【12%の高利回りは危険なのか】融資型クラファンでは「長期で借りられること」が企業の信頼の証?なぜ成長企業は高金利でも資金調達するのか?
公開日 2026/08/06
最終更新日 2026/08/06
資産運用において、多くの投資家が「選択肢の不足」という壁に直面しています。
「株式や債券だけで、本当に資産を守り、増やせるのか」。
機関投資家がポートフォリオに組み入れることも多い「オルタナティブ投資」への関心が高まる中、その選択肢の一つとして注目されているのが、貸付型(融資型)クラウドファンディング。
そのサービスとして、注目を集めるのが「オルタナバンク」。
今回、「オルタナバンク」を運営するSAMURAI証券を取材しました。(取材日2026年6月12日)
なお、SAMURAI証券は第一種・第二種金融商品取引業者として登録されています。
取材を通じて見えてきたのは、「高利回り=単純に危険」とは言い切れない金融の構造でした。
1. オルタナバンクは、グループによる「投資先行型」のビジネスモデル
取材で驚かされたのは、オルタナバンクの徹底した姿勢。
多くの融資型クラウドファンディングが「融資先から依頼が来てからファンドを組成する」のに対し、同社グループは「投資先行型」を採用。
これは、同社グループがまず自社資金で融資を先に行い、信頼に足る債権のみを投資家に提供するというモデル。
案件を待つのではなく、自ら仕込み、リスクを取る。
運営側がしっかりとリスクを負ったうえで、自信を持って組成されたファンドだけが、投資家に提供されます。
上場企業への融資ファンドも存在
この「リスクを先に取る」という責任ある姿勢こそが、同プラットフォームの強みといえそうです。
なお、オルタナバンクのファンドの一例が「【毎月分配】東証プライム上場企業短期支援ファンドID946」。
こちらは、担保付・毎月分配・貸付型のファンドで、目標利回り4.5% (税引前)、運用期間6ヶ月、最低申込金額1万円からという条件でした。
東証プライム上場企業を支援する短期ファンドという点は、貸付型クラウドファンディングの中でも比較的イメージしやすい案件といえそうです。
リコースで運営会社がリスクをとる構造も
さらに同社の商品には「リコース」が設定されているものも存在。
リコースローンとは、返済原資が担保資産だけに限定されず、保証人、自己資金、借換資金などからの返済も追求できる貸付形態。
つまり、担保だけに頼るのではなく、複数の返済ルートを想定した設計になっています。
ただし、リコースや担保があるからといって、元本が保証されるわけではないので、この点は理解しておく必要があります。
2. 「目標利回り達成率99.5%(税引前)」を支える多重のスクリーニング
「高利回りは怪しいのでは?」という疑念への回答も取材で得られました。
オルタナバンクの公式実績では、2022年1月1日から2026年5月31日までに運用開始し、償還が完了したファンドについて、目標利回り達成率99.5%(税引前)と公表。
ただし、この数字はあくまで「過去に運用開始し、償還が完了したファンド」の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
多重チェックの上でファンドを提供
※上図はグループ内の手続きフローのため、SAMURAI証券株式会社単体でのファンド組成フローではありません。
取材によると、案件成立までのプロセスは厳格。
まず、融資先を紹介するエージェントが、ファンドの失敗を防ぐために融資先を徹底精査。
さらに-グループ会社内で稟議申請のうえ、所定の社内承認手続きを経た後、最終的にはSAMURAI証券にて外部有識者を含めたファンドの案件審査会によるダブルチェックを経て初めてファンドが組成されます。
運営会社の利害は投資家ともある程度一致
株式売買の仲介では、取引が成立した時点で手数料収益が確定するため、その後の運用成果は事業者の損益に直接影響しません。
一方、当社のビジネスモデルは融資先からの返済を前提に成り立っており、投資家への分配を果たして初めて当社の収益が生まれる構造です。
つまり、融資先の選定・審査において手を抜くことは、そのまま当社自身のリスクに直結します。
投資家と運営会社が同じ方向を向かざるを得ない、利害の一致した収益構造になっているのです。
エージェントが案件に責任を持ち続ける体制
