現物不動産投資とREIT(リート)の違いとは?自己資金や収益性で徹底比較

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#投資の仕組み・スキーム

現物不動産投資とREIT(不動産投資信託)はどちらも不動産を対象にした投資方法で、個人投資家からの人気を博しています。しかし、現物資産を保有する現物不動産投資に対して、証券取引所に上場しているREITとは特徴やメリット・デメリットがかなり違うため、投資を始めたばかりの人にとっては「どちらを選ぶべきか」悩みどころかと思います。

そこで今回、 現物不動産投資とREITを比較 し、それぞれの投資方法がどんな人に合っているのかを解説しますので、ぜひ参考にしてください。

現物不動産投資とは


現物不動産投資とは

現物不動産投資は、収益目的にマンションやアパートなどを購入して運用する投資手法です。投資家は頭金を支払って金融機関などから融資を受け、取得した不動産から得る収益でその返済をする仕組みとなります。 なお、収益の種類は、物件を第三者に貸し出すことで家賃収入を得る「インカムゲイン」と、売却によって利益を得る「キャピタルゲイン」の2種類があります。

現物不動産投資のメリット

現物不動産投資には、次のような4つのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

メリット1.レバレッジ効果がある

金融機関から融資を受けることで、自己資金の何倍もの物件を購入して運用できるのが現物不動産投資のメリットです。なお、購入時に受けた融資を家賃収入を使って完済することで、結果的に自己資金だけで家賃収入を生み出す現物不動産を手に入れたことになります。

メリット2.高い収益性が狙える

現物不動産投資は物件によってかなり高い利回りが狙えます。例えば、1棟マンションを所有した場合は入居している全戸から家賃収入が得られるため、その分収益は大きくなり投資効率は上がります。当然リスクもありますが、投資家の裁量によって物件や規模を選べるのが利点です。

メリット3.物件を資産として所有できる

現物不動産投資は購入した物件を資産として所有できるのが大きなメリットです。ローンを完済すれば家賃収入をそのまま得られるので、老後資金対策にもなります。

メリット4.相続税対策になる

現物不動産は現金で相続するより「相続税」が安くなり、節税効果が高いという特徴があります。なぜなら、不動産は相続時には時価ではなく、時価よりも低い相続税評価額で評価されるためです。

例えば、現金で5,000万円を相続する場合、相続税評価額は5,000万円です。一方、その5,000万円で不動産を取得すれば、5,000万円よりも低い評価額になるため相続税が安くなるという仕組みです。相続した家族は収益を生む物件を所有し続けるか、あるいは売却して現金を手にするかのいずれかを選べます。

現物不動産投資のデメリット

現物不動産投資には、以下のような5つのデメリットもあります。こちらも詳しく見ていきましょう。

デメリット1.初期投資費用がかかる

現物不動産は、金融機関からの借入れを使えば会社員でも数千万円の現物不動産を購入できる可能性がありますが、頭金や初期費用として自己資金が数百万円かかります。初期費用の目安は物件の種類によってケースバイケースですが、一般的には物件価格の10%~15%程度が目安だとされています。

デメリット2.物件選びの勉強が必要

REITであれば運用利回りが開示されるので銘柄選びは難しくありませんが、現物不動産にはそのような情報がありません。また、条件の良い物件は競合相手も多く、手に入りにくいこともあります。

現物不動産投資を行うにあたっては、物件を選ぶための勉強やこまめな情報収集が必要になるので、そういった時間が作れない人にはデメリットになります。

デメリット3.投資対象が居住用物件に限られる

個人投資家が購入できる物件価格には限度があるため、オフィスや商業施設、ホテルといった大規模な不動産の購入は難しい場合が多いでしょう。分散投資したい人にとっては、投資対象が居住用物件に限られる点がデメリットになります。

デメリット4.換金性が低い

現物不動産投資では所有する物件をすぐに現金化できるわけではありません。売却活動をして買い手を見つける必要があります。すぐに現金が必要な時、あるいは収益性が低下した時に簡単に売却できない点はデメリットになります。

デメリット5.メンテナンス費用のコストがかかる

所有する現物不動産は築年数の経過により修繕費用がかかります。空室率を軽減するためには室内設備のメンテナンスも不可欠です。このようにメンテナンス費用がランニングコストとして発生する点がデメリットになります。もちろん家賃収入でカバーできていれば、実質的な負担は少なくなります。

REIT(不動産投資信託)とは


REIT(不動産投資信託)とは

REIT(不動産投資信託)は、不動産投資法人が投資家から集めた資金で不動産を運用し、その賃料や売却益から配当を支払う金融商品です。証券取引所に上場されているので、投資家は株式と同様にREITを売買できます。

REITには株価に似た「投資口価格」という日々売買される価格があり、投資家の需給バランスで変動します。運用会社が保有する不動産の価格変動や家賃変動は、投資家が受け取る配当金に反映される仕組みです。

