多彩な選択肢と公平性・透明性で「投資の民主化」を目指す。ーー「CAPIMA(キャピマ)」舩越亮氏インタビュー

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#事業者インタビュー
不動産投資の「始めの一歩」として、不動産クラウドファンディングソーシャルレンディングに注目する人が増えています。この分野に新規参入する事業者も増えており、市場規模は年々拡大しています。 

 このシリーズでは、そんな不動産クラウドファンディング/ソーシャルレンディングのサービス事業者側に焦点を当て、キーパーソンにインタビューを実施。サービスの深い部分を“中の人”に直接語っていただきます。今回は、ソーシャルレンディングサービス「CAPIMA(キャピマ)」を運営するアバンダンティアキャピタル株式会社代表取締役・舩越亮(ふなこし・りょう)氏にお話を伺いました。

舩越亮(ふなこし・りょう)
アバンダンティアキャピタル株式会社 代表取締役
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、モルガン・スタンレー証券に入社。その後UBS証券等欧米の外資系証券会社にて22年にわたり商品開発業務に従事。直近では、メリルリンチ日本証券及びクレディ・アグリコル証券にて金融商品開発部長(マネージングディレクター)を歴任。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、情報処理技術者。

CAPIMA(キャピマ)とは?

CAPIMA「CAPIMA」は、2023年にサービスをローンチしたソーシャルレンディングサービスです。一般的な不動産事業を対象にしたファンドだけでなく、再生可能エネルギー事業や「SDGs」に配慮したフードロス削減事業など、さまざまな事業を対象にしたユニークなファンドを展開し注目を集めています。

CAPIMA公式サイト

世の中のニーズと現実とのギャップを埋めるサービスを

ーー2019年にアバンダンティアキャピタル株式会社を設立されたきっかけ・経緯について教えてください。

もともと私は20年以上にわたってモルガン・スタンレーやメリルリンチといった投資銀行で金融商品開発の仕事をしていました。クライアントは基本的に法人で、その場合、相手が求めるリターンやリスク許容度を十分にヒアリングした上で商品を一つひとつカスタムメイドしていきます。当然ながら、商品の説明や運用に関するアドバイスも個別に丁寧に行っていきます。 

その一方で、自分が個人で投資を行う立場になって感じたのは、投資商品や投資に関するサービスがかなり限定的であるということでした。例えば、資産運用として何か投資を始めたいと思ったときに、株や為替、暗号資産などは値動きが激しく高いリスクを強いられます。その割に仕事などをしていたら逐一見ていられないという事情もありますし、心理的に疲弊する可能性もあってハードルが高いんですよね。 

反対に、値動きも手間も少ないものを探そうと思うと銀行預金や債券などになりますが、収益性はたかが知れています。銀行預金に関しては、場合によってはお金を引き出す手数料で一発でマイナスになる、といったことも起きてしまいます。つまり、「ハイリスク・ハイリターン」か「ローリスク・ローリターン」の2択になってしまうと感じたんですよね。少し前には「老後2,000万円問題」が取り沙汰されて、資産運用を迫られる状況にもなってきていますが、そのための選択肢が少なかったんです。

それで、それらの中間として「ミドルリスク・ミドルリターン」の商品やサービスが必要なのでは、と思ったんですね。そこで注目したのが融資型クラウドファンディング、つまりソーシャルレンディングでした。ソーシャルレンディングなら値動きがなく手軽で、かつしっかり利息を投資家に提供できます。これなら、世の中のニーズと現実とのギャップを埋められるのではと考えて、サービス立ち上げを見据え会社を設立しました。 

ーー「CAPIMA」のコンセプトを教えてください。 

「CAPIMA」では、「投資の民主化」というコンセプトを掲げています。ここには色々な意味を込めているのですが、先ほど申し上げたような「投資の選択肢を広げる」ということもその1つです。

そのほか、投資初心者でも始めやすい商品を提供することも「民主化」につながりますし、投資歴が長いか短いかで極力運用成績が左右されない商品を提供することも「民主化」につながります。あとは、投資に関する情報を誰に対しても公平に提供することも「民主化」の1つとして重要だと捉えていて、「CAPIMA」運営の大きな軸になっています。

多彩なプロジェクト・優待を実施する理由

ーー「CAPIMA」では投資した人に対して優待を設けたファンドがユニークですが、どのようなきっかけで発想し、始められたのでしょうか? 

