「港区のマンションはもう売れないのか」「金利上昇で暴落が始まるのではないか」。
都心マンションの価格高騰が続いてきただけに、最近の市場変化が気になっている人も多いでしょう。
そこで今回、2026年6月に港区で受け付けられた法務局の不動産登記受付帳227ページ、計3,846受付を独自に集計しました。
さらに、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表する千代田区・中央区・港区の「都心3区」の中古マンションデータと照らし合わせました。
すると、気になる変化が見えてきます。
都心3区では中古マンションの成約件数が2026年に入って7カ月連続で前年割れする一方、7月末の在庫は前年比50.5%増まで膨らんでいます。
ただし、マンション価格そのものが暴落しているわけではありません。
いま都心マンション市場で先に起きているのは、「価格下落」よりも「売れ行きの悪化」です。
港区マンションは本当に売れなくなったのか。金利上昇の影響はどこまで出ているのか。
登記と成約データから検証します。
港区の不動産登記3,846件を調査、売買は549件
今回調査したのは、2026年6月1日から6月30日までに港区で受け付けられた不動産登記です。
計3,846受付から「所有権移転・売買」を抽出すると、549受付ありました。
物件種別は次の通りです。
| 物件種別 | 売買受付 | 構成比 |
|---|---|---|
| 区分建物 | 400件 | 72.9% |
| 土地 | 133件 | 24.2% |
| 建物 | 16件 | 2.9% |
| 合計 | 549件 | 100% |
約73%を区分建物が占めている
最大の特徴は、売買登記の約73%を区分建物が占めていることです。
港区というと土地や一棟ビルなどの高額取引も多いイメージがありますが、登記件数ベースでは区分所有物件の動きが目立ちます。
ただし、ここでは「区分マンション」ではなく「区分建物」と表記します。
登記上の区分建物にはマンション住戸だけでなく、区分所有された店舗や事務所などが含まれる可能性があるためです。
したがって、「港区でマンションが400件売買された」と断定することはできません。
それでも、港区の不動産売買においてマンションを中心とする区分所有物件の存在感が大きいことは分かります。
港区で売買が最も多かったのは「三田」
では、港区のどのエリアで不動産が動いているのでしょうか。
同じ取引では「土地+建物」「所有権移転+抵当権設定」など、複数の登記が連続して受け付けられることがあります。
なお、売買を含む取引は427グループとなりました。
1位:三田、2位:赤坂、3位:芝、4位以降は?
主なエリアは次の通りです。
| エリア | 売買受付数 | 売買関連グループ |
|---|---|---|
| 三田 | 67 | 46 |
| 赤坂 | 52 | 42 |
| 芝 | 43 | 34 |
| 芝浦 | 40 | 33 |
| 白金 | 39 | 30 |
| 高輪 | 28 | 24 |
| 南青山 | 34 | 24 |
| 西麻布 | 29 | 23 |
| 港南 | 23 | 20 |
| 南麻布 | 23 | 20 |
| 六本木 | 25 | 18 |
最多は六本木でも赤坂でもなく、三田でした。
港区の高級マンションというと六本木、赤坂、南青山、西麻布などが注目されやすいです。
しかし、実際の登記を見ると三田のほか、芝・芝浦などでも所有権が多く動いています。
「三田の盛り上がりが港区で最大」ではない
ただし、これは取引金額のランキングではありません。
数千万円の区分建物でも、数十億円の土地でも、登記上はそれぞれ1件です。
そのため「三田の盛り上がりが港区で最大」とまでは言えません。
見るべきなのは、どの地域で実際に所有権移転が多く発生しているかという流動性の一つの手掛かりです。
港区マンションは本当に売れない?都心3区は7カ月連続で成約減
問題はここからです。
今回の法務局データは2026年6月の1カ月分しかありません。
549件という数字だけでは、港区の不動産売買が前年より増えたのか、減ったのかは判断できません。
そこで参考になるのが、東日本レインズの「月例マーケットウオッチ」です。
6月は前年同月比27.1%減、7月も18.6%減
東日本レインズでは港区単独ではなく、千代田区・中央区・港区を「都心3区」として中古マンション市場を集計しています。
2026年の成約件数は次の通りです。
| 月 | 都心3区の成約件数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 1月 | 194件 | -11.0% |
| 2月 | 243件 | -6.2% |
| 3月 | 280件 | -21.3% |
| 4月 | 238件 | -9.2% |
| 5月 | 198件 | -25.8% |
| 6月 | 223件 | -27.1% |
| 7月 | 228件 | -18.6% |
