日本の不動産市場をめぐって、気になる動きが出ています。
2026年9月5日、日本経済新聞は、金融庁が金融機関による不動産業向け融資の信用リスク管理を重点的に確認する方針だと報じました。
報道によると、大都市圏を中心に住宅などの不動産価格が高騰する一方、地方銀行などでは不動産業向け融資が増加しています。
金融庁は、価格高騰や金利上昇によって売買が低迷し、不動産市況が悪化するリスクもあるとして、金融機関の融資管理を点検する方向です。
また、日本銀行もすでに2026年度の考査で不動産融資を重点的に点検する方針を正式に示しています。
金融庁と日銀の双方が不動産融資に目を向ける現在、金利上昇によって日本の不動産投資や不動産価格はどう変わるのでしょうか。
過去の日本、2022年以降に急激な金利上昇を経験した欧州、さらにIMFや世界的な投資家・運用会社の見方から考えていきます。
結論|日本の不動産は「一斉暴落」より先に「売れにくくなる」可能性
先に本記事の結論です。
現時点では、1990年代初頭のように日本全国の不動産価格が一斉に大幅下落することを基本シナリオにする根拠は乏しいと考えます。
むしろ注意したいのは、金利上昇によって買い手が求める利回りが上がり、現在の高い価格では買いにくくなることです。
それでも売り手がすぐに値下げしなければ、価格が下落する前に売買件数が減り、在庫や売却期間が増える可能性があります。
つまり、「価格が暴落する前に、まず売れなくなる」という動きです。
首都圏中古マンションの成約件数や在庫に変化が(不安要因)
2022年以降の欧州の商業用不動産市場でも、実際にこれに近い現象が起きました。
そして2026年の日本では、価格そのものは依然として高い一方、首都圏中古マンションの成約件数や在庫には変化が出始めています。
2026年以降の不動産市場を見る際は、不動産価格だけでなく「流動性」を見ることが非常に重要になると考えています。
金融庁が不動産業向け融資を点検する理由
日本経済新聞の報道によると、金融庁は2026事務年度の金融行政方針の原案で、不動産業向け貸し出しなどについて信用リスクが適切に管理されているかを点検する方針です。
背景には、不動産価格と融資の双方が増えていることがあります。
- 大都市圏を中心とした住宅などの価格高騰
- 地方銀行などによる不動産業向け融資の増加
- 金利上昇による不動産売買の低迷
- 融資先企業の経営悪化
- 不動産市況悪化が金融機関へ波及するリスク
重要なのは、これは不動産価格を下げるための政策ではないということです。
銀行が不動産会社へ融資するときに、担保価格や返済能力、市況悪化時の損失などを適切に把握しているかを金融当局が確認するという話です。
参考:日本経済新聞「海外ファンド・不動産業向け融資のリスク管理を強化、金融庁が方針」
日銀も不動産融資を重点的に点検
金融庁だけではありません。
日本銀行は2026年3月に公表した資料で、不動産業向け貸出や住宅ローンについて、金融機関の審査・管理体制を確認する方針を示しています。
不動産売買業では物件評価額や販売期間、不動産市況のモニタリングなどを確認し、不動産賃貸業では賃料、空室率、経費、LTV、DSCRなどを点検するとしています。
さらに、金利上昇や不動産価格下落といったストレスが発生した場合を想定した管理体制も確認する方針です。
不動産業向け融資は約115兆円
日銀によると、不動産業向け融資残高は2025年12月時点で約115兆円となりました。
前年同月比では7.8%増です。
2023年3月以降、5%を超える高い伸びが続いています。
もちろん、融資残高が増えたからといって不動産バブルと断定することはできません。
しかし、「不動産価格が上昇している局面で、不動産業向け融資も速いペースで増えている」という状況であることは押さえておく必要があります。
日銀の政策金利は1.0%、日本はすでに「金利のある世界」へ
不動産投資に大きく関係する変化の一つが金利です。
日銀は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を引き上げ、無担保コールレート翌日物を1.0%程度としました。
2026年7月31日の金融政策決定会合でも1.0%程度を維持しています。
この会合では1.25%程度への引き上げを求める提案もありましたが、反対多数で否決されました。
日本の不動産市場にとって、これは大きな環境変化です。
長期間にわたり日本では「金利はほとんど上がらない」という前提で、不動産価格や投資利回りが形成されてきました。
その前提が変わっています。
参考:日本銀行「2026年7月31日 当面の金融政策運営について」
金利上昇で不動産価格はなぜ下がりやすくなる?
