湾岸タワマンは暴落前夜?もう売れない?港区3846件の登記から見えた実態とは?
公開日 2026/09/01
最終更新日 2026/09/01
最近、「湾岸タワマンが売れない」「値下げしないと売れない」といった話を聞くようになりました。
本当に湾岸タワマンは売れなくなっているのでしょうか。
そこで今回、2026年6月に港区で受け付けられた法務局の不動産登記3,846件を独自に集計。
さらに芝浦・港南・海岸・台場については、登記に記載された地番を実際のマンションと照合しました。
結論からいうと、湾岸タワマンの売買そのものが止まっているわけではありません。
6月だけでも、地番からタワーマンションと確認できた物件について、少なくとも30件の「所有権移転売買」の登記受付がありました。
一方、都心3区では中古マンションの在庫が前年同月比44.8%増え、成約件数は27.1%減っています。
今回のデータから最も無理なく言えるのは、「湾岸タワマンは売れている。ただし、高く出せばすぐ売れる市場ではなくなりつつある」ということです。
港区では「売買による所有権移転」が549件
まず、港区全体を見てみます。
3,846件の登記のうち、登記内容が「所有権移転売買」となっていたものは549件ありました。
「所有権移転売買」とは、不動産の売買に伴って、所有者を売主から買主へ変更する登記です。
つまり549件という数字は、単に「売りに出ている物件」が549件あったという意味ではありません。
売買を原因として、実際に所有者を変更する登記手続きが549件受け付けられたということです。
少なくとも、港区の不動産売買そのものが止まっているとは考えにくい数字です。
港区で売買がしっかり相当数発生
ただし、549件=549戸が6月に売れた、ではありません。
登記の受付件数と実際の取引戸数は必ずしも一致しないためです。
また、売買契約を結んだ日と登記を申請した日も通常は一致しません。
そのため549件から言えるのは、「6月に港区で売買を原因とする所有権移転登記が相当数発生していた」ところまでです。
約73%が「区分建物」。港区ではマンション系の登記が中心
549件を物件種別で分けると、次のようになりました。
| 物件種別 | 所有権移転売買の受付 |
|---|---|
| 区分建物 | 400件 |
| 土地 | 133件 |
| 建物 | 16件 |
| 合計 | 549件 |
「区分建物」とは、マンションの1室のように、建物の一部分を独立して所有できる不動産です。
400件は全体の72.9%。
つまり、港区で6月に受け付けられた売買による所有権移転登記の約4件に3件が区分建物でした。
この数字から、港区の不動産売買を考えるうえでは、マンションなどの区分所有物件の動きが大きな割合を占めていることがわかります。
ただし、400件すべてを「中古マンション400戸」と読み替えることはできません。
区分建物には住宅以外が含まれる可能性もあり、あくまで登記上の物件種別だからです。
湾岸4地区では85件。ただし全部がタワマンではない
次に、芝浦・港南・海岸・台場の4地区を抽出しました。
売買を原因とする所有権移転登記は85件。
そのうち区分建物は75件でした。
| エリア | 所有権移転売買 |
|---|---|
| 芝浦 | 40件 |
| 港南 | 23件 |
| 海岸 | 21件 |
| 台場 | 1件 |
| 合計 | 85件 |
ただし、ここで「湾岸で85件のタワマンが売れた」とするのは誤りです。
湾岸には低層・中層マンションもあります。区分建物だからといって、タワーマンションとは限りません。
そこで今回は、登記に記載された地番を実際のマンション所在地と照合しました。
なお、「タワーマンション」に法律上統一された定義があるわけではないため、本記事では便宜上、地上20階以上の共同住宅を対象としています。
地番を照合すると、少なくとも30件がタワマンだった
地番と公開されている物件情報を照合した結果、少なくとも次のタワーマンションで「所有権移転売買」の受付を確認できました。
| 物件 | 売買登記の受付 |
|---|---|
| ワールドシティタワーズ | 9件 |
| 芝浦アイランド ケープタワー | 6件 |
| 芝浦アイランド グローヴタワー | 3件 |
| プラウドタワー芝浦 | 3件 |
| パークタワー品川ベイワード | 3件 |
| ブランズタワー芝浦 | 2件 |
| GLOBAL FRONT TOWER | 1件 |
| ベイクレストタワー | 1件 |
| ローレルタワー ルネ浜松町 | 1件 |
| THE TOWERS DAIBA | 1件 |
| 合計 | 30件 |
6月、少なくとも30件は湾岸タワマンの売買取引があった
湾岸4地区の区分建物75件のうち、少なくとも30件、40%はタワーマンションと地番まで照合できました。
ただし、この30件も「30戸が売れた」という意味ではありません。