なお、案件の一部は現地に精通した海外エージェントを通じて発掘・紹介を受けています。
ただし、エージェントへの紹介フィーは融資先からの完済を条件に支払う成功報酬型を採用しており、エージェント自身も返済完了まで報酬が確定しない設計です。
また、期中においては融資先のモニタリング業務も担わせることで、エージェントが案件に責任を持ち続ける体制としています。
こうした仕組みが、案件ソーシングから返済完了まで、利害の一致した構造を支えています。
案件決定には分析を含め数ヶ月かけることも
オルタナバンクでは、地域や業種も分散(モンゴル、インド、エストニア等)されており、特定のセクターに依存しないようになっています。
こうした何重ものフィルタリングも存在。
※ファンド化にあたり、エージェントによる精査に加え、グループ会社内で稟議申請のうえ、所定の社内承認手続きを経た後、最終的にはSAMURAI証券にて外部有識者を含めたファンドの案件審査会による厳格な審査が必須
さらに、赤字企業や創業間もない企業は原則避け、案件決定には分析を含め数ヶ月かけることも。
こうした厳重な多重チェックが、過去の「目標利回り達成率99.5%(税引前)」という実績を支えているのかもしれません。
リスクも把握する
とはいえ、海外案件は国内案件とは異なるリスクもあり、それが為替、現地法制、カントリーリスク、情報の非対称性など。
だからこそ、「海外だから利回りが高い」と単純に見るのではなく、どの国、どの事業なのかなどを確認する姿勢が重要。
補足:高利回りに不安を感じるならBDCを知るのも一つ
高利回りに不安を感じるなら、知っておきたい仕組みの一つが、米国金融市場で発展している「BDC(Business Development Company)」。
BDCは、中小企業や中堅企業に融資や出資を行う投資会社。
一定の要件のもとで利益の多くを投資家に還元する仕組みを持っています。
Amazon、UberなどもBDCで恩恵を受けた
SECもBDCについて、一定割合以上を適格なポートフォリオ企業に投資する制度として説明しています。
そして、世界最大級のBDCの一つであるAres Capital Corporation(ARCC)は、中堅企業向けに包括的な資金提供を行うBDC。
なお、この手の手法で資金調達をしていた企業としては、Amazon、Uber、Meta、Airbnbなどがあります。
今や世界的な有名企業も、ベンチャーの頃はこうした資金調達を活用していました。
「なぜその利回りが成立しているのか」を分解して見ることが大切
もちろん、BDCとオルタナバンクの商品は同じものではないです。
ただ、「銀行融資だけでは届きにくい成長企業や中堅企業に資金を供給し、そのリスクに応じたリターンを投資家が受け取る」という考え方は共通しています。
つまり、高利回りだから即危険というより、「なぜその利回りが成立しているのか」を分解して見ることが大切なのではないでしょうか。
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3. 「信頼の証」としての長期融資
取材では「運用期間が長いからと言って”悪”と決めつけるのは考え物」という気づきも得られました。
投資家にとって、投資期間の長さは「資金の拘束」として敬遠されがち。
しかし取材では、「長期間借りられることこそが、企業の信頼の証」という視点が示されました。
高い社会的信用があるからこそ、長期の貸し出しが成立する
例えるなら、優良(上場)企業の社員が35年固定金利で住宅ローンを組めるのと似たようなもの。
高い社会的信用があるからこそ、長期の貸し出しが成立します。
ソーシャルレンディングにおいても、数年にわたって安定的な融資が受けられる企業とは、それだけ事業基盤が強固で、経営の透明性が高い可能性も。
リスクもしっかり考慮する
一方で、長期融資には資金拘束のリスクもあります。
オルタナバンクの公式説明でも、同社が提供する金融商品は運用期間の途中で解約できないとされています。
そのため、長期案件は「信頼の証」として評価できる面がある一方で、生活防衛資金や近い将来使う予定の資金を入れるべきではないと言えそうです。
4. 銀行ルールを超えた「ビジネスのポテンシャル」
「銀行が融資しない企業は危険ではないか?」という疑問を持っている方もいるでしょう。
しかし、この裏には「銀行のルールでは評価しえない、隠れた企業のビジネスポテンシャル」があります。
