“1人でも多くの人に投資を楽しんでいただけるように。” ーー「利回り不動産」藤間正信氏インタビュー

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投資初心者でも始めやすい投資として、不動産クラウドファンディングソーシャルレンディング が盛り上がりを見せています。業界への新規参入事業者も増えており、市場規模も年々拡大しています。

そんな不動産クラウドファンディング/ソーシャルレンディングのサービス事業者側に焦点を当て、キーパーソンにインタビューを実施する当シリーズ。普段表には出ないサービスの深い部分を“中の人”に直接語っていただきます。 

シリーズ第1回は、「 利回り不動産 」を運営する株式会社ワイズホールディングスの執行役員・藤間正信(とうま・まさのぶ)氏にお話を伺いました。

藤間 正信(とうま・まさのぶ)
株式会社ワイズホールディングス 執行役員
茨城県取手市出身、専修大学商学部会計学科卒業 2005年、ビゲンテクノ入社、モルガンスタンレーキャピタル出向、アセットマネージャーとして、物件マネジメント全般と不動産の購入・運用・売却を担当。2010年、野村不動産アーバンネット入社。法人向け不動産仲介(ホールセール)を担当。主に日本全国の不動産物件を対象とし、一棟マンション・一棟ビル等を取り扱う。顧客は、大手不動産ファンド・外資系不動産ファンドを担当。 2020年、スリーワイズエステート代表取締役を退任し、ワイズホールディングス執行役員に就任。

利回り不動産とは?

利回り不動産とは「利回り不動産」は、2021年4月にサービスをスタートした不動産クラウドファンディングサービスです。5〜8%程度の比較的高利回りのファンドを中心に取り扱い、独自ポイントサービス「ワイズコイン」の提供も好評。人気急上昇中の注目サービスの1つです。

首都圏で6%超の案件を

ーーさっそく、お話を伺っていきます。2021年にサービスを開始した「利回り不動産」ですが、どのような経緯でサービス立ち上げに至ったのでしょうか? 

 もともと当社はホテル用地の開発をメイン事業として行っていたのですが、東京オリンピックへ向けた建設ラッシュの影響もあり、2019年ころになるとホテルの供給過剰が現実的な課題として浮上してきていました。そこで、当社としても次の一手を考えていく必要があり、新規事業を模索していたんです。

そんな中で大きなヒントになったのが、その少し前、2017年の「不特法(※不動産特定共同事業法) 」の改正です。この改正によって「小規模不動産特定共同事業」が創設され、扱う物件や事業規模が比較的小さい“不動産屋さん”でも、ライセンスさえ取得すれば投資家から直接資金を調達する「直接金融」が可能になりました。

従来、当社の事業は銀行からの融資で資金を調達する「間接金融」で行っていましたが、新規事業を立ち上げるのであれば「直接金融」で行いたいという思いがありました。そういった背景がある中で、ちょうどタイミングや条件などが合致して、不動産クラウドファンディングへの参入を決めたというのが経緯です。


ーーサービス立ち上げ当初に決めていたコンセプトなどはありましたか?  

 コンセプトというほどの仰々しいものではありませんが、方針としてあったのは提供するプロジェクトの対象都市ですね。まず狙いを定めたのが北海道の札幌です。根強い不動産需要が見込めて、かつ高い利回りを実現できるエリアということでまず札幌をターゲットにしました。

そのあとは、当社の支店がある東京・大阪・沖縄、さらにその周辺エリアもカバーして商品を提供しています。これは土地勘であったり仕入れの利便性によるところも大きいですね。


ーー今、少しお話にも出ましたが、「利回り不動産」といえば、高利回り商品にも定評がありますよね。 

ありがとうございます。やはりユーザーのみなさんに一番わかりやすく訴求できるポイントは利回りだと思います。なので、サービス名にするくらい覚悟を決めて「高利回り商品を提供すること」もサービス開始当初からかなりこだわったポイントですね。

