【税金】不動産クラウドファンディングで確定申告が必要なケースは?節税方法も紹介
公開日 2024/07/30
最終更新日 2024/08/01
不動産クラウドファンディングは、少額から気軽にできて初心者でも始めやすいことから、近年注目を集めている投資商品です。しかし、まだ比較的新しい不動産投資商品であることから、利益が出た場合の税金はどのくらいなのか、確定申告は必要なのか、などの税金面がよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、不動産クラウドファンディングの税金や確定申告について詳しく解説します。不動産クラウドファンディングに興味を持っているのであれば、税金のことはしっかりと理解を深めておきましょう。
不動産クラウドファンディングの分配金にかかる税金
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて複数の投資家から募った資金で不動産の購入や運営を行い、その収益を投資家に分配する仕組みです。この分配される収益を分配金といい、分配金を受け取ると所得の一部としてみなされ、税金がかかります。不動産クラウドファンディングの分配金は、「雑所得」として扱われ、総合課税の対象となります。
税法上、所得は次の10種類があります。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
雑所得とは、ほかの9種類の所得いずれにも当てはまらない所得であり、年金収入や副業収入、FXでの収入などもこれに分類されます。「不動産クラウドファンディングの分配金」とはいえ、利子所得や配当所得、不動産所得に分類されるわけではない点に注意しましょう。
不動産クラウドファンディングに確定申告は必要?
不動産クラウドファンディングでは、分配金を受け取る前にクラウドファンディング事業者によって源泉徴収が行われるため、基本的には投資家が確定申告をして自身で納税する必要はありません。確定申告とは、1年間に生じた所得の金額とそれに対する税額を計算し、納税する手続きです。
ただし、すべてのケースにおいて確定申告が不要というわけではありません。状況によっては、源泉徴収されていても確定申告が必要な場合があります。
次で、確定申告が必要となるケースを紹介します。
不動産クラウドファンディングに確定申告が必要になるケース
では、どのような場合に確定申告をしなければならないのか、3つのケースを見ていきましょう。
1.給与所得以外の所得が20万円を超える場合
通常、給与所得を得ている会社員の場合は年末調整の手続きを経ているため、基本的には確定申告が不要です。しかし、雑所得を含む給与所得以外の所得が20万円を超える場合には確定申告が必要となります。
不動産クラウドファンディングの分配金の他にも副業などによる収入がある場合は、不動産クラウドファンディングでの所得が20万円未満であっても確定申告が必要になる可能性があるため注意しましょう。不動産クラウドファンディングの源泉徴収前の分配金額を確認して、給与所得以外の所得合計額が20万円を越えていないか確認しておくと安心です。
2.もともと確定申告が必要な人
会社勤めの場合は年末調整の手続きがあるため、確定申告は不要です。しかし、年収2,000万円以上の会社員や医療費控除を受ける方などは、給与所得以外の所得が20万円以下であっても確定申告が必要です。確定申告が必要な人は、不動産クラウドファンディングの所得も併せて申告をしましょう。なお、確定申告漏れがあると、ペナルティとしてさらに高い税金の支払いを求められるため、注意しましょう。
確定申告が不要な場合でも申告すれば還付金が受けられることも
基本的に、会社員の場合は給与所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告をする必要はありません。しかし、あえて確定申告することで還付金を受け取れる可能性もあります。それは、課税所得金額が694万円以下の場合です。
本来、所得税率は一律ではなく、所得が多くなるほど所得税率が高くなる「超過累進課税」が採用されています。具体的な所得ごとの税率は次のとおりです。
1,000円 から 1,949,000円 | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
この表からわかる通り、課税所得金額が694万円以下の場合は、本来適用されるはずの所得税率よりも高い税率で源泉徴収されることになるのです。つまり、給与所得以外の所得が不動産クラウドファンディングの分配金とあわせて20万円以下であっても、あえて確定申告することで過払い分が戻ってくるかもしれません。
例えば、不動産クラウドファンディングの分配金として雑所得が18万円、これと給与所得とあわせた課税所得金額が320万円だった方のケースを見てみましょう。
課税所得金額が320万円の場合の所得税率は、10%です。この場合において不動産クラウドファンディングの分配金にかかる税金は、18,000円(18万円×10%)となります。一方で、一律20.42%の税率で源泉徴収される税金は、36,756円(18万円×20.42%)です。つまり、これらを差し引きした18,756円(36,756円−18,000円)が払い過ぎている税金として還付されます。
