“投資家目線で沖縄のファンとゆっくり着実に成長したい”ーー「Pocket Funding(ポケットファンディング)」・浦崎直壮氏インタビュー
公開日 2023/11/22
最終更新日 2023/11/30
当シリーズでは、そんな不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングのサービス事業者に焦点を当て、キーパーソンにインタビューを実施しています。普段は表には出ないサービスの深い部分を“中の人”に直接語っていただきます。
今回は「Pocket Funding(ポケットファンディング)」を運営する、ソーシャルバンクZAIZEN株式会社の代表取締役・浦崎直壮氏にお話をうかがいました。
浦崎 直壮(うらさき・なおたけ) ソーシャルバンクZAIZEN株式会社 代表取締役 |
1967年1月4日生まれ。沖縄県那覇市出身。沖縄県内金融機関で10年間、個人・法人への融資開拓に従事したのち、2001年、生命保険会社へ転職し、顧客のライフプランに基づく保険設計・資産形成の提案業務に携わる。また同社在籍中に営業所長業務(リクルート・人材育成)も経験する。2018年、ソーシャルバンクZAIZEN株式会社に入社し代表取締役に就任。同年、沖縄県内初のソーシャルレンディングサービス「Pocket Funding(ポケットファンディング)」をスタート。 |
Pocket Funding(ポケットファンディング)とは?
「ポケットファンディング」は、2017年8月に第1号ファンドの募集を開始した、ソーシャルレンディングサービスです。運営会社であるソーシャルバンクZAIZEN株式会社は沖縄県浦添市に本社を置く企業で、沖縄や石垣島などに関係するファンドを数多く提供しています。“ポケットマネー” で気軽に投資を
――本日はよろしくお願いします。最初に「ポケットファンディング」のバックグラウンドやソーシャルバンクZAIZENの事業内容について教えていただけますか?「ポケットファンディング」は、ソーシャルバンクZAIZEN株式会社がサービスを提供するソーシャルレンディングサービスです。そしてソーシャルバンクZAIZEN株式会社は、株式会社財全GROUPのグループ企業となります。財全グループは沖縄で不動産事業・不動産ファイナンス事業・医療福祉の支援事業・エネルギー事業・資産運用事業を手掛ける7社から構成される企業グループで、創業29年となりました。グループ会社が7社ありますが、2社が不動産関連の事業を手掛けています。さまざまな事業を手掛ける財全グループですが、ファクタリングや不動産担保ローンなどの不動産ファイナンス事業が中心で、グループの社員数は約40名(2023年10月時点)です。
――「ポケットファンディング」のサービス開始の経緯を教えてください。
ファクタリングや不動産担保ローンを手掛けてきた財全グループには、不動産の評価や管理などのノウハウが蓄積されています。近年は銀行から借り入れた資金も活用して事業を展開していますが、以前は自己資金で事業を展開していました。その中で、銀行借入に依存しない新規事業として、ソーシャルレンディング事業への参入を決定し、2017年8月に第1号のファンドを募集しました。その後、着実にサービスは拡大しており、今年の10月現在では月間約7本のファンドを募集する規模にまで成長しています。
――サービス名の「ポケットファンディング」はユニークなネーミングですね。
「ポケットファンディング」の「ポケット」は、ズボンのポケットです。当社のファンドは1万円から投資可能であり、ポケットに入っているくらいのお金で気軽に投資ができることをイメージしています。
――「ポケットファンディング」の現在のサービス状況を教えていただけますか?