当初目指していたのは最低でも4.5%、できれば6.5%くらいの案件を継続的に提供していくことです。特に首都圏では5%台のリターンを出すのもなかなか難しいと言われている中で、6%を超えるとなると本当に仕入れ面で厳しくなってくる。なので、もちろん今でも苦労していますが、特にサービス開始当初はかなり苦労しました。

ただ、スタッフの努力もあり、現時点(2023年9月時点)では年換算利回り5%を下回る案件はゼロということで、その点は喜んでいただけているポイントなのかなと思います。

「連携できるサービスがない」で生まれたワイズコイン

ーー他サービスとの差別化として「ワイズコイン」の提供が特徴的ですが、どういったきっかけでスタートに至ったのでしょうか?  

 「利回り不動産」が不動産クラウドファンディングに参入したのが2021年なんですが、その頃には上場企業が運営しているサービスも含めてすでに競合がいくつもある状態でした。そんな中で、後発かつ規模も小さい我々がどう差別化して勝負していくか、ということになり出てきたアイデアが「ワイズコイン」です。

投資家に対して、出資していただいたお金に対して何かのかたちで還元できて、さらに我々もリピーター獲得につながるような仕組みができたらWin-Winの関係が築けるのではないかということで発想したのがきっかけですね。


ーー「コイン」というと仮想通貨的なものを連想してしまいそうですが、実際にはポイントサービスに近いですよね。当初は仮想通貨的な使い方も想定されていたのでしょうか?  

 確かに実質的にはポイントなのですが、「ポイント」という名前はなんかイケてないよね、ということで「コイン」にしようということになりました。とはいえ、仮想通貨のようにしてしまうと、資金決済法や金融商品取引法といった別の法律が絡んでくるので、「コイン」と名乗りつつも仮想通貨にならないように、あるいはそう見えないように、機能はもちろんですが表現の仕方なども含めて弁護士と議論しながらサービスを設計していきました。

なので、こうした背景をひっくるめて、「1ワイズコイン=1円」で現金と同じように投資に使えるというのと、「1ワイズコイン0.5円」としてAmazonギフト券に交換できるというものになっています。


ーーちなみに、ポイントサービスだと楽天ポイントやTポイントなどとの連携などの方法もありそうですが、あえてオリジナルにこだわったのはなぜでしょうか?  

 そこはこだわったというよりは、単純に当時API連携できるポイントサービスがなかったというのが正しいですね(笑)。そんな中で、当社が不動産クラウドファンディングのシステム提供を受けているグローシップ・パートナーズ(GSP)さんが、たまたま社内向けのポイントシステムを作っていると伺って、それを上手く活用できないかということで相談させていただき、結果として「ワイズコイン」が生まれたという感じです。

「続けるといいことがある」でリピーターを狙う

ーー実際に「ワイズコイン」を受け取った投資家はどのような使い方をされているのでしょうか?  

最初の新規口座開設のときにまず2,000コインを付与しているのですが、この時点ではAmazonギフト券に交換する方が結構多いです。ただ、そこから実際に投資へ進む方になると投資資金の一部として利用される割合が多くなります。

Amazonギフト券に交換する場合はレートが半分になるので、投資経験のある方ほどそこを気にされている印象がありますね。「ワイズコイン」も含めたトータルの利回りを見ているのだと思います。


ーーリピーター獲得という意味では「利回り不動産」としては好ましい行動ですよね。

そうですね。こちらとしてはユーザーに複数の選択肢を提供するけれども、サービスを提供する中でコインの有用性に気づいてもらい、リピーターになっていただく。ユーザーもうれしいし、我々もうれしい。よい関係性の構築につながっていると思います。


