀行業界
  • 保険業界
  • エンターテインメント業界
  • 不動産業界
  • DeFiレンディングサービス
それぞれ詳しく見ていきましょう。

銀行・証券業界

銀行業界では、スマートコントラクトを用いた決済システムによって送金処理を自動化し、処理時間や手数料の削減を実現しています。また証券業界では、有価証券をトークン化した「ST(セキュリティトークン)」を設計して発行・販売しています。このような取り組みは、業務や管理の効率化や新たな資金調達方法として注目を集めています。

保険業界

スマートコントラクトを用いた保険商品は、従来の保険商品よりもより迅速で透明性が高く、保険金の請求手続きも簡便になります。

また、スマートコントラクトによって契約内容が自動的に処理され、保険金が自動的に支払われるケースもあります。膨大な請求処理の自動化による業務効率化の実現は、保険業界と加入者にとって大きなメリットといえるでしょう。

エンターテインメント業界

アートやゲームといった分野で活用が広がっているのが「NFT(ノンファンジブルトークン/非代替性トークン)」です。NFTは代替不可とされるトークンで、一般的な暗号資産などとは異なり、トークンそれぞれが区別可能なデジタル資産を表します。同じものが複数存在することがなく、個々のトークンにはそれぞれ独自の所有者がいるのも特徴です。 

NFTはアート作品やゲームアイテムなど、さまざまなデジタル資産をトークン化できるのが特徴です。ゲーム内で希少なアイテムのNFTに価値を付け、ブロックチェーン上で保有者の移転を記録すれば、ユーザー同士のアイテム交換や売買も可能です。近年では、ゲームアイテムやアート作品のNFTが高額で取引されたという事例も話題になっています。

不動産業界

不動産の契約書管理や処理に時間と費用がかかりますが、スマートコントラクトを用いることで処理の自動化やコスト削減を実現させることができます。申し込みや送金の確認、契約書の送付など、人の手で行っていた取引がすべて自動化できれば、煩雑な手続きの省略と大幅なコスト削減も可能です。

DeFiレンディングサービス

スマートコントラクトによって、「DeFi(ディファイ/分散型金融)」と呼ばれる、仲介者なしで暗号資産(仮想通貨)を貸借できるサービスが構築されています。

預けた資産の取引はデータベースで確認可能です。仲介はスマートコントラクトで定義されているため透明性も担保されます。

スマートコントラクトを開発・利用できる暗号資産とブロックチェーン

暗号資産とスマートコントラクトといえばイーサリアムが代表的ですが、イーサリアム以外でもスマートコントラクトを作成・利用できます。

EOS(イオス)

EOS(イオス)も、スマートコントラクトを開発できるブロックチェーンとして広く知られています。イオスの特徴は、高速でスケーラブルなブロックチェーン技術を提供していることです。イオスは分散型アプリケーションの開発や、新しいビジネスの実現に向けたプラットフォームとしても注目されています。

トランザクション発行時の手数料は開発者側にかかるため、ユーザーの参入ハードルは高くありません。ユーザビリティにも優れています。なお、イーサリアムはスマートコントラクトを記述するためのプラグラミング言語として主にSolidityを使いますが、イオスはC/C++をベースとした独自のコンパイラで開発されます。

Hyperledger Fabric(ハイパーレジャー・ファブリック)

Hyperledger Fabric(ハイパーレジャー・ファブリック)も、スマートコントラクトの開発に使用されるDLT(分散型台帳技術)プラットフォームのひとつです。モジュール式のブロックチェーン・フレームワークで、アプリケーションやソリューションの開発基盤として幅広い企業に利用されています。

プライベート・ブロックチェーンも構築できるため、組織内の機密データを保護しながらスマートコントラクトによるビジネスプロセスの自動化が実現します。

Stellar(ステラ)

Stellar(ステラ)は、スマートコントラクトの作成・修正・更新を簡易的に行えるブロックチェーンです。開発には、広く普及しているJavascriptやPythonなどの言語を利用して作成できます。特殊なプログラミング言語は不要です。そのため、使用した言語に対応している環境があれば簡単に実行できます。

スマートコントラクトの活用で安全スピーディーな取引が実現

今回は、スマートコントラクトとは何かについて、詳しく解説しました。

スマートコントラクトは、従来の契約方法に比べて信頼性の高い自動取引を可能にするとともに、人為的なミスや不正を防ぎながら契約の履行が保証されることも大きな特徴です。解決すべき課題は残されていますが、今後この技術の普及と浸透は高い確率で実現されるでしょう。

すでにスマートコントラクトは、金融や不動産、エンターテインメント業界など、さまざまな分野で活用されています。将来的には、スマートコントラクトによって自動化されたビジネスプロセスが一般的になるかもしれません。

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  • 記事を書いた人 山岡 光

    フリーライター/校正者。編集プロダクション勤務を経て独立。投資経験を活かした不動産・株式・仮想通貨・FX・クレジットカード分野の記事執筆経験多数。わかりやすく読みやすい記事の執筆が得意。投信からグルメ記事まで幅広く作成。

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