つまりREIT投資では株式のように、保有銘柄の売買差益と分配金の2種類の利益が得られることになります。もちろん売却による差損が発生することもあります。さらに株式のように信用取引を利用すれば空売りも可能です。

REITのメリット

REITには、以下の4つのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

メリット1.少額から投資できる

REITは1口単位で購入でき、1口数万円程度という比較的少額から投資できるのが利点です。もっとも多い価格帯は10万円から20万円未満で、高額なものだと80万円を超えます。自己資金のみで複数銘柄購入することもできるので、分散投資もできリスク軽減対策にもなります。

メリット2.売却益も狙える

REITは運用する不動産の家賃収入などを原資とした分配金を得ることのほか、売却差益も狙えるのがメリットです。株式のように需給により価格は変動しています。予算に応じて複数の商品を選んで購入できるのもREITのメリットです。

メリット3.銘柄による利回りの差が少ない

REITは銘柄による利回りの差が少ないので、ハズレを引くリスクが少ないのもメリットです。運用対象を居住用、オフィス、商業施設、ホテルなどに分散することでリスクを低減でき、安定した利回りにつながっています。

メリット4.流動性が高く換金しやすい

REITは証券取引所に上場しているので、証券市場で誰もが自由に売買できるのがメリットです(*)。現金が必要になれば、いつでも好きなタイミングですぐに売却できます。

(*REITには非上場の私募REITがあり、機関投資家等特定の投資家を対象とした商品もある)

REITのデメリット

REITには、以下のような4つのデメリットもあります。こちらも詳しく見ていきましょう。

デメリット1.元本割れの可能性がある

REITの売買価格である「基準価額」は日々さまざまな要因で変動しています。経済動向などの影響によっては、基準価額が大きく下落する可能性もある点がデメリットとなります。購入時よりも安く売却すれば、元本割れとなるので注意しましょう。

デメリット2.節税効果が薄い

REITを保有することで得た分配金は、配当控除が受けられません。例えば、株式や投資信託で得た配当や分配金はREITと同じく「配当所得」に該当しますが、配当控除を受けることができます。NISA制度を利用することはできますが、ほかの商品と比べて節税効果が薄くなるのはデメリットといえるでしょう。

デメリット3.REIT向けの投資ローンはない

REITは不動産投資商品の一種ですが、現物不動産投資のように金融機関から融資を受けることができません。商品を購入する際には、REITの金額分の自己資金が必要になります。レバレッジ効果が期待できないためリターンが限定的になる点はデメリットといえるでしょう。

デメリット4.上場廃止のリスクがある

REITを運用する不動産投資法人の経営が傾けば倒産する可能性がありますし、その場合には保有する銘柄は上場廃止となり価格は大幅に下落します。倒産した不動産投資法人が清算されると残余財産は債権者への弁済に当てられ、投資家は投資金額を回収できない可能性がある点はデメリットとなります。

現物不動産投資とREIT(不動産投資信託)を比較

現物不動産投資とREIT(不動産投資信託)を比較して、どのような違いがあるのかをチェックしてみましょう。


現物不動産投資 REIT
投資対象 マンション、アパート、戸建住宅など 居住用物件、オフィスビル、テナント物件、ホテルなど
利回り 4~5%程度 4%程度
コスト 不動産取得費用、初期費用、ランニングコスト、税金 約定代金、売買手数料、税金
管理・運用 自己管理、管理会社に委任 ファンドマネージャー
流動性 低い 高い
リスク ミドルリスク ローリスク~ミドルリスク
課税 取得、保有、売却、相続の際に課税 分配金、売却益に課税

1.投資対象

現物不動産投資は個人投資家の自己資金で購入できる物件が限られるので、主に居住用物件になります。マンションやアパート、戸建住宅などが対象です。

一方でREITの投資対象は、現物不動産(住居、オフィスビル、商業施設、ホテルなど)と不動産信託受益権の2つに大別されます。不動産信託受益権は、信託銀行に管理運用を委託している不動産からの利益を受け取る権利のことです。

2.利回り

利回りは現物不動産投資とREITでは算出方法が違うので、一概に比較はできません。そこで、それぞれの利回りについて詳しく見ていきましょう。

現物不動産投資の利回り

現物不動産投資の利回りはエリアや物件によってかなり違いがあります。平均的な利回りは4.0〜5.0% (※)となっています。

(※)参照元:一般財団法人日本不動産研究所  

なお、現物不動産投資の利回りには、表面利回り・想定利回り・実質利回りがあります。

表面利回り 年間家賃収入÷物件取得価格×100
想定利回り 年間家賃収入(想定)÷物件取得価格×100
実質利回り (年間家賃収入-諸経費)÷(物件取得価格+諸費用)×100

(例)