2026年1月から7月まで、7カ月連続で前年同月を下回っています。
特に6月は前年同月比27.1%減、7月も18.6%減でした。
前年ほどのペースで中古マンションが成約しなくなっている
「港区のマンションがまったく売れなくなった」という状況ではありません。
しかし少なくとも、港区を含む都心3区では前年ほどのペースで中古マンションが成約しなくなっていることは確認できます。
※成約件数の前年同月比だけで市場悪化を断定せず、在庫や新規登録、価格なども合わせて見る必要があります。
さらに異変、都心3区のマンション在庫が前年比50%増
成約件数以上に気になるのが、売り出されている中古マンションの増加です。
2026年6月と7月の都心3区を見ると、成約が減る一方で、新規登録と在庫が大きく増えています。
| 成約件数 | 新規登録 | 在庫 | |
|---|---|---|---|
| 2026年6月 |
223件 -27.1% |
1,641件 +35.1% |
4,676件 +44.8% |
| 2026年7月 |
228件 -18.6% |
1,703件 +38.2% |
4,942件 +50.5% |
※増減率は前年同月比。
売りに出されるマンションは増えているのに、成約するマンションは減っている
2026年7月末の中古マンション在庫は4,942件。
前年7月の3,283件から、わずか1年間で50.5%増加しました。
つまり現在の都心3区では、
「売りに出されるマンションは増えているのに、成約するマンションは減っている」
という状態です。
「港区マンションはもう売れないのか」を考えるうえでは、価格以上にこの変化が重要です。
「成約÷在庫」で見ると、売れ行きは1年前の約半分
成約件数だけを見ても、マンションが「売れやすいのか、売れにくいのか」は分かりません。
例えば、同じ月に200件成約していたとしても、売り出されている物件が1,000件しかない市場と、5,000件ある市場では意味がまったく違います。
そこで今回は、売れ行きを比較するための単純な参考指標として、
「その月の成約件数 ÷ 月末の在庫件数」
を計算します。
簡単にいうと、「在庫100件に対して、その月に何件成約したか」を見るイメージです。
| 成約件数 | 月末在庫 | 成約÷在庫 | |
|---|---|---|---|
| 2025年6月 | 306件 | 3,230件 | 9.5% |
| 2026年6月 | 223件 | 4,676件 | 4.8% |
| 2025年7月 | 280件 | 3,283件 | 8.5% |
| 2026年7月 | 228件 | 4,942件 | 4.6% |
具体例で「売れ行きは1年前の約半分」をわかりやすく説明
例えば2025年6月は、月末在庫100件に対して、その月の成約が約9.5件ありました。
それが2026年6月には、在庫100件に対して約4.8件まで低下しています。
7月も同じです。
2025年7月は約8.5件だったのに対し、2026年7月は約4.6件でした。
つまり、市場に売り出されているマンションの数に対して、実際に売れているマンションの割合が1年前のほぼ半分になっているということです。
これは「マンションがまったく売れない」という意味ではありません。
在庫そのものが大きく増えている一方で、成約件数は減っているため、1物件あたりで見た売れやすさが低下していると考えるための参考になります。
「売り物件の増加に対して、成約が追いついているのか」がわかる
なお、この「成約件数÷月末在庫件数」は正式な「在庫回転率」ではありません。
月内の成約件数と月末時点の在庫を単純に割った参考指標であり、個々のマンションが売れる確率を示すものでもありません。
それでも、同じ計算方法で前年と比較することで、
「売り物件の増加に対して、成約が追いついているのか」
を直感的に把握しやすくなります。
今回の数字を見る限り、都心3区ではこの1年間で、在庫に対する売れ行きが大きく低下していることが分かります。
1件成約する間に約7.4件が新たに市場へ登録されている
さらに「新規登録÷成約」で見ると、2025年6月は約4.0件でしたが、2026年6月は約7.4件です。
単純計算では、1件成約する間に約7.4件が新たに市場へ登録されていることになります。
価格が下がるより前に、「売りたい人の増加に買い手が追いついていない」可能性を示す数字です。
ただし港区マンションが「暴落」しているわけではない
では、港区を含む都心マンションはすでに暴落しているのでしょうか。
ここは明確に分ける必要があります。
2026年7月の都心3区中古マンションは、成約㎡単価が239.25万円/㎡で前年比0.9%上昇しました。
一方、平均成約価格は1億3,095万円で前年比5.9%下落しています。
港区マンション価格が下落しているわけではない
一見すると価格下落が始まったようにも見えますが、同月に成約したマンションの平均専有面積は前年比6.8%減でした。
つまり、成約した物件が前年より小さくなったことも、平均価格を押し下げています。
㎡単価自体は前年を上回っているため、現時点で、