2017年8月からサービスを開始して今年(2023年)で6年目を迎えました。沖縄の物件を中心にファンドの募集を行い、2023年10月時点で435件で約65億円の募集実績があります。すでにソーシャルレンディング業界では古参になっていますね。また沖縄が本拠地の企業グループが提供するサービスであり、沖縄に関連するファンドが多数です。ただし沖縄以外の東京などの物件についても、ファンドの組成を行っています。ファンドの利回りは5%を目標としています。
軍用地及び「ポケットファンディング」の軍用地ファンドについて
――「ポケットファンディング」の募集ファンドを見ると、軍用地ファンドのインパクトが強いですが軍用地について簡単に教えてください。ご存じの通り、沖縄には多くの米軍基地があります。それらの基地の土地は、日本政府が借り上げて、地権者に対し日本政府から地代が支払われています。手堅い賃料収入があるため、沖縄では軍用地は古くから人気のある投資物件なんですよ。近年では沖縄以外の投資家の参入もあり、価格高騰に加えてほとんど売り物が出ない状態となっています。
――軍用地の評価はどのように行うのでしょうか?
軍用地の年間の地代収入は決まっています。よって、株式のPERのように年間地代の何倍、といった評価がなされています。もっとも評価が高い嘉手納基地の滑走路だと約60倍くらいでしょうか。基地の重要度が高いほど、評価は高くなります。ただし各基地により評価は相当ばらついており、あまり平均値は意識されません。単純に平均すると40~50倍になると思います。
――「ポケットファンディング」の軍用地ファンドというのはどのようなものでしょうか?
軍用地の売り物は先ほどお話したように、人気化してほとんど出てきません。ただし軍用地の地主さんが何らかの資金需要があり、軍用地を担保にお金を借りることがあります。その際に、当社では軍用地を担保とする軍用地ファンドを組成します。軍用地は日本政府からの賃料収入が確定しているので、非常に手堅い融資先ですね。よって、ファンドの利回りも2~3%であり、「ポケットファンディング」の他のファンドの約5%の利回りに比べて低めの設定となっています。
――「ポケットファンディング」として、軍用地ファンドは全体のどの程度の割合になっているのでしょうか?
「ポケットファンディング」のファンドのなかで軍用地ファンドの割合は約12%です。インパクトが大きいので意外に思われるかもしれませんが、Pocket Fundingのファンドの中では1割程度なんですよ。「ポケットファンディング」のファンドの中心は、通常の不動産のファンドになります。
Pocket Funding(ポケットファンディング)の運営体制について
――「ポケットファンディング」の運営体制を教えてください。「ポケットファンディング」は、財全グループのソーシャルレンディング事業として展開しています。よってグループ会社が連携して、同事業を手掛けています。グループの連携もあり、地元沖縄の不動産情報はもちろん、沖縄以外の関東などの不動産情報も付き合いのある不動産ローン会社などから入ってきます。そして案件化する物件は、必ず現地を訪問して実際に目で見に行きます。地元の沖縄の物件はもちろん、北海道でも必ず現地に行って物件の状況を確認します。その上で物件の評価を行い、返済の実現可能性や回収可能性を判断して案件化の可否を判断しています。
特に担保物権の流動性が最大の重視ポイントですね。流動性のある物件なら、融資資金の回収ができない場合でも、不動産の処分で最終的な回収が可能になるためです。ただし、流動性がある物件でも処分までには時間がかかるので、事故が発生しない物件でファンドを組成することがもっとも重要と考えています。これらは不動産融資のプロセスとしては当たり前の内容なのですが、当たり前のことを淡々と行う、という姿勢をブレずに貫いています。
――「ポケットファンディング」のファンドは、これまで貸し倒れが発生していないと聞いています。
そうですね、これまでファンドの貸し倒れはありません。また延滞も発生していません。先ほど説明した、不動産融資のプロセスの当たり前の徹底により、投資家目線で事業を展開してきた結果と考えています。現在は月約7件ペースでファンドの募集を行っていますが、現在のペースなら無理なくファンドの募集は続けられます。ただし、関東などの案件も手掛けているものの、基本的に沖縄の案件中心でファンドを組成しており、現在の事業モデルだと、現在の月約7件のペースが上限とも感じています。やるべきことを粛々とやって“貸し倒れゼロ・延滞ゼロ”という結果が付いてきており、今後もぶれることなく同様のスタンスで事業を展開する予定です。
――「ポケットファンディング」では借り換え案件のファンドも複数ありますが、何度も借り換えがあるのでしょうか?