例えば、蓄電池事業や先端技術。
これらは高い成長性を持つにもかかわらず、銀行の社内ルール、前例の有無、担保評価、設備の性質などから、希望するタイミングや条件で融資を受けにくいケースがあります。
つまり、ここにはミスマッチのようなものが存在します。
銀行に評価されない企業をエンパワーメントする側面も
そこでオルタナバンクは、ルールからこぼれ落ちたポテンシャルある企業と、投資家をマッチングさせます。
年率で見て高い調達コストを払っても、それ以上の利益を事業で出せる企業にとって、スピーディーな資金調達は合理的な経営判断になり得ます。
ただし、ここで重要なのは「融資クラファンで融資されている=成長余地がある」と短絡的に見ないこと。
銀行が貸さない理由には、単にリスクが高い、担保が弱い、財務が不安定、といったケースも。
だからこそ、投資家は利回りだけで判断せず、担保、保証、返済原資、貸付先の事業内容、過去の償還実績などを確認する必要があります。
5. 「シリーズ」でつくるポートフォリオの最適化
では、投資家はオルタナバンクのファンドをどう選ぶべきか。
オルタナバンクには役割を持たせたシリーズが存在するため、そこから選んでいくことが可能。
例えば、「極」シリーズは、短期運用を体験しやすい設計。
その具体例が「【超短期】初回投資家応援・極ファンドID1047」。
こちらは、担保付・初回投資家限定で、目標利回り9.9%(税引前)、運用期間1ヶ月、最低申込金額1万円からのファンドでした。
「短期でまず仕組みを理解したい」という投資家にとっては、入り口になりやすい設計。
一方で、利回り9.9%という数字だけを見るのではなく、募集金額、運用期間、担保の内容、返済原資を確認することが大切。
短期運用ファンドで始めやすい面も
また、「【元利金一括返済】初回投資家応援ファンドID990」は、担保付で、目標利回り4%(税引前)、運用期間1ヶ月、最低申込金額1万円からのファンドでした。
短期運用型は資金拘束が短い点がメリット。
ですが、再投資先を探す手間がある、といった点もあります。
「昇」シリーズでステップアップを経験できる
他に、「昇」シリーズは、多様な条件を提供するもの。
具体例が、「【元利金一括返済】投資デビュー応援・昇ファンドID1088」。
こちらは、担保付で取引回数が限定されています。
目標利回り6%(税引前)、運用期間3ヶ月、最低申込金額1万円からのファンドでした。
これらを組み合わせ、債権の種類、期間、分配方法、投資対象地域を分散させることで、リスク・リターンのバランスを整えることも可能。
中立的に見たオルタナバンクの評価
オルタナバンクの評価できる点は、
証券会社が運営していること、
1万円から投資できること、
短期案件から毎月分配型まで選択肢があること、
また、担保付、毎月分配なども特徴の1つ。
元本保証でない点に注意
一方で、注意点もあります。
貸付型クラウドファンディングに元本保証はありません。
貸付先の信用悪化、事業計画の遅れ、為替変動、海外案件のカントリーリスクなどで、元本毀損や償還遅延が起こる可能性があります。
まとめ:リスクはありながら、高利回りを狙えるメリットも
オルタナバンクはリスクもありながら、年率5%以上のリターンを狙えるファンドもあります。
ただし、以下の視点も必要。
どの企業に貸すのか。
返済原資は何か。
担保や保証はあるのか。
大切なのは、一つの案件に集中しすぎないこと。
短期、毎月分配、国内、海外などを分けて考え、自分のリスク許容度に合う範囲で少額から試すことが1つと言えそうです。
「高利回り=危険」と決めつけるのではなく、「なぜ高利回りなのか」を理解する。
それが「貸付型クラウドファンディングを利用する上で大事な視点」になり得ます。
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投資に関する注意点
本記事は、オルタナバンクへの取材内容および公開情報をもとに、貸付型クラウドファンディングの仕組みや特徴を解説するものです。
特定の金融商品の購入、投資、申込みを推奨するものではありません。
貸付型クラウドファンディングは元本保証ではありません。
投資を行う場合は、必ず各ファンドの契約締結前交付書面、重要事項説明、リスク説明などを確認し、自身の余裕資金の範囲で判断してください。