不動産投資と金利には密接な関係があります。
最も分かりやすいのは、借入コストの上昇です。
例えば不動産から年間400万円の収益が得られていても、年間の利払いが100万円から200万円へ増えれば、投資家に残る利益は減ります。
金利上昇で不動産以外の投資妙味が増す?
さらに、金利が上昇すると不動産以外の金融商品から得られる利回りも高くなります。
低金利時代には3~4%程度の不動産利回りでも投資対象として選ばれやすかったです。
しかし、他の金融商品でも一定の利回りを得られるようになると、不動産投資家は以前より高い利回りを求めやすくなります。
不動産から得られる収益が変わらないまま、投資家が求める利回りだけが上昇すれば、理論上は不動産価格に下落圧力がかかります。
それでも2026年の日本の不動産価格が高い理由
では、政策金利が1.0%まで上昇したのに、なぜ日本の不動産価格は依然として高いのでしょうか。
大きな理由の一つが賃料と需要です。
日銀は2026年4月の金融システムレポートで、大都市圏を中心に不動産価格の上昇が続く背景として、建設コスト上昇や人手不足による供給制約、堅調な物件需要などを挙げています。
賃料も上昇しています。
不動産価格には下押し圧力が?
一方、金利上昇によって不動産のイールドギャップは低下傾向にあり、日銀は引き続き不動産市況への注意が必要だとしています。
不動産のイールドギャップとは、不動産から得られる利回りと、国債利回りなどの金利との差のことです。
この差が大きいほど不動産投資の相対的な魅力は高くなりやすく、金利上昇で差が縮むと、不動産価格には下押し圧力がかかりやすくなります。
つまり現在は、金利上昇による下押し圧力と、賃料上昇・供給不足・需要による押し上げ圧力がぶつかっている状態と考えられます。
補足|なぜ「賃料上昇」が金利上昇を吸収できるのか
ここは少し分かりにくいため、簡単な例で考えてみます。
不動産価格はさまざまな要因で決まりますが、収益物件では「その物件が年間いくら稼げるのか」と「投資家が何%の利回りを求めるのか」が重要な要素になります。
例えば、年間の純収益であるNOIが400万円あり、投資家が4%の利回りを求める物件を単純化して考えると、収益からみた価格は約1億円になります。
ところが金利が上昇し、投資家が4.5%の利回りを求めるようになった場合、年間純収益が400万円のままであれば、同じ考え方では価格は約8,900万円まで低下します。
つまり、収益が変わらない状態で要求利回りだけが上がれば、不動産価格には下落圧力がかかるということです。
賃料上昇で価格を維持しやすくなる?
一方、賃料上昇によって年間純収益が400万円から450万円まで増えれば、要求利回りが4.5%へ上昇しても、単純計算上は約1億円の価格を維持できます。
これが「賃料上昇が金利上昇の影響を吸収する」という意味です。
融資を使っている場合にも似たことが起こります。
金利だけが上がって賃料が伸びなくなると危険信号?