同じ貸主に対し、複数回融資するケースもあり、その都度ファンドを組成しています。ただし毎回、回収可能性などは判断しています。よって借り換え時も、通常の審査と同様のプロセスでファンドの組成は行われています。ただし、何度も何度も借り換えに応じている訳ではありません。社内的には2~3回の借り換えを上限としており、これまでのファンドでも3回が最長となっています。
――「ポケットファンディング」のファンドは先着式で集められていますが、投資家から不満は出ていませんか?
ファンドが購入できない、と投資家からの不満やお叱りはたくさん受けているんですよ。ただし、現在の先着式での募集は今後も続ける予定です。ファンドの利回りを落とすことで募集倍率を下げることもできますが、それは投資家目線から外れたやりかたとなってしまいます。今後募集するファンドが大型化すれば、競争も下火になると考えていますが、当面は公平な先着式でのファンド募集を続ける予定です。
Pocket Funding(ポケットファンディング)の会員について
――「ポケットファンディング」の会員状況を教えてください。現在の会員数は約2,400人で、そのうち実際に投資しているのは約3割です。投資家の年齢層としては40~50代が中心で30~40%となっています。男女比では徐々に女性の比率は増えているものの、まだ男性が圧倒的に多い状態ですね。
――沖縄発のサービス事業者であり、沖縄の方の会員登録が多いのでしょうか?
昨年末時点の沖縄の方の会員登録は約300名です。実は沖縄の方の比率は増加傾向にあります。ただし地域別では、約450名の東京が第1位です。
――会員獲得のためのプロモーションなどはされているのでしょうか?
以前は会員獲得のためのプロモーションも行っていましたが、現在は行っていません。またグループ会社の資産運用セミナーで、「ポケットファンディング」の紹介も過去には行っていました。すでに一定数の会員が集まって、案件も争奪戦状態のため、当面プロモーションなどは行わず粛々と実績を積み上げたいと考えています。
Pocket Funding(ポケットファンディング)の今後について
――「ポケットファンディング」の今後の事業展開について教えてください。先ほども申しましたが、現在の事業のみの場合、月7件程度のファンド募集が限界に近いと考えています。実は新規サービスの展開を計画しており、早ければ2023年内にも発表できると思います。現在は融資型の不動産ファンドに特化していますが、新規事業は他社と組んで開発型のファンドを計画しています。現在の事業は現行のペースを維持しつつ、新規サービスの開始で事業全体としての拡大を目指したいですね。また、新規サービスを開始する際は、過去に行った沖縄の物産プレゼントのプロモーションも計画しています。
――「ポケットファンディング」と沖縄との関係はどのような方向をお考えでしょうか?
沖縄県は所得水準が全国ワーストの水準です。ただし地価の上昇が続いており、不動産投資の環境としては良好です。「ポケットファンディング」は沖縄発のソーシャルレンディングサービスとして、沖縄の投資家に還元して沖縄全体の底上げに貢献したい、という思いを強く持っています。また「ポケットファンディング」の投資家は、住んでいる場所に関係なく、沖縄ファンの方がほとんどです。今後も投資家目線で沖縄中心の事業を展開します。
――最後に改めて「ポケットファンディング」の思いをお聞かせください。
「ポケットファンディング」はソーシャルレンディング及び不動産クラウドファンド業界の中では、業歴が長いサービスとなっています。ただし、貸し倒れや延滞がゼロで、事故の発生なく粛々と事業を展開してきました。「ポケットファンディング」は投資家の目線を常に心がけています。投資家目線という軸は今後も絶対にぶれません。投資家目線のサービス展開で、投資家の方々に安心して投資してもらえるファンドの提供を続けたいですね。過去には成長を急いで、無理な事業拡大が裏目に出てしまった会社もありましたが、当社は投資家目線で沖縄ファンの投資家とゆっくり着実に成長していきたいと考えています。(了)
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