「悪いインフレ」スタグフレーションとは?要因や生活への影響、対策を解説
公開日 2023/10/30
最終更新日 2023/10/30
2022年以降、ガソリンや食料品などの生活必需品が続々と値上がりし、私たちの生活を圧迫し始めています。賃金は横ばい状況にも関わらず物価上昇によって支出ばかり増えていく状態のことをスタグフレーション と言います。
今回は、スタグフレーションの意味やその要因、そしてスタグフレーションが与える影響と対策について解説していきます。スタグフレーションを一個人が解消することはできませんが、その影響を少しでも抑えられるよう、個人ができる対策について知識を身につけておきましょう。
スタグフレーションとは
スタグフレーションとは、景気が停滞しているのにもかかわらず、物価が持続的に上昇する現象をいいます 。景気の停滞を意味する「スタグネーション(stagnation)」と物価の上昇が続いてお金の価値が下がることを意味する「インフレーション(inflation)」を組み合わせた言葉です。
本来であれば、景気の停滞時は需要が落ち込むことからデフレーション(物価下落)を引き起こします。しかし、景気が後退していても物価が上昇することがあります。このような状態を「スタグフレーション(stagflation)」といいます。
不況時には当然、賃金は上がりません。それにも関わらず、生活必需品などの物価が上がり続け支出は増えていくというスタグフレーションは、消費者の生活を圧迫してしまう厳しい経済状況なのです。
スタグフレーションが起こる原因
スタグフレーションが起きる主な要因は、石油や食料などの供給不足が挙げられます。その背景には主に、戦争・紛争、政治混乱などがあります。
例えば、1970年代に日本で起きたオイルショックは、第4次中東戦争の影響を受けて原油供給危機が世界規模で発生しました。これにより、ガソリンやプラスチックなど様々な生活必需品の原料である石油の価格引き上げと供給制限がなされたのです。ガソリンの値上げにより輸送費が高騰する他、生活必需品も品薄状態となり物価が上昇し、日本でもスタグフレーションとなりました。
また、急激な通貨安もスタグフレーションを引き起こす要因のひとつです。急激に自国通貨の価値が下がると、様々なモノの輸入価格が必然的に高騰します。過去にイギリスでは、国民投票でEU離脱が決定した2016年からポンドの価値が大暴落しました。輸入品を含めた物価が上昇するとともにイギリス国民の所得は減少し、物価上昇と景気低迷によりスタグフレーションを引き起こしました。
日本は現在スタグフレーションにある?
日本は今、スタグフレーションの様相を強めているといえます 。昨今、日本の物価上昇はとどまるところを知りません。連日の値上げ報道や日々の買い物など、日常生活のなかで物価上昇を実感している方も決して少なくないでしょう。
そもそも新型コロナウイルスの感染拡大によって供給混乱が生じたことで物価上昇が起きていたなかで、ロシアのウクライナ侵攻によって原油や小麦など原材料の供給不足による価格高騰が生じました。
さらに、アメリカの利上げによって円安・ドル高が急激に進み、多くを輸入に頼る日本は生活必需品を含むさまざまなモノやサービスが次々に値上げされる状況となっています。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックで例に漏れず経済的な大打撃を受けた日本ですが、現在は入国制限緩和や全国旅行支援など経済活動の再開を促す措置が政府によって講じられています。このような後押しを受けて徐々に個人消費が回復することを期待されていますが、急激な物価高が逆風となってリベンジ消費とよばれるような力強い回復には至っていません。
スタグフレーションが与える「生活」への影響と対策方法
スタグフレーションが生じると、消費者の生活にも影響を与えます。では、具体的にはどのようなことが考えられるのでしょうか。
スタグフレーションの生活への影響
スタグフレーションは収入が増えないにも関わらず物価高により支出が増加してしまう状況であるため、まず家計を圧迫してしまいます。特に、生活必需品や電気・ガスといったインフラなど生活に必要なものの節約は難しいため、消費者の負担感は大きくなります。
これまでと同じ生活水準のままでは手元に残るお金は減ってしまうので、節約や我慢によるストレスが増えることも考えられます。買い控えなどにより日々の暮らしの充実度や幸福度にも影響するといえるでしょう。
また、景気の停滞により企業の経営環境は悪化し、雇用状況の悪化ももたらしかねません。ただでさえ物価高が進むスタグフレーションの状況下で雇用環境まで厳しくなると、消費者の生活はさらに苦しい状況に追い込まれることになるでしょう。
個人でも可能な対策方法はある?
不況により収入が増えないにも関わらず物価が上がり続けるスタグフレーション下では、生活水準が変わらないままだと支出だけが増え、貯蓄や投資にまわす資金を確保できません。まずは、日々の支出を見直して可能な限り出費を抑えましょう。
また、不景気により収入が増えにくいスタグフレーション下でも、収入を増やすことは実は可能です。その方法は、本業だけでなく副業によって収入の柱を複数にすることです。最近では副業を解禁する企業も増えているため、空いた時間を副業に充てて収入を底上げすることがひとつの対策として挙げられます。
そして、急激な通貨安(円安)が要因の一つとされるスタグフレーションでは、日本円だけでなく外貨も保有しておくことが有効な対策といえます。例えば、日本円だけでなく米ドルでも資産を持っておけば、円安ドル高の状態になったとしても価値が上がる米ドルも併せ持っていることから、リスクを分散できている状態となります。
スタグフレーションが与える「投資」への影響と対策方法は?
スタグフレーションは、金融市場にも影響を与えます。投資家は、その影響と対策についても理解しておく必要があります。
スタグフレーションの投資への影響
スタグフレーションが発生すると、一般的に株価は下落する傾向にあります。スタグフレーションの状況下においては、原材料コストが増加することや消費者の買い控えなどによる売上低下などで経営環境は悪化しやすく、企業の業績を反映する株価も下落する動きとなります。
また、金利は上昇しやすくなるといえます。スタグフレーション下では、物価の高騰により消費者の資金需要が高まるためです。また、物価高騰の流れを抑制するために利上げが行われる傾向にあることも金利が上昇しやすい要因の一つです。
ただし、利上げは景気の低迷を招く可能性があるため、スタグフレーションに陥ったからといって必ずしも利上げに動くわけではありません。スタグフレーションを引き起こした要因などによっても各国の中央銀行の対応は変わるでしょう。
個人投資家がとるべき対策方法は?
投資におけるスタグフレーション対策として、インフレやデフレに強いとされる資産に投資することをおすすめします。例えば、不動産は物価の影響を受けにくく、不況時でも価値が下落しにくいという特徴をもちます。大きな資金が必要となる不動産投資は難しいという方は、不動産クラウドファンディング やREIT(リート/不動産投資信託) などを活用してみましょう。これらは、数万円からでも不動産への投資ができる商品です。
また、「有事の安全資産」ともいわれる金への投資もスタグフレーション下では効果的だといえます。金そのものが無価値になることはないため、テロや戦争、災害など地政学リスクが高まる局面などで需要が高まる傾向にあります。そのため、スタグフレーションの局面でも価値が上昇しやすい資産といえます。
事前の備えで自身の資産を守ろう
スタグフレーション は、景気が低迷しているのにもかかわらず物価が上昇している減少です。生活必需品の供給不足や急激な通貨安などが原因で引き起こされます。スタグフレーションの状況下では、収入は変わらないのに生活費の負担が増えてしまい、私たちの生活は苦しい状態となります。
日本の資産だけでなく外国の資産もあわせ持って資産を分散させることや、物価の影響を受けにくい資産に投資するなどの対策を考えて、事前に備えておくことが重要です。
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