金利上昇によって年間の利払いが増えても、それ以上に家賃収入や純収益が増えれば、投資家のキャッシュフローへの悪影響をある程度相殺できます。
逆に、金利だけが上がって賃料が伸びなくなると、借入コストは増える一方で物件収益は増えないため、不動産投資の採算は悪化します。
なお、実際の不動産価格は立地、築年数、空室率、将来の賃料見通し、金融機関の融資姿勢、投資家需要など多くの要因で決まるため、上記は仕組みを説明するために単純化した例です。
主要都市の地価はまだ上昇している
国土交通省の2026年第1四半期「地価LOOKレポート」によると、調査対象となった主要都市の高度利用地44地区はすべて地価上昇となりました。
全地区上昇は9期連続です。
ただし、この数字を「日本全国の土地が上昇している」と読むのは誤りです。
地価LOOKは東京、大阪、名古屋などを中心とする主要都市の高度利用地44地区を対象とした調査です。
少なくとも現時点では、都市部の好立地不動産が全面的な下落局面へ入ったとは言えません。
参考:国土交通省「2026年第1四半期 地価LOOKレポート」
一方、首都圏中古マンションでは成約件数が4カ月連続減少
ただし、売買市場には少し違う変化も出ています。
東日本不動産流通機構の月例マーケットウオッチによると、2026年7月の首都圏中古マンション成約件数は3,638件で、前年同月比8.6%減となりました。
成約㎡単価は84.17万円で前年同月比1.5%低下し、在庫件数は4万7,151件で前年同月比5.5%増となっています。
成約件数は4カ月連続減少、成約㎡単価は3カ月連続低下、在庫件数は5カ月連続増加しています。
「取引量減少+在庫増加」という変化が出ている
一方、平均成約価格は5,267万円で、前年同月比0.7%低下にとどまっています。
つまり現時点では、「価格暴落」ではないものの、「取引量減少+在庫増加」という変化が出ていると整理するのが妥当でしょう。
参考:東日本不動産流通機構「月例マーケットウオッチ 2026年7月」
過去の日本では金利上昇から地価下落まで時間がかかった
金利上昇後に不動産市場がどうなるかを考える際、1980年代末から1990年代初頭の日本は重要な事例です。
ただし、現在と当時を単純比較してはいけません。
当時の日銀の公定歩合は1987年2月の2.50%から、1989年5月に3.25%へ引き上げられました。
その後、1989年10月に3.75%、1989年12月に4.25%、1990年3月に5.25%、1990年8月には6.00%まで引き上げられました。
現在の政策金利1.0%とは、金利水準も引き締めのスピードも大きく異なります。
株価は先に下がり、地価は1991年から下落
後に日銀総裁となる植田和男氏は、日銀審議委員だった2000年の講演で1989年から1990年の金融引き締めについて振り返っています。
株価は1990年初めから下落し、同年9月までに約50%下落した一方、地価が下落へ転じたのは1991年でした。
不動産市場では、金利上昇の影響がすぐ価格へ現れるとは限りません。
まず取引件数が減り、その後に価格調整が表面化する場合があります。
参考:日本銀行・植田和男氏講演「Asset Price Inflation」
欧州では金利上昇後「価格より先に取引」が急減
現在の日本を考えるうえで、より近年の参考例となるのが2022年以降の欧州です。
なぜなら、欧州は日本に先行して金利が上がっていったからです。
ECBによると、2023年上期のユーロ圏商業用不動産の取引活動は前年同期比47%減少しました。
ECBは、取引が少なくなると価格形成が難しくなり、取引が再び活発になった際には金融引き締めを反映した低い価格が表面化する可能性があると指摘しています。
例えば金利上昇によって買い手が「1億円では買えないが8,000万円なら買う」と考えていても、売り手が1億円から値下げしなければ取引は成立しません。
