不動産クラウドファンディングの償還遅延とは?発生したらどうなる?

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#用語解説 #リスクマネジメント
不動産クラウドファンディング投資を行う上で、「元本割れ」ほどではありませんが起こってほしくない事態として「償還遅延」があります。

不動産クラウドファンディングにおける償還遅延とはどういった事態で、なぜ起こるのでしょうか。また、過去どの程度発生しているのでしょうか。

さらに、発生した場合どういった影響があり、それを避けるにはどうしたらよいのでしょうか。詳しく解説します。

不動産クラウドファンディングの償還遅延とは?

不動産クラウドファンディングのファンドは、基本的に募集時点で6カ月や12カ月など、運用期間があらかじめ決まっています。このように決められた運用期間が過ぎてもファンドの運用を終了できず、投資資金の償還(返済)や配当金の支払いが行われないことを「償還遅延」といいます。

サービス事業者によっては償還遅延のことを「(ファンドの)期間延長」と呼ぶこともありますが、基本的には同じ意味です。

償還遅延期間中の配当は発生するのか

償還遅延期間中も、不動産の運用益が発生していれば配当が支払われる場合があります。一方で、その期間の配当がまったく支払われないこともあり、ケースバイケースです。

なお、ソーシャルレンディングにおいては、返済遅延中、ペナルティとしてその日数に応じて「遅延損害金」を徴収するところもありますが、不動産クラウドファンディングにおいてはそうした仕組みはありません。

不動産クラウドファンディングの償還遅延はどんなときに起こる?

不動産クラウドファンディングでは、基本的に投資対象の不動産物件が売却された時点で償還が行われます。売却先は、第三者であるケースのほかに、運営会社や次の継続ファンドであるケースもあります。

償還遅延が発生しやすいのは、売却先が第三者であるケースです。投資対象の不動産物件が予定通り売却できない場合には償還遅延が発生する可能性があります。

だたし、このような場合には、運営会社自身が物件を買い取ることにするケースもあります。そのため、予定通り売却できなくても償還遅延が発生しないこともあります。

不動産クラウドファンディングで償還遅延が起きるとどうなる?

償還遅延が起きるとどうなる?不動産クラウドファンディングで償還遅延が発生した場合には、以下の4つのパターンが考えられます。

パターン1.遅延中も配当が発生し、かつ最終的に償還される

当初想定していた運用期間が延長されるものの、延長された期間も配当が発生し、なおかつ運用終了後には元本・配当が償還されるパターンです。償還自体は予定よりも遅くなるものの、延長中も配当が発生するため、投資家としての金銭的な損失はありません。

もちろん、延長中は不安な気持ちになりますが、結果的には投資としては問題ないパターンといえます。

パターン2.期限より遅れるが最終的には償還される

当初想定していた運用期間が延長され、延長中は配当が発生しないものの、当初の配当は確保され、かつ償還もされるパターンです。

想定通りの配当は得られ元本の償還もされるため、直接的な損はしていませんが、延長されたぶんは配当がないためトータルの利回りは低下することになります。

本来であれば延長した期間に別の投資に回せた可能性があることから、延長期間が長くなるほど投資効率の低下や機会損失につながります。とはいえ、投資家としては比較的ダメージの少ないパターンといえます。

パターン3.元本割れが発生する

償還遅延が続いた後に、結局元本割れとなってしまうパターンです。ファンドの対象不動産が想定通りの価格で売却できなかった場合はこのパターンになる可能性があります。

明確に損失が出ることになるため、投資家としては絶対に避けたいパターンであるといえます。

パターン4.償還遅延が続き、不良債権化する

償還遅延の発生後、償還にも元本割れにもならず、いつまでも遅延が続くパターンです。

不動産物件がいつまでも売却できなかったり、新規不動産の開発案件において何らかの理由で開発が予定通り進まなかったりした場合にはこのパターンになる可能性があります。

損失が確定していないため、まだ元本が償還される可能性は残されますが、このようなケースでは延長しているぶんの配当は発生しないのが一般的であるため、その期間中は資金が宙に浮いた状態になってしまいます。

投資家としては非常にストレスがたまるパターンといえるでしょう。

償還遅延による影響

不動産クラウドファンディングで償還遅延が起きると、投資家には大きく2つの影響があると考えられます。

1.資金計画が崩れる

予定していた期日に資金が償還されないことにより、その資金をその後別の用途に使用しようとしていた場合、計画に支障を来す可能性があります。

例えば、償還された資金を旅行や大きな買い物に充てようと予定していた場合、その計画が崩れてしまうことにもなりかねません。

2.トータルの利回りが低下する

資金が予定よりも長く拘束されてしまうことになり、利回りの低下につながる可能性があります。さらに、より条件のよいファンドへの再投資ができなくなり、機会損失が生じることもあり得ます。

過去の不動産クラウドファンディングの償還遅延はある?

