公開日 2024/09/12
最終更新日 2025/03/10
日本で不動産クラウドファンディングサービスがスタートしてから5年以上が経ちました。しかし、不動産クラウドファンディングが一般の投資家に広く浸透しているとはいい難い現状があります。なぜ不動産クラウドファンディングの認知度はなかなか上がらないのでしょうか。今回はその理由について考察してみたいと思います。
サンプル数は限定的なので参考程度に見ておく必要はありますが、200人を対象としたこの調査結果によると、不動産クラウドファンディングの認知に関しては以下の結果となりました。
そのため、多くの個人投資家の注目は株式やFXなど、キャピタルゲイン型の投資に集まっており、不動産クラウドファンディングのようなインカムゲイン型の投資にはあまり目が行かなかった、という要因が挙げられます。
反対に、今後景気が悪くなるタイミングでは不動産クラウドファンディングが脚光を浴びることになる可能性は十分にあります。
2017年〜2018年初頭に「バブル」となった仮想通貨も、その後投資のメジャーシーンに躍り出た“投資商品”の1つです。その意味では仮想通貨取引は不動産クラウドファンディングと同じように、この数年で出てきた金融サービスですが、不動産クラウドファンディングと比較すると、圧倒的に一般の認知度は高いといえます。
なぜ不動産クラウドファンディングと仮想通貨でこれほど認知度に差があるのかというと、仮想通貨は特にその値上がり幅の大きさで話題になりやすい面があったためと考えられます。上述のビットコインバブルでは、「億り人」が続出した一方、その後の不正送金事件、さらにバブル崩壊によって多くの「敗者」も生み出し、大ニュースになりました。
結果として、まさに「悪名は無名に勝る」で、知名度が一気に上昇しました。
大前提として、仮想通貨は極めてボラティリティ(価格変動性)が高い投資商品であり、「短期間で何十倍にもなった」「何億円も儲けた」というニュースがキャッチーであったという理由もあるでしょう。それに比べると不動産クラウドファンディングはどうしても派手さに欠け、話題性に乏しい面があるのは否定できません。
日本では、購入型や寄付型のほうがイメージで先行しており、多くの人が「クラウドファンディング」というと購入型や寄付型を思い浮かべるようです。
そのため、不動産クラウドファンディングが購入型や寄付型クラウドファンディングと混同され、投資商品・金融商品として見られていないケースもあるようです。この点も不動産クラウドファンディングの認知度が低い一因といえるかもしれません。
不動産クラウドファンディングは、その法的根拠となる不動産特定共同事業法(不特法)の改正によって参入障壁が緩和されてきました。そのため、一般的に知名度のある不動産事業者でなくても不動産クラウドファンディング事業を始められる土壌があります。
現在でも、不動産クラウドファンディングを手掛ける事業者の多くは、一般的に知名度の高い企業ではありません。例えば野村不動産や三井不動産といった大手の不動産事業者が不動産クラウドファンディングに参入するといったニュースでもあれば認知度が高まると思われますが、現状ではそうした予定はないようです。
※野村グループ、三井グループは、それぞれ不動産クラウドファンディングではなく不動産ST(セキュリティトークン)の分野に進出しています
また、雑誌・新聞・TVなどのマスコミ向けに広告を出す事業者も少なく、そのことも認知度が低い原因と考えられます。
ネット上ではようやく専門メディアなども登場してきましたが、タイムリーで正確、かつ投資に役立つ内容はまだあまり多くないのが現状です。
どの投資商品でも、そうしたカリスマ投資家が人気を高めるのに大きな役割を果たしているといえるでしょう。しかし、不動産クラウドファンディング投資家には、そこまで知名度の高い「カリスマ投資家」はおそらくまだいないと思われます。
不動産クラウドファンディングはその性質上、どんなに頑張っても上げられる利益は年利10%程度で、短期間で資産を何倍にも殖やすといったことはできません。誰がやってもさほど利回りには差が出ないため、「カリスマ投資家」が生まれにくい特性があります。
しかし、不動産クラウドファンディングのようなインカムゲイン型の投資商品は、ある程度資金を持っている投資家でないとそもそも興味を持ちにくいといえるでしょう。仮に10万円しか投資資金のない人が年利8%の不動産クラウドファンディングに投資しても、年間で8,000円しか利益がありません。
不動産クラウドファンディングに興味を持つのは少なくとも数百万円程度の資産を持つ人に限られてくると思われます。
筆者個人の所感も含んでおり、若干ネガティブな内容が多くなってしまいましたが、実際にサービスを提供している事業者や、「ゴクラク」のような情報メディアの努力によって改善できる部分もあるかと思います。
業界全体の市場規模は徐々に拡大しているのも事実です。それにつれて認知度も徐々に広まっていき、どこかの時点でブレイクスルーを迎えるのを期待したいところです。そのためには、業界全体が健全な発展を遂げ、投資家の信用を積み上げていくことが何よりも重要ではないでしょうか。
2024/12/26
#市場規模
2024/08/20
#市場規模
2024/02/15
#市場規模
2024/01/17
#市場規模
2023/09/01
#市場規模