同じ所在地等に複数の所有権移転売買が記録される場合があるため、あくまで登記の受付件数として集計しています。
また、確認できなかった45件がすべて非タワマンという意味でもありません。
今回は公開情報から物件を確認できたものだけをタワマンとして数えています。
登記から言えるのは「タワマンの取引は止まっていない」まで
では、この30件から何がわかるのでしょうか。
少なくとも、「湾岸タワマンにまったく買い手が付かなくなった」という状態ではありません。
2026年6月にも複数の代表的な湾岸タワマンで、売買を原因とする所有権移転登記が発生しています。
一方、このデータだけから「湾岸タワマンは今もよく売れている」と結論づけることもできません。
登記には、次のような情報がないためです。
売買登記ではわからないこと
・最初はいくらで売り出したのか
・最終的にいくらで成約したのか
・何回値下げしたのか
・売却まで何日かかったのか
たとえば2億円で売り出した部屋を、1億7,000万円まで値下げして売った場合でも、登記上は同じ「所有権移転売買」です。
つまり、登記で確認できるのは「売買を原因とする所有権移転が行われたこと」です。
売りやすかったのか、希望価格で売れたのかまではわかりません。
一方、都心3区では「売り物件」が大きく増えている
そこで、売れやすさを考える補助材料として東日本不動産流通機構(REINS)のデータを見ます。
REINSとは、不動産会社が物件情報を登録・共有するネットワークです。
2026年6月の都心3区(港区・中央区・千代田区)の中古マンションでは、次の変化がありました。
| 指標 | 2025年6月 | 2026年6月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 成約件数 | 306件 | 223件 | -27.1% |
| 在庫件数 | 3,230件 | 4,676件 | +44.8% |
| 成約㎡単価 | 232.14万円 | 222.96万円 | -4.0% |
売りに出されたまま残っている中古マンションは44.8%増。一方、実際の成約件数は27.1%減でした。
つまり、1年前より売り手にとって競合する物件が増えていることになります。
売り手が強気の価格を維持しづらい状況
売出物件が増えれば、買い手は複数の物件を比較しやすくなります。
「この部屋が高ければ、別の部屋を見る」
「同じ価格なら条件のよいマンションを選ぶ」
といった判断がしやすくなり、売り手が強気の価格を維持しにくくなる可能性があります。
ただし、このREINSの数字は港区・中央区・千代田区の中古マンション全体です。
「湾岸タワマンの在庫が44.8%増えた」という意味ではありません。
湾岸タワマンだけの登記データと、都心3区全体の中古マンション市場データは対象が異なるため、分けて見る必要があります。
結論|「売れない」ではなく、「何でも高く売れる市場ではない」
今回の調査で確認できた事実を整理すると、3つあります。
1つ目。
港区では2026年6月に、売買を原因とする所有権移転登記が549件受け付けられていました。
2つ目。
湾岸4地区では85件。そのうち、地番まで照合してタワーマンションと確認できたものが少なくとも30件ありました。
3つ目。
一方、都心3区の中古マンション市場では、在庫が44.8%増え、成約件数は27.1%減っています。
ここから導ける結論は、「湾岸タワマンが売れなくなった」ではありません。
少なくとも、実際の売買に伴う登記は現在も確認できます。
ただし、在庫が増えて買い手の選択肢が広がっている以上、「湾岸タワマンなら高く出しても売れる」という売り手優位の市場には変化が出ていると考えるのが妥当でしょう。
「何でも高く売れる市場」から、「価格と物件が選ばれる市場」へ
不動産投資家にとって重要なのも、「売れるか、売れないか」の二択ではありません。
「いくらなら売れるのか。その価格でも利益が残るのか」
を見ることです。
湾岸タワマンは、売れなくなったのではない。
「何でも高く売れる市場」から、「価格と物件が選ばれる市場」へ。
今回の港区3,846件の登記から見えてきたのは、その変化です。
【調査・データに関する注記】
・本記事の登記集計は、2026年6月に港区で受け付けられた法務局受付帳3,846件をもとに独自集計しています。
・「所有権移転売買」の件数は登記受付データの件数であり、実際の取引戸数や売買契約件数と一致するとは限りません。
・タワーマンションについて法律上統一された定義はないため、本記事では便宜上、地上20階以上の共同住宅を対象としています。
・物件名は登記上の地番と公開されているマンション所在地・物件概要を照合して確認しています。
・都心3区の中古マンション市場データは、東日本不動産流通機構(REINS)が公表した2026年6月の市場動向を参照しています。湾岸タワーマンションのみを対象とした数字ではありません。