ーー「ワイズコイン」の付与方法も、少しずつ変わってきていますよね。

はい。新規登録で2,000ポイントを付与するのは変わっていないのですが、少し前は投資額の0.5%を一律で付与するというのを1年間やっていたんです。例えば運用期間12カ月で年利回り5%の案件だと、コイン付与によって実質的には5.5%になりますよ、というものですね。基本的にすべての案件で自動付与という形式だったので、喜んでいただけるかなと思って企画したものです。

ただ実際に蓋を開けてみると、お友達紹介キャンペーンなどの短期間の限定イベントでコインを付与したほうがユーザーからの反応がいいという結果が出まして、2023年の途中からは少しやり方を変えて、投資でコインを付与するファンドとしないファンドを用意しています。

今は色々なやり方を試しながら、より楽しんでいただける最適解を探しているという段階です。いずれにしても、「ワイズコイン」が再投資に使えるというには、他にあまりないユニークなサービスだと思っているので、この仕組みをうまく使って 「利回り不動産」で継続的に投資をするといいことがありますよ、という提案ができればいいなと思っています。

ユニークな開発PJや大型案件にも注力

ーーところで、「利回り不動産」ではこれまで配当・償還の遅延は起きておらず健全な運営を継続されていますが、投資対象となる物件の選定・仕入れはどのような方針で行っているのでしょうか?

物件の仕入れに関しては、不動産のプロ、専門の仕入れ部隊がいますので「物件の目利き」はかなり自信を持っている部分です。当社の場合、基本的に物件の将来的な出口を売却としているので、1年以内に売却できるかというのはもっとも重視しているポイントになっています。

あとは開発型プロジェクトとして、別荘の運営管理会社と組んで別荘地を購入し、そこへ建物を建てたりするプロジェクトをやったりしてるのですが、それに関しては最終的な売却先がある程度決まっている案件を調達してやっています。


ーー物件調達において、出口までの戦略はどのように設計していますか?

今お話ししたような、売却先ありきでストーリーを作っていくものもありますし、どんな人が関わるかで決まってくるものもあります。例えば、当社に台湾出身のスタッフがいるのですが、最近では彼の人脈で台湾のクリエイターを招いて行っている京都の町家再生プロジェクトなんかは面白い事例かなと思います。

建築基準法では、4m以上の幅の道路に2m以上接していないと建物が建てられないことになっています。そんな中、京都の町家は敷地が道路に面していないものが多く、そういった建物は一度壊して再建築という方法が取れないんです。不動産としては非常に魅力がある一方で法律で制限がかかってしまう。

なので「建て直す」のではなく「今あるものを再生」する方法で価値を高めていく。また、ただ再生・リフォームするのではなく、台湾クリエイターと組んでさらに売却も台湾の投資家に向けて行うという流れを考えています。

ーーユニークなプロジェクトが増えるにつれて、案件の規模もだんだん大きくなってきていますよね。とくに2022年以降では募集金額が1億円を超える案件が増えてきた印象があります。

そうですね。サービスインした2021年当初は、やはり知名度もないですし会員数も多くないというところで、数百万円程度のファンドを中心に組成して提供していました。

ただ最近ではおかげさまで会員数もかなり増えてきましたし、しっかり投資家にみなさんのニーズに応えていくという意味でも募集金額が1億円を超える大きな案件の提供を意図的に増やしています。

ファンドについては月に1本以上を目標にしつつ、2023年は年間の募集金額ベースで20億円くらい(※)を目指していきたいと思っています。
 ※2022年の調達実績は約12億円


ーーファンドの募集や案件に関しては、投資家の方からはどのような意見がありますか?