この時点では、「1億円から8,000万円へ暴落した」という取引価格は存在しません。
単に売れなくなるだけです。
参考:ECB「Financial Stability Review November 2023」
ドイツでは住宅価格がピークから約13%下落
その後、実際に価格調整が明確になった例がドイツです。
ドイツ連邦銀行によると、住宅価格は2022年半ばのピークから2024年第1四半期までに約13%下落しました。
生活費の上昇に加え、資金調達コストが大きく上昇したことで住宅購入需要が弱くなったことが背景です。
資金調達コストの低下などによって住宅価格は安定化へ
その後は資金調達コストの低下、所得増加、新築住宅供給の弱さなどによって住宅価格は安定化へ向かいました。
これは「金利が上昇すれば必ず13%下落する」という意味ではありません。
金利上昇によって価格調整が起きても、その後の金利、所得、住宅供給などによって市場環境は再び変化するという事例です。
参考:ドイツ連邦銀行「Financial Stability Review 2024」
カナダでは2022年のピークから住宅価格が約20%下落
カナダでも大きな調整が起こりました。
カナダ銀行の2026年金融安定報告によると、代表的な住宅価格は2022年のピークから約20%低下しています。
特にオンタリオ州やブリティッシュコロンビア州では、売り出し物件が販売件数を上回る傾向が強まっています。
トロントやバンクーバーのコンドミニアムでは、価格下落によって必要な融資を確保できず、完成前に契約した物件を引き渡し時に購入できないケースも確認されています。
日本と住宅ローン制度などが異なるため、同じ20%下落を日本へ当てはめることはできません。
ただし、金利上昇によって購入可能額が下がり、需要減少、在庫増加、価格調整へ進む経路は参考になります。
参考:Bank of Canada「Financial Stability Report 2026」
IMFは日本の不動産に「脆弱性のある部分」を指摘
IMFも2026年の対日4条協議で、日本の不動産市場について注意点を挙げています。
IMFによると、日本では商業用不動産融資が増加し、主要都市のキャップレートが歴史的な低水準に近づいています。
高い評価額は、金利上昇や投資家心理の変化に対して不動産市場を以前より敏感にする可能性があります。
同資料では商業用不動産関連のLTVについて約75%との数字も示しています。
IMFによる指摘の真意と用語解説
キャップレート(期待利回り)の歴史的低下
キャップレートとは「物件の純収益 ÷ 物件価格」で算出される投資利回りのことです。
この数値が歴史的低水準に近づいているということは、現在の収益に対して物件価格が極めて高く(割高に)評価されている状態を意味します。
LTV(借入金比率)約75%のリスク
LTVとは、物件の資産価値に対する借入金(ローン)の割合です。
LTVが約75%(例:1億円の物件に対し7,500万円の借入)は、高いレバレッジ水準にあります。
そのため、仮に物件価格が25%下落すれば売却額より借金が上回る「債務超過(オーバーローン)」に陥り、身動きが取れなくなるリスクを示しています。
参考:IMF「Japan: 2026 Article IV Consultation」
ハワード・マークスが指摘する「イージーマネー」の終わり
世界的投資家のハワード・マークス氏の考え方も参考になります。
オークツリー・キャピタル共同創業者のマークス氏は、2024年のメモ「Easy Money」で、1980年から2021年にかけて長期的な金利低下がさまざまな資産価格を支えてきたと論じています。
低金利になると投資家が要求する利回りも低下し、株式、不動産、プライベートエクイティなどの資産価格を押し上げやすくなります。
しかし2022年以降、その環境は変化しました。
上がり続ける相場はいったん終了?
