鉄道ファンドとは?配当の仕組みや投資のメリット・デメリットを解説
公開日 2023/09/19
最終更新日 2023/09/19
鉄道ファンドとは
鉄道ファンドとは鉄道車両等の資金調達を目的として設立されたファンドのことです。いわゆるインフラ関連の事業型ファンド の一つに分類されます。インフラ関連というと鉄道以外に電力、ガス、水道、道路、空港、港湾、通信といった公益事業が挙げられます。しかし、こういった事業を行なっている企業に株式投資をすることはあっても、ファンドでの投資というのはあまり耳慣れないかもしれません。鉄道ファンドが組成された背景
乗り物(輸送機)系のファンドというとトラック 、ヘリコプター 、船舶 などが代表的です。これらの代表的な仕組みが「オペレーティングリース」で、集めた資金を使って購入した乗り物を航空会社や海運会社などにリースし、リース料で上がった収益から投資家に分配するというものです。
実際に三井物産系が北米やロシアなどで鉄道のオペレーティングリース事業を行っています。ただ、これらはファンドではなくあくまで一企業が事業として行っており、投資家にはこれまであまり関係のない話でした。もちろん株式を通じて投資をするということは可能でしたが、ファンドのような直接的な投資手法はありませんでした。
今鉄道ファンドが生まれる背景には、大手企業による大規模な資金調達というよりも、比較的小規模な地方の鉄道事業者による資金調達というニーズ があります。
鉄道ファンドの事例「しなの鉄道」
画像出典:しなの鉄道 車両更新応援ファンド|セキュリテ鉄道ファンドの事例として取り上げられることが多いのが、「しなの鉄道」の「車両更新応援ファンド」 です。しなの鉄道はJR東日本から経営分離された第三セクターで、しなの鉄道線(軽井沢~篠ノ井間)、北しなの線(長野~妙高高原)の2路線を運営しています。
現在年間約1,400万人(延べ人数)に利用され、特に観光シーズンは軽井沢駅を中心に利用客が大幅に増加する傾向があります。
しなの鉄道で鉄道ファンドが利用された背景
しなの鉄道では車両や設備の老朽化により、新車両の導入が検討されていましたが、それと同時に沿線の人口減少・少子高齢化や、働き手不足といった課題も抱えていました。新車両を導入することで、従来の車両を修理して使ったり中古車両を購入するよりも40%程度の消費電力の削減が可能 になる上、年間160tものCO2も削減でき、SDGsにも貢献 できます。また、車両のエネルギー効率が良くなることでメンテナンス頻度や必要人員も少なく済み、人口減少や働き手不足という課題にも対処できるようになります。さらに新車両を導入した上で沿線の魅力を発信することで、観光面で地域に貢献することも目標としています。
こういったいわゆる地方創生系のファンドやクラウドファンディングは、従来だと支援者にファングッズや利用権のようなリターンを返すことが多く、投資や出資というカラーが薄い傾向がありました。一方、今回のしなの鉄道の鉄道ファンドは、出資に対して分配金をリターンする仕組み があるのが特徴です。
出資と配当の仕組み
しなの鉄道の事例では最低出資額一口50,000円で、その内訳は25,000円分が出資金、残りの25,000円がしなの鉄道の関連サービスや商品の購入分 です。出資金への配当は定期券以外の定期外収入に連動する仕組みになっています。定期券以外の外部観光客がどれだけ増えたかが新車両の効果に直結するとの考えからです。投資元本を超えるまでは定期外収入の0.15%、超えた後は0.027%を原資にして10年間分配する という計算方法となっています。購入分の25,000円に関しては観光列車である「ろくもん」の乗車券に食事券やグッズ、体験コースなどを加えたプランを選択できるようになっています。単なる出資ではなく、しなの鉄道に興味を持ってもらいファンとして応援して欲しいという狙いも含んだ構成と言えるでしょう。
鉄道ファンドに投資するメリット
鉄道ファンドのメリットは鉄道自体の魅力と直結している側面が大きいです。どのようなメリットがあるのでしょうか。メリット1.インパクト投資になる
投資には金銭的な旨味はもちろん必要ですが、社会や環境を良くするために投資を行うという考え方も重要です。その考えに基づいた投資を「インパクト投資」といいます。主にインフラや環境への取り組み、地方創生などがカテゴライズされますが、今回紹介したしなの鉄道の鉄道ファンドもインパクト投資の一種です。新車両の導入によるエネルギーや環境問題への貢献、地域活性化などに投資という側面から取り組むことができます。インパクト投資のメリットは「投資家として社会に貢献している」と堂々と言えるようになることです。これは法人でも個人でも大きなイメージアップやブランディングにつながります。CSR活動の一環としてインパクト投資を行う先を常に探している企業もあります。
メリット2.投資家として応援できる
他の投資商品よりも「ファン」としての側面を強く出せるのが鉄道ファンドのメリットです。鉄道ファンにとっては自分が直接出資した実感を持つことでより愛着が深まるはずです。メリット3.比較的安定した投資先
鉄道ファンドのようなインフラ関連は、安定した利回りが期待できる傾向があります。鉄道ファンドに投資するデメリット
鉄道ファンドに投資するデメリットはやはり事例が限定され予測がしづらいことです。ここでは大きく分けて2つのデメリットを紹介します。デメリット1.現状選べる商品が少ない
鉄道ファンドは現状ではしなの鉄道くらいしか実施していません。まだまだ1つのジャンルとして確立しているとまでは言えず、比較する対象が少ないというのは出資する上で不安材料と感じる人もいるでしょう。デメリット2.規模感が小さい
しなの鉄道のような第三セクターへの投資は、高配当を期待するには規模感が小さいといえます。純粋に利回りだけを期待する方には向いていないかもしれません。今後多様な鉄道ファンドが出てくることに期待
今回は鉄道ファンド について解説してきました。しなの鉄道が行っている鉄道ファンドは資金調達には現状成功していると言っていいでしょう。今後、この事例を魅力に感じた他の鉄道会社や投資会社が鉄道ファンドという枠組みで商品を出し、投資家が選びやすくなることに期待したいところです。
また、今回の事例では半分を出資金、もう半分を乗車券等のサービス、という内訳でしたが、今後は違った形態のファンドの登場もありうるかもしれません。鉄道ファンドの動向に要注目です。
2024/11/21
#用語解説
#投資の仕組み・スキーム
2024/11/11
#用語解説
2024/10/10
#用語解説
#投資の仕組み・スキーム
2024/09/26
#投資の仕組み・スキーム
2024/09/17
#投資の仕組み・スキーム
2024/09/11
#投資の仕組み・スキーム