我々のベースの考えとして、「関わる人みんなに喜んでもらいたい」というのがあります。投資家の方はもちろんのこと、集めた資金を貸し付ける融資先にも喜んでもらう、ということも常に念頭に置いているんです。そこで考えたのが、投資家さんに対して金銭以外のリターンがあってもいいんじゃないか、ということです。これを融資先の視点で考えてみると、金銭以外に例えば融資先が運営する飲食店の利用券などを投資家に提供することでサービス自体の販促につなげることができます。

融資先の事業者としては金利の負担こそありますが、それで宣伝もできれば一石二鳥ですから、投資家もうれしいし融資を受けた事業者もうれしいという「Win-Win」の関係をつくれます。さらに、その優待を見て「投資しよう」と思う方もいらっしゃいますから、我々もユーザーが増えてうれしいということになるので、まさに「みんながうれしい」面白い取り組みになっていると思います。今後もできる限りやっていきたいですね。

ーー「CAPIMA」では不動産にとどまらない多彩なプロジェクトを提供していますが、どのようにして融資先を決定しているのでしょうか?

基本的にはご相談いただくケースが多いのですが、まず扉を閉めないということは重要だと思っています。ソーシャルレンディングで資金調達を希望する事業者は、銀行などの金融機関で借入ができないというケースが多いのですが、事業性は十分にあるものも少なくありません。なので、何ができるかを我々も一緒になって考えていく。それによって自然とプロジェクトのバリエーションも増えてきているという感じです。

とはいえ、投資家のみなさんに損をさせないというのが大前提としてあるので、元本の保全性は重視しています。保全性というと一般的には不動産を担保にするのがわかりやすく、そうしているところが多いですよね。ただ、ほかと同じことをしても差別化はできないので、例えば再エネの案件では、国が保証する電力会社に対する売電債権を担保に設定するなど、「CAPIMA」ではユニークな方法も行っています。私をはじめ、当社は金融のプロが集まっていますので、ほかではやらないような方法で保全性を高める工夫をしています。 

ーープロジェクトの内容でも他サービスとの差別化を意識されているということですね。 

それはありますね。早いところですと、すでに10年以上やっているサービスもある中で、同じことしても埋もれてしまいますから、まずはプロジェクトのバリエーションを増やしていき、さらに興味を惹けるような面白いプロジェクトをできるだけ企画していくことは意識しています。プロジェクトに興味を持っていただければ、投資先の事業について知るきっかけにもなります。我々としては、そのことも非常に重要だと思っているんです。

実は「CAPIMA」では、たまに会員の方向けにアンケートをしているんです。例えば、小型風力発電施設の案件やフードロス削減の案件を行う前には「こういうプロジェクトをどう思いますか?」とか「どれくらいのリターンを期待しますか」みたいなアンケートを行いました。これも、プロジェクトに興味を持ってもらうための取り組みの1つです。

ーー投資家が自ら意見をいえる場があると、プロジェクトの背景にある社会課題に対する当事者意識も高まりそうですね。

そうですね。先ほど、「CAPIMA」のコンセプトは「投資の民主化」だといいましたが、プロジェクトに対して意見がいえることも「民主化」の1つなんです。アンケートに回答することで、そこにある課題について多少なりとも考えるきっかけになりますし、さらに実際にそのファンドに投資をすれば、さらに見え方が変わって関連ニュースも気になるようになるかもしれません。

そういう意味で、「CAPIMA」が経済に参加する意識や金融リテラシー向上のきっかけになれたらいいなと思いますね。

透明性の高い情報を公平に

ーー今のお話にもあったフードロス削減のプロジェクトなどでは、プロジェクトの背景についてかなり詳細に書かれてる印象があります。投資家目線では、投資をする上で納得感のある判断ができるような配慮を感じました。このへんの情報開示についてはどういった方針で運営をされているのでしょうか。