マークス氏は、過去数十年間に見られたような非常に緩和的な投資環境へ短期間で戻る可能性は低いとの見方を示しています。
これは日本の不動産価格についての予測ではありません。
ただし、低金利によって高くなった資産価格が、金利正常化後も同じ評価水準を当然に維持できるわけではないという考え方は、日本の不動産市場を考えるうえでも参考になります。
参考:Howard Marks / Oaktree「Easy Money」
一方、ブラックストーンは不動産市場の回復を予想
弱気な見方だけを見るのも適切ではありません。
世界最大級のオルタナティブ資産運用会社ブラックストーンのジョン・グレイ社長兼COOは2026年2月、不動産市場について回復が進むとの見方を示しています。
もちろん、これは主に世界の不動産市場についての見解であり、「日本の不動産価格が上昇する」という予測ではありません。
それでも、大手投資会社が「金利が上がったから不動産は全面的に売り」と判断しているわけではない点は押さえておくべきでしょう。
参考:Blackstone「投資環境の正常化と不動産市場の回復」
モルガン・スタンレーは「二極化」を重視
モルガン・スタンレー・リアル・エステート・インベスティングの2026年半ばの見通しも興味深い内容です。
同社は、日本を含む一部地域では経済成長が不動産需要を支えている一方、インフレによって金利が構造的に高くなり、資本コストが上昇していると分析しています。
同時に指摘しているのが、物件やセクターによるパフォーマンス格差の拡大です。
供給制約があり長期的な需要が存在する資産と、そうでない資産では差が広がるとの考えです。
これは今後の日本を考えるうえでも重要でしょう。
参考:Morgan Stanley「2026 Midyear Real Estate Outlook」
2026年以降の日本の不動産価格はどうなる?3つのシナリオ
ここからは、ここまで紹介した一次資料や海外事例を踏まえた本記事独自の予想です。
将来の不動産価格を断定するものではありません。
①基本シナリオ:価格は高止まりしながら二極化
現時点で現実的だと考えるのがこのケースです。
政策金利は上昇しているものの、都市部には賃料上昇、建築費上昇、人手不足、新規供給の制約、国内外からの投資需要などがあります。
これらが金利上昇による価格の下押し圧力を一定程度吸収します。
そのため全国一斉に不動産価格が下落するのではなく、賃料を伸ばせる好立地物件は高値を維持し、収益力の弱い物件から売れにくくなるという二極化が進む可能性があります。
②弱気シナリオ:まず取引が減り、その後価格が下落
注意したいのはこちらです。
今後さらに金利が上昇すると同時に景気が減速した場合です。
金利上昇、賃料上昇の鈍化、銀行融資の慎重化が同時に起きれば、投資家が購入できる価格は下がります。
日本でも流動性低下から価格調整へ?
それでも売り手がすぐに値下げしなければ、最初に減るのは成約件数です。
結果、在庫が増え、売却期間が長くなります。
その後、借り換えや資金繰りなどの事情によって売却を急ぐ所有者が増えると、低い価格での取引が増え始める可能性があります。
欧州で見られた「流動性低下から価格調整へ」という動きに近いシナリオです。
③強気シナリオ:賃料上昇が金利上昇を吸収
反対に、金利がさらに上昇しても、賃金や景気、賃料が伸び、都市部への需要が維持され、新規供給が限られる環境が続けば、不動産価格が高値を維持する可能性があります。
特に希少性の高い都心物件では、金利上昇以上に賃料や需要が伸びれば、価格調整が限定的になることも考えられます。
予想|日本で一番警戒すべきは「賃料上昇が金利上昇を吸収できなくなる時」
筆者が注目しているのは、政策金利が1.25%になるか1.5%になるかという数字だけではありません。
それ以上に重要なのが、賃料上昇が続くかどうかです。
現在の日本では、金利上昇という不動産価格への逆風を、都市部の賃料上昇や供給不足がある程度吸収しています。
先ほどの例のように、投資家が求める利回りが上昇しても、物件が生み出す賃料や純収益も増えれば、不動産価格への下押し圧力を和らげることができます。
「金利上昇」と「賃料上昇」どっちが勝る?