給与所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告は不要ですが、確定申告をしてはいけないわけではありません。手間はかかりますが、確定申告することで還付金を受け取れる可能性があるのです。
不動産クラウドファンディングにおける確定申告の手順
不動産クラウドファンディングで得た収益は、確定申告を通じて適切に申告する必要があります。以下に、確定申告の手順について詳しく説明します。1.収益の把握
まずは不動産クラウドファンディングで得た収益を把握するところから始めます。配当による収益は、各サービスのマイページなどで明細を確認しておきましょう。複数のサービスで収益がある場合は、エクセルやスプレッドシートなどで情報をまとめておくと便利です。2.必要書類の準備
次に確定申告に必要な書類を準備します。準備する書類には以下のようなものがあります。支払調書
不動産クラウドファンディング事業者が投資家に配当を支払う際は、源泉徴収によって事前に税務署へ所定の所得税(20.42%)を収めることになっています。そして、確定申告をする際には、その納税を証明するための「支払調書」が必要になります。年間取引報告書
不動産クラウドファンディング以外に株式などで収入を得た場合は、証券会社から提供される「年間取引報告書」も必要になります。これは1年間の株式等の損益を記録したもので、申告内容の記入に使用します。源泉徴収票
会社等からの給与所得がある場合は、年間の給与所得と源泉徴収税額が記載された「源泉徴収票」が必要になります。所得控除に必要な各書類
医療費控除を受ける場合には医療費控除の明細書が、住宅ローン控除を受ける場合には、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書が、保険料控除を受ける場合には保険料控除証明書が、ふるさと納税で寄付金控除を受ける場合には寄付金受領証明書が必要です。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金も所得控除が可能です。その申請には小規模企業共済等掛金払込証明書が必要になります。
その他の書類
フリーランスや個人事業主の場合には経費申請をするための各領収書が必要になります。3.確定申告書の作成
確定申告書に給与収入や事業収入などと併せて不動産クラウドファンディングの収入も記入します。不動産クラウドファンディングで得た収益は雑所得の欄に記入しましょう。なお、確定申告書は手書きでも作成できますが、国税庁のWebサイト内「確定申告作成コーナー」でも行えます。4.電子申告または税務署への提出
完成した確定申告書は紙で印刷して税務署に郵送または持参するか、あるいはオンラインで作成した場合はe-Taxを利用して電子申告することもできます。不動産クラウドファンディングの税金・確定申告に関する注意点
不動産クラウドファンディングの確定申告を行う際は、注意点として以下2点が挙げられます。
- NISAやiDeCoのような税制上の優遇はない
- 雑所得内での損益通算は可能
まず、不動産クラウドファンディングにおいては、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCoのような税制上の優遇制度は活用できないため注意しましょう。NISAやiDeCoは運用益などが非課税となるため現在大きな注目を集めていますが、これらの制度の対象となる金融商品は投資信託などが主です。NISAやiDeCoを活用して不動産投資をしたい場合、不動産投資信託(REIT)であれば可能ですが、不動産クラウドファンディングは対象外となります。
また、不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得に分類されるため、損益通算が可能です。損益通算とは一定期間内の利益と損失を相殺することで、納額を軽減できる仕組みです。
例えば、不動産クラウドファンディングで損失が出たとしても、確定申告することで他の雑所得の利益と相殺できます。相殺することで合計所得額が減るため、納税額も抑えられるわけです。利益が出た時だけでなく、損失が出た場合でも忘れずに確定申告をしておくことをおすすめします。
不動産クラウドファンディングは確定申告するほうがメリットが多い
不動産クラウドファンディングの確定申告は、給与所得以外の所得が20万円以下であれば行う必要はありません。しかし、雑所得に分類される所得が他にもある場合などは、損益通算の観点から確定申告しておくほうが税金面でメリットがあるといえます。
また、課税所得金額が694万円以下であれば、払い過ぎた税金を還付してもらうためにも確定申告をするほうが良いでしょう。
確定申告が必要かどうかは、各々の所得や損益の状況に応じて異なります。確定申告しなければいけないにも関わらずしなかった場合は、ペナルティとして税金が加算されてしまうため、税金についてもしっかりと理解しておきましょう。
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