不動産クラウドファンディングで償還遅延が発生する確率は決して高くはないものの、実際にはいくつか発生しています。

property+(プロパティプラス)

プロパティプラス」の「Branche桜山Ⅲファンド」シリーズの複数のファンドで過去に運用期間延長がありました。ただし、延長期間中も配当は発生しており、結果的には投資家の損失は免れています。

TOMOTAQU(トモタク)

トモタク」では、「トモタクCF11号(築地7丁目プロジェクトⅠ)」「トモタクCF17号(築地7丁目プロジェクトⅡ)」で運用期間の延長がありました。このファンドは同じ物件を対象とした開発案件でしたが、工事中の不測の事態により竣工が遅れたことでファンドが延長になったものです。

ただ、こちらも延長期間中も配当は発生しており、投資家の損失はなく現在は無事に償還されています。

ちなみに「トモタク」では、運用期間の延長が複数発生していますが、公式ではこれまでの償還遅延は「0件」としています。配当の発生しない「遅延」と発生する「延長」を明確に別物と定義しているものと考えられます。

償還遅延を避ける、あるいは影響を抑えるには

このように投資家にとって様々な影響のある償還遅延ですが、これを避ける、あるいはせめて影響を抑えるにはどのような対策があるのでしょうか。

1.事業者の実績を確認する

不動産クラウドファンディング事業者において、過去に元本割れや償還遅延がどの程度発生しているか確認しましょう。多少発生することはやむを得ませんが、あまりに多く発生しているようであれば、その事業者での投資は避けたほうが無難でしょう。

2.過去に当局からの行政処分などを受けていないか確認する

不動産クラウドファンディング事業者において過去に当局からの行政処分などを受けていないか確認しましょう。もし受けていたとすれば、どういう理由でどういった処分を受けており、その後指摘事項は改善されたのかについても確認したほうがよいでしょう。

何度も行政処分を受けており、改善が見られないような事業者であれば、投資は控えたほうがよいかもしれません。実際に不動産クラウドファンディング事業者の中には過去に当局から行政処分を受けているところもありますので、事前に調べておくことをおすすめします。

3.優先劣後方式を採用しているファンドを選ぶ

不動産クラウドファンディングには、「優先劣後方式」が採用されているファンドがあります。

優先劣後方式が採用されているファンドでは、対象不動産に対する出資分が優先出資分と劣後出資分に分かれています。投資家が出資した資金を「優先出資分」、事業者自身が出資した資金を「劣後出資分」といいます。優先劣後方式では、仮にファンドで損失が出てしまった場合に、劣後出資分からその損失を被ることになります。

例えば、優先出資分が70%・劣後出資分が30%のファンドで、万が一元本割れが発生した場合、その損失はまず劣後出資者が被ることになります。その損失が全体の30%を超える場合にはじめて優先出資者が損失を被ることになります。

つまり、優先劣後方式の採用されているファンドに投資することで、償還遅延の発生時にも損失を抑えられる可能性が高まるといえます。

4.投資対象を分散する

投資対象のサービス事業者やファンドを分散することで、万一償還遅延が発生した場合でも、その影響を抑えることができます。もし条件のよいファンドがあったとしても、それに全額を投資するのは避けましょう。

5.余裕資金で運用する

もし償還遅延が発生しても慌てないよう、投資は当面使う予定のない余裕資金で行いましょう。予定通り資金が返ってこなかった場合でも資金繰りに困ることがないようにしたいものです。

不動産クラウドファンディングには償還遅延のリスクもある

今回は不動産クラウドファンディングの償還遅延について詳しく解説しました。

償還遅延は投資家としては起きてほしくない事態ですが、不動産クラウドファンディング投資を行う以上、完全に避けては通れないリスクでもあります。

発生時の影響や対策について理解した上で、分散投資なども行いながら適切なリスクマネジメントを行うようにしましょう。

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  • 記事を書いた人 ゴクラクJOURNAL編集部

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