「港区マンションが暴落している」
と表現するのは適切ではありません。
むしろ、
「高い価格水準を維持したまま、取引量が減り、売り物件が積み上がっている」
と見る方が実態に近いでしょう。
「値下がり前夜?」価格より先に流動性が落ちることはある
今回のデータで最も興味深いのは、価格より先に売れ行きが変化していることです。
不動産市場が変調するとき、必ずしも価格が最初に下がるとは限りません。
売主は、これまで1億円で売れていたマンションを、相場が少し変わったからといって突然8,000万円に値下げするわけではありません。
まず従来と同じ価格で売りに出します。
しかし買主が現れなければ、販売期間が長くなります。
その状態が続くと、売れないマンションが在庫として積み上がります。
今後価格調整につながる可能性はある
さらに売却を急ぐ売主が増えれば、そこで初めて値下げ競争が起こる可能性があります。
現在の都心3区で確認できるのは、少なくとも「成約減少」と「在庫増加」です。
そのため、タイトルでは「暴落した」ではなく「暴落前夜?」としています。
今後価格調整につながる可能性はありますが、現時点で「暴落前夜だ」と断定できる状況でもありません。
金利上昇で港区マンションが売れなくなった?
では、なぜ都心マンションの成約が減っているのでしょうか。
考えられる要因の一つが金利上昇です。
日本銀行は2025年12月、政策金利にあたる無担保コールレートの誘導目標を0.5%程度から0.75%程度へ引き上げました。
さらに2026年6月16日の金融政策決定会合では、1.0%程度へ引き上げることを決定しています。
「金利が上がったから都心3区の成約件数が27%減った」ではない
ただし、
「金利が上がったから都心3区の成約件数が27%減った」
と単純に結論づけることはできません。
マンションの売買件数には、物件価格、海外投資家の動向、売り出される物件の構成、前年の反動など、さまざまな要因が影響します。
2025年12月以降続いてきた金利上昇が成約に影響?
さらに不動産取引には、
購入判断 → 売買契約 → 融資 → 決済 → 登記
という時間差があります。
6月16日の利上げだけで6月の成約や登記が大きく減った、と考えるのは無理があります。
見るべきなのは、2025年12月以降続いてきた金利上昇の累積的な影響でしょう。
銀行から実際に借りる金利も上昇
政策金利だけではありません。
銀行の実際の貸出金利も上昇しています。
日本銀行の「貸出約定平均金利」によると、国内銀行の新規長期貸出金利は次のように推移しています。
| 2026年 | 国内銀行・新規長期貸出金利 |
|---|---|
| 1月 | 1.564% |
| 3月 | 1.885% |
| 5月 | 2.066% |
| 6月 | 1.944% |
借入コストの上昇は不動産にネガティブ?
月ごとに上下はあるものの、1月と比べれば高い水準です。
既存貸出を含む国内銀行の長期貸出金利も、2026年1月の1.163%から6月には1.368%へ上昇しています。
なお、これは不動産投資ローンだけを集計した数字ではありません。
それでも、企業や投資家を取り巻く借入コストそのものが上昇していることは確認できます。
わずかな金利上昇でも「買う」をためらう要因に
特に都心の高額マンションでは、わずかな金利差でも返済額への影響が大きくなります。
これまでの、
「物件価格は高いが、金利が安いから買える」
という環境は変わりつつあります。
それでも銀行が不動産融資を止めたわけではない
一方で、「銀行が不動産を買う人にお金を貸さなくなった」と考えるのも早計です。
日銀短観の2026年6月調査では、金融機関の貸出態度判断DIは全規模合計で+13でした。
3月調査から変化しておらず、企業側から見て金融機関の貸出姿勢が急激に厳しくなった状況は確認できません。
不動産業向け貸出について、全産業向けと比べて速いペースで増加中
さらに、日本銀行の2026年4月「金融システムレポート」では、不動産業向け貸出について、全産業向けと比べて速いペースで増加を続けているとしています。
つまり現在起きていることは、
「銀行がお金を貸さなくなった」
とは少し違います。
より近いのは、
「融資は出ている。しかし借入金利が上がり、高額な都心マンションを以前と同じ価格・同じ収支では買いにくくなっている」
という状況でしょう。
港区の登記でも「融資付きの売買」はまだ相当数ある
今回調査した港区の登記からも、それが分かります。
549件の所有権移転・売買を連続する登記ごとにまとめると、売買を含む取引は427グループありました。
そのうち、163グループ、38.2%で抵当権または根抵当権の新規設定を確認しています。
| 登記の内容 | グループ数 | 割合 |
|---|---|---|
| 抵当権・根抵当権の新規設定あり | 163 | 38.2% |
| 抹消登記あり | 233 | 54.6% |
| 抹消+新規抵当権設定の双方あり | 98 | 23.0% |
融資を利用した港区の不動産売買は相当数存在?