表面利回り:100万円÷2,500万円×100=4%

想定利回り:120万円÷2,500万円×100=4.8%

実質利回り:(100万円-10万円)÷(2,500万円+50万円)×100=3.53%

これらは現物不動産を購入する際の比較に利用します。実際の投資利回りはキャッシュフローで考えるので、初期投資金額に対する実質的な収入(家賃からローン返済などを差し引いた金額)で計算する点に注意しましょう。購入する物件を絞り込んだあとに、自分の場合にはどの程度のキャッシュフローになるのかを計算する必要があります。

REITの利回り

REITの利回りは銘柄により異なりますが、平均して4%前後 (※)で推移しています。

(※)参照元:一般社団法人 不動産証券化協会

なお、REITは分配金が利回りの対象となり、次のように算出します。

<(年間の予想分配金)÷(投資額)×100(%)>

REITの利回りはETF(上場投資信託)と比べて高めになりますが、これは賃料収入がある程度は安定していること、さらに運営する投資法人に「租税特別措置法」という課税特例が認められていることが理由です。収益の90%超を分配すれば、要件を満たすことで分配金を損金にできるという特例になります。

3.コスト

現物不動産投資のコストには、主に次のものがあります。

  • 不動産の取得費用
  • 取得時の諸費用
  • 運用管理費、物件管理費
  • メンテナンス費用
  • 税金

REITのコストは次のとおりです。

  • 約定代金
  • 売買手数料
  • 税金

4.管理・運用

現物不動産投資の対象となる物件は、管理・運用する必要があります。不動産オーナー自ら管理を行う方法と、管理会社に委託する方法があります。ただし、管理会社に委託したとしても定期的な連絡は必要になります。また、借り手が付きやすいように対策を立てるなど、まったく管理に携わらずに済むわけではありません。

一方REITは、管理・運用などはファンドマネージャーにすべて一任できるので投資家側の負担はほとんどありません。ただし「どの銘柄を購入するか」や「いつ売却するのか」の判断は自己で行うため運用スキルは必要です。

5.流動性(換金性)

流動性に関しては証券取引所に上場しておりいつでも売買できるREITに優位性があります。価格も安いので売買しやすく、保有する商品の一部のみを売却することもできます。

一方現物不動産は買い手がない限りは売却できませんし、売り急ぐ場合には価格を下げるケースも出てきます。

6.リスク

現物不動産投資においては次のようなリスクがあります。

  • 空室リスク
  • 家賃滞納、賃料相場の下落リスク
  • 借入金利の上昇リスク
  • 不動産価格下落リスク
  • 天災リスク

一方でREITのリスクには次のものがあります。

  • 価格下落リスク
  • 上場廃止リスク

REITは運用する物件に関してはリスク分散しているので、現物不動産投資よりも低リスクだと言えます。

7.課税のタイミング

現物不動産投資の課税は、「不動産の取得時」「不動産の保有」「不動産の売却時」「不動産の相続時」の4つのタイミングで発生します。一方REITは、銘柄の分配金や譲渡益などの利益に対して課税されます。

現物不動産投資とREIT(不動産投資信託)どちらがおすすめ?

現物不動産投資とREITのメリット・デメリットや特徴を理解したところで、それぞれどのような人がおすすめなのかをご紹介します。

現物不動産投資が向いている人

現物不動産投資は以下のような人に向いていると言えます。

  • 現物不動産を資産として所有したい人
  • レバレッジ効果を得ながら効率的に投資したい人
  • 老後資金対策として安定収入を確保したい人
  • 相続税対策もしたい人
  • 不動産投資の勉強や情報収集などが苦に感じない人

REITが向いている人

REITは以下のような人に向いていると言えます。

  • 初期費用を抑えて投資を始めたい人
  • 数万円~数十万円程度の自己資金のみで投資がしたい人
  • 自身のタイミングで売買したい人
  • 投資先を分けてリスク分散をしたい人
  • 投資の勉強や情報収集などにあまり時間をかけられない人

自分に合った不動産投資商品を選ぼう

今回は、現物不動産投資とREITを比較 し、それぞれの投資商品がどんな人に向いているかを解説しました。

現物不動産投資とREITを比較すると、それぞれの性質が違うので一概にどちらが良いとは言えないことがわかります。自分がどのようなスタイルの不動産投資をしたいのかを明確にすれば、どちらを選べばよいのか判断できます。

また、不動産投資の種類には現物不動産投資やREITのほかにも、不動産小口化商品や不動産クラウドファンディングもあります。以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方は併せてご覧ください。

不動産小口化商品とは?メリット・デメリットを詳しく解説

不動産クラウドファンディングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説


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  • 記事を書いた人 ゴクラクJOURNAL編集部

    『ゴクラクJOURNAL』は、不動産クラウドファンディングやソーシャルレンディング、事業型ファンドといった少額投資ファンドに関する情報や、投資・お金、その他ファイナンシャルテクノロジーに関する情報を提供しています。編集部では、投資初心者の目線に立ったユーザーファーストのメディア運営を目指しています。

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