特に直近は先着順で募集する案件が多いので、「抽選にしてほしい」とか「先着順のスタート時間を夜にしてほしい」とかは多くいただきますね。

先着順に関しては、以前は20時に設定していたのですが、現状はお昼の12時スタートのものが多くなっています。なので、お昼スタートの先着順だとお仕事等の関係もあって「ヨーイドン」で申し込みがしにくいというご意見だと思います。

これに関しては正直な理由をお話をすると、サーバダウンなどのトラブルがあったときに、夜だと対応できないケースがあったりするので、その理由が大きいですね。

ただ、もちろん募集形式に関してはこれがベストではないと思うので、時間帯等の工夫は今後もしていきたいと思っています。それから、ユーザーの方のご意見・ご要望はもちろん運営側に届いていますので、こうしたご意見を真摯に受け止めながら、1人でも多くの方に投資を楽しんでいただけるよう、改善を続けていきたいと思います。

新しい取り組み「RE-FUND(アールイーファンド)」

RE-FUND出典:地域活性×資産形成を目指す新プロジェクト「RE-FUND」が始まります。|利回り不動産blog  

ーー「利回り不動産」では、新しい取り組みとして「RE-FUND」という企画を展開されていますよね。こちらのコンセプトをお聞かせいただけますか?

これは、従来の「お金を増やす」という目的だけでなく、投資にプラスアルファの価値を提供したいということで立ち上がった企画です。当社としては「地域活性 ✕ 資産形成を目指すプロジェクト」と位置づけています。

「利回り不動産」としては不動産開発を通じて地域の活性化を目指す。投資家のみなさんにはその思いや企画に共感いただき、出資という形でプロジェクトに参画いただくことでその地域に間接的に貢献できる、というものです。

客観的に見れば、投資はお金を増やす手段ですが、出資したお金が地域の、引いてはその先にいる誰かの役に立っているということを「RE-FUND」を通じて実感していただけたらうれしいですね。


ーー投資に社会的意義を見出すような企画は、サービスとしての魅力にもつながっていきそうですね。

そうなるといいですね(笑)。投資をしながら社会貢献するという動きは他サービスでも少しづつ見られるようになっていると思うので、今後さらに広がっていくかもしれません。「利回り不動産」としては、引き続きコンスタントに「RE-FUND」を企画・組成していきたいと思っています。

幅広い層に親しんでもらえるサービスに

ーー最後に、「利回り不動産」の今後の展望をなどをお聞かせください。

まず、先ほどお話のあった京都の町家再生プロジェクトや「RE-FUND」なんかは新しい取り組みとして力を入れていきたいと思っていますし、あとは別の角度で言うと、投資家の裾野を広げるという部分は少し意識していきたい部分です。

「利回り不動産」の利用者層でもっとも多いのが35歳から44歳の層なのですが、直近の増加率がもっとも高いのが25歳から34歳の若い層となっています。SNS等を通じて若い層にもサービスの認知が広がってきているということだと思います。

だからというわけではないのですが、実は「利回り不動産」では最近、口座開設が可能になる年齢を20歳から18歳に引き下げました。これは成年年齢が引き下げられたから、という事務的な話だけでなく、そもそも18歳って十分にお金を稼ぐ能力だったり、投資を判断できる能力があるよね、という考えがあったからです。

18歳ですでに就職してお金を稼いでいる人もおられますし、それだけでなく今はYouTuberだったりインフルエンサーだったり、eスポーツの選手だったり、ほかにも10代でもお金を稼ぐ手段が非常に多様化しています。今後はさらに多様化してくるかもしれないですよね。そういった若い人たちの投資機会に少しでもつながればと思っています。

若いうちから投資に触れれば、そのぶんだけ長く投資と付き合うことになるでしょうから、門戸を開くことで、私たちにとっての機会損失を減らすことにもつながります。もちろん基本的にはすべての層にご利用いただきたいというのが本音ではありますが(笑)、若い層にも親しんでいただけるサービス、ブランドになっていければと思っています。

<了>


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  • 記事を書いた人 a.sato

    『ゴクラクJOURNAL』編集長。10年余りのラジオディレクター・構成作家の経験を経てライターに転身。延べ300社以上のコンテンツのコンサルティング・ライティング、ブランディングに携わる。以後エンタメ・インフラなどのWebメディアの編集長を歴任したのち現職。3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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