受付帳には、
抵当権抹消 → 所有権移転・売買 → 新規抵当権設定
と続く、典型的な不動産決済のパターンも確認できます。
旧所有者側の抵当権を外して所有権を移転し、買主側が新たな融資を受けて抵当権を設定したと考えられるケースです。
したがって、2026年6月時点でも、融資を利用したとみられる港区の不動産売買は相当数存在しています。
港区のタワマンも暴落する?芝浦・港南では売買を確認
港区マンションの中でも気になるのが、芝浦や港南など湾岸エリアのタワーマンションでしょう。
今回の登記では、芝浦で40件、港南で23件の売買受付を確認しています。
現在も所有権は動いているため、「港区のタワマンがまったく売れなくなった」とまでは言えません。
中古マンション在庫が大きく増加
一方、港区を含む都心3区全体では中古マンション在庫が大きく増加しています。
今後重要になるのは、単純な平均価格だけではありません。
同じマンション内で売出住戸が何戸まで増えるか、売出価格と実際の成約価格の差が広がるか、販売期間が長くなるかといった点です。
今後、値下げ交渉しやすくなる可能性も
人気のタワーマンションでも、同一棟内の売出在庫が増えれば、買主側の選択肢は増えます。
売主同士の競争が強まれば、値下げ交渉が入りやすくなる可能性もあります。
「タワマン暴落」という言葉だけを見るより、在庫と成約のバランスを追う方が市場の変化を早く捉えやすいでしょう。
今後は「政策金利1%」後の3つの数字を見る
今回の港区の登記データだけで、
「政策金利が1%になったことで港区マンションが売れなくなった」
と結論づけることはできません。
6月16日に決定された利上げには、不動産取引へ波及するまでタイムラグがあるからです。
むしろ重要なのは、2026年夏以降から秋にかけての数字でしょう。
港区の所有権移転・売買件数などを見る
今後は次の3つを追うと、市場の変化が見えやすくなります。
もし今後、
売買登記が減る → 融資付き取引も減る → 在庫がさらに増える
という動きが同時に進めば、金利上昇が都心不動産の流動性を圧迫している可能性はより高まります。
反対に、在庫が減少に転じ、抵当権付きの売買も維持されるなら、政策金利1%の環境でも都心マンションの買い需要が継続していることになります。
港区マンションはもう売れない?よくある質問
次に、よくある質問に回答します。
港区のマンションはすでに暴落していますか?
現時点では、暴落しているとは言えません。
2026年7月の都心3区では中古マンションの成約件数が前年比18.6%減り、在庫は50.5%増えました。
一方で、成約㎡単価は前年比0.9%上昇しています。
価格暴落より先に、売買の流動性が低下している状態と見る方が実態に近いでしょう。
まとめ|港区マンションは「値下がり」というより、流動性が低下している
港区では現在も相当数の不動産取引が成立しています。
現時点で見えているのは、
「港区マンションの暴落」ではなく、「高値のまま売買の流動性が低下している市場」
です。
このまま在庫が積み上がり、売主が値下げを始めるのか。
それとも政策金利1%の環境でも買い需要が戻るのか。
「暴落前夜」なのか、それとも一時的な売買停滞なのか。
答えが見えてくるのは、むしろこれからです。
※本記事は独自集計データに基づく参考情報の提供を目的としており、不動産の売買を推奨するものではありません。最終的な投資・売買判断はご自身の責任で行ってください