ありがとうございます。まさに我々がベースに考えてるのが、「公平性」と「透明性」なんですね。私自身、金融の世界で長くやってる中で「情報がすべての人に平等に行き渡っていないのでは」ということもずっと感じていたので、まずはみなさんに公平に情報を伝えることが重要だと思っています。ただ、金融は難しい言葉も多いので、そこはしっかり噛み砕いてわかりやすく伝えることも重視しています。

もう1つ重要なのが透明性です。適切な投資判断をするための十分な情報を開示する。ソーシャルレンディングでいえば、お金の貸し先がどんな会社であるかという信用面での情報もそうですし、その貸し先は何のために、どんな背景でお金が必要で、何をしようとしているかという情報もそうです。公平に情報を開示することで、みんなが同じ土俵で投資判断ができますし、プロジェクトの裏のストーリーも理解できれば投資はもっと楽しくなると思います。そういったことも意識しながら、情報を掲載するようにしています。

ーーでは、融資先の審査に関してはどのように進められているのでしょうか?

「CAPIMA」では、ご相談を受けたあと、まず営業部でニーズや背景などを詳しく伺った上で「事前審査」というものを行っています。その審査を通過すると、さらに上の「案件審査会議」に行くようになっています。「案件審査会議」では、各部署のリーダーのほか、私を含めた金融や不動産などの専門家も入ります。そこで事業内容はもちろん、資金調達の背景、融資先の財務状況、その他条件も含めた上での資金の保全性を総合的に見ながら審査を行います。そして、出席者全員がGOサインを出したものについてのみ案件として組成する、という流れで行っています。

もちろん意見が食い違うこともあるので、そこで差し戻したり、より高い保全性が必要だということで担保の条件を見直したりすることもあります。そのようにして、できるだけ適切なプロジェクトになるように審査・調整しています。

さらなる「民主化」実現へ

ーー今後、「こういった展開も検討している」というものがあればお聞かせください。

できれば、事業を社会的に意義のあるものにしていきたいという思いがあります。具体的には、ソーシャルレンディングをとおして、金銭のリターン以外でも社会貢献によって満足してもらえるような仕組みを作っていけたらと思っています。フードロス削減のプロジェクトは、売れ残ったりした食品を豚の飼料として生まれ変わらせて食品廃棄を減らすというものですが、これも社会貢献の取り組みの1つです。こうしたプロジェクトに投資を行うことで、間接的に社会問題の解決に参加することができます。

そのほかにも、今後は福祉や医療といった分野にもプロジェクトを広げていけたらと思っています。投資によって社会貢献ができて、しかもリターンが得られる、それによってさらに次の投資のモチベーションになる、という良いサイクルを今後もっと作っていきたいですね。

ーーその他、当記事をご覧の方へのメッセージなどがあればお願いします。

基本的に「CAPIMA」としてはやっぱり、関わる人みんなが楽しいことをやりたいなとか、新しいことをやりたいなというのがありますので、優待特典はバリエーションを増やしながらこれからもどんどんやっていきたいですね。

あとは、「投資の民主化」という部分では、我々が発信するだけでなく、ユーザー同士が交流しあえるコミュニティみたいなものを作れたらいいなと思っています。一方通行の情報だけでなく、投資家さん自身が能動的に情報に関わっていく場ができたらいいですね。我々には色々な提携先があるので、ユーザー同士だけでなく、そういった事業者の人と直接交流できたりしたら面白いですし、さらに深い情報を得るきっかけにもなると思います。

そうやって「CAPIMA」が中心になって、オープンな投資機会と有益な情報の提供をしていきたいですし、そのための仕組みづくりに、今後はさらに力を入れていきたいと思っています。(了)

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  • 記事を書いた人 a.sato

    『ゴクラクJOURNAL』編集長。10年余りのラジオディレクター・構成作家の経験を経てライターに転身。延べ300社以上のコンテンツのコンサルティング・ライティング、ブランディングに携わる。以後エンタメ・インフラなどのWebメディアの編集長を歴任したのち現職。3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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