また、借入金利が上昇しても、それ以上に賃料収入が増えれば、オーナーの収支悪化を一定程度相殺できます。
つまり現在は、単純化すると「金利上昇によるマイナス」と「賃料上昇によるプラス」が綱引きをしている状態です。
問題は、このバランスが崩れた場合です。
景気が弱くなり、入居者や企業がこれ以上の賃料上昇を受け入れにくくなれば、賃料の伸びは鈍化します。
「金利上昇+賃料上昇の鈍化+融資姿勢の慎重化」に注意
その一方で借入金利だけが上昇を続ければ、不動産オーナーの収益は圧迫されます。
さらに銀行が融資に慎重になれば、買い手が借りられる金額まで減少します。
そのため、「金利上昇+賃料上昇の鈍化+融資姿勢の慎重化」が同時に起こる局面は特に注意が必要です。
日本の不動産市場の本当の転換点は「政策金利が何%になったか」だけではなく、賃料上昇が金利上昇を吸収できなくなる時ではないかと考えています。
不動産価格より先に見るべき5つの指標
これから不動産市場を見るのであれば、「地価が上がったか、下がったか」だけでは変化を捉えるのが遅れる可能性があります。
- 不動産の成約件数
- 在庫件数
- 売却までの期間
- 賃料の伸び
- 銀行の融資姿勢
すでに成約件数4カ月連続減少、在庫5カ月連続増加
特に、成約件数減少+在庫増加+賃料上昇鈍化+銀行融資慎重化が同時に進み始めた場合は、不動産市場の局面が変わった可能性があります。
2026年7月の首都圏中古マンションでは、すでに成約件数4カ月連続減少、在庫5カ月連続増加という動きが出ています。
ただし、数カ月の数字だけで長期的な下落トレンドが確定したと判断するのも早計です。
今後のデータを継続的に確認する必要があります。
不動産投資は2026年にやめたほうがいい?
では、2026年は不動産投資をやめたほうがよいのでしょうか。
現時点でそこまで断定する根拠はありません。
日銀は2026年4月時点で、国内の金融循環について「大きな不均衡はみられない」と評価しています。
主要都市の地価も上昇しています。
これまでのような超強気相場は終了?
また、ブラックストーンやモルガン・スタンレーなど世界有数の投資会社も、不動産市場全体の崩壊を基本シナリオにしているわけではありません。
しかし、これまでと同じ感覚で不動産を買える環境でもなくなっています。
低金利時代には、価格上昇による売却益を期待した投資でも成立しやすい環境がありました。
金利のある世界では、現在の賃料から本当に十分な収益が出ているのかを以前より厳しく見る必要があります。
まとめ|金利上昇で不動産は「暴落」より「選別」の時代へ
2026年、日本の不動産市場を取り巻く環境は大きく変化しています。
しかし、現在の主要都市の地価は依然として上昇しており、不動産市場がすでに全面的な下落局面に入ったとは言えません。
今後の日本では、1990年代初頭のような全国一律の不動産暴落より、「売れる不動産」と「売れない不動産」の差が広がる可能性を警戒する必要があると考えています。
免責事項
※本記事は特定の不動産への投資を推奨・勧誘するものではありません。
不動産投資には、価格下落、金利上昇、空室、賃料下落、修繕費増加、売却困難などのリスクがあります。
本記事で紹介した海外の事例や金融機関・投資家の見解は、将来の日本の不動産市場の動向を保証するものではありません。
過去のデータや海外の事例は、将来の日本の不動産市場の動向や投資成果を示唆・保証するものではありません。
主な出典
- 日本経済新聞「海外ファンド・不動産業向け融資のリスク管理を強化、金融庁が方針」
- 金融庁「金融行政方針・金融レポート」
- 日本銀行「2026年度の考査の実施方針等について」
- 日本銀行「金融システムレポート 2026年4月号」
- 日本銀行「2026年7月31日 当面の金融政策運営について」
- 国土交通省「2026年第1四半期 地価LOOKレポート」
- 東日本不動産流通機構「月例マーケットウオッチ 2026年7月」
- ECB「Financial Stability Review November 2023」
- ドイツ連邦銀行「Financial Stability Review 2024」
- Bank of Canada「Financial Stability Report 2026」
- IMF「Japan: 2026 Article IV Consultation」
- Howard Marks / Oaktree「Easy Money」
- Blackstone「投資環境の正常化と不動産市場の回復」
- Morgan Stanley「2026 Midyear Real Estate Outlook」