一口馬主(競走馬ファンド)とは?配当や費用を徹底解説

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#用語解説 #投資の仕組み・スキーム
2021年にリリースされたスマートフォン用ゲームアプリ『ウマ娘 プリティダービー』の爆発的ヒットにより、若年層をはじめ幅広い層で競馬人気が高まっています。そして、ギャンブルとしての競馬だけでなく、スポーツ(競技)としての競馬、さらには投資としての競馬にも注目が集まっています。 

今回は、投資的側面で見る競馬、中でも「一口馬主」という呼び名でも知られる「競走馬ファンド」とは?について詳しく解説していきます。

一口馬主(競走馬ファンド)とは?

競走馬ファンドは事業型ファンドの1つで、複数の投資家が出資した資金をもとに競走馬を購入・運用し、レースへの出走で得た賞金等の収入を出資分に応じて分配する仕組みのことを言います。 金融商品取引法によって規制を受ける投資商品で、「一口馬主(ひとくちうまぬし/ひとくちばぬし)」という呼び名がよく知られるほか、「クラブ馬主」「一口クラブ」といった名称で呼ばれることもあります。 

 一般的に競走馬を購入するには数千万円、ときには1億円を超える資金が必要になるため、個人で投資を行うのは簡単ではありません。競走馬ファンドを利用することで、比較的少ない資金で競走馬に投資することが可能になります。

一口馬主(競走馬ファンド)の仕組み

競走馬ファンドでは、投資家は「会員」として「クラブ」に出資を行います。

競走馬ファンドのスキームと「クラブ」「会員」について

競走馬ファンドにおける「クラブ」は、「愛馬会法人」と「クラブ法人」の2つの法人によって成り立っています。競走馬ファンドに出資をしたい投資家は、愛馬会法人の「会員」となり、匿名組合契約(※)により同法人に出資を行います。 

 愛馬会法人は投資家から集めた資金で競走馬を取得し、その馬をクラブ法人に現物出資します。クラブ法人は競走馬をJRA(日本中央競馬会)またはNAR(地方競馬全国協会)のレースに出走させ、獲得した賞金をまず愛馬会法人に分配し、そののち、愛馬会法人がさらに会員に配当金を分配する仕組みです。

競走馬ファンドのスキームと「クラブ」「会員」について
※匿名組合契約とは、出資者が営業者に出資をし、その営業で得た利益を出資者に分配する契約のことを指します。出資者の名簿が表に出ないことから「匿名組合」と呼ばれています。

一口馬主(競走馬ファンド)への投資にかかる費用

一口馬主(競走馬ファンド)への投資にかかる費用続いて、競走馬ファンドに投資する際にかかる費用について見ていきましょう。一般的に競走馬ファンドへ投資する際には大きく5つの費用がかかります。

1.クラブ入会金(1回)

出資する前に、まずクラブに入会する必要があります。通常、その際に入会金が必要になります。入会金が発生するのは入会時の1回のみで、相場は2万円前後です。

2.クラブの月会費(毎月)

基本的にどのクラブでも運営のための月会費がかかります。費用相場は1,000〜3,000円程度で、クラブによって異なります。この費用は定額で、出資する馬の頭数が多くても少なくても金額は変わりません。

3.ファンドへの出資金(1回)

実際に投資するお金です。出資は「口(くち)」単位で行います。多くの競走馬ファンドは1口5〜10万円程度で500〜1,000口程度、募集が行われます。投資額は、1口あたりの金額 × 出資口数 で決まります。

4.競走馬の維持費用(毎月)

競走馬ファンドで特徴的なのが、投資対象(馬)の維持費用が必要になる点です。株式や事業ではなく生き物、特に競技用の生き物に投資を行うため、エサ代がかかるほか、育成に関する人件費や場所代などの諸費用がかかります。具体的には以下のような費用が維持費用に含まれます。
  • 育成牧場への預託費用
  • 所属厩舎への預託費用
  • 外厩(JRA以外が管轄する厩舎)への預託費用

馬の取得費用にかかわらず毎月平均50万円程度がかかり、所有口数に応じた額を支払います。500口の競走馬だとすると、1口あたり1,000円程度の費用が毎月かかることになります。

5.保険料(年1回)

人間のアスリートと同様、競走馬にも怪我はつきものです。万が一、トレーニング中やレース中などに怪我をした場合や、怪我によって予後不良(安楽死措置の診断)となった場合などのために保険に加入する必要があります。保険料は馬の年齢によって変わってきますが、大体募集金額の2〜3%となり、年に1回かかります。

一口馬主(競走馬ファンド)の配当原資

一口馬主(競走馬ファンド)の配当原資競走馬ファンドでは、レースの賞金が配当の大きな原資となりますが、その他にも原資となるお金があります。詳しく見ていきましょう。※賞金等についてはいずれもJRAの場合

1.賞金

レースでは優勝(1着)した場合だけでなく、5着までに入賞すれば賞金を獲得できます。ただし、競走馬がレースで賞金を獲得したとしても、その全額が配当原資になるわけではありません。 

 まず賞金の20%は「進上金」という名目で、騎手・調教師・厩務員に支払われます。そこから手数料や消費税、源泉徴収税などが差し引かれ、約70%程度が取り分となって出資者に分配されます。

2.出走奨励金・特別出走手当など

5着までに入賞しなかった場合でも、6〜9着に入った場合には「出走奨励金」が交付されます。着順に応じて交付額が変わり、6着だと優勝賞金の8%、9着だと3%となっています。

また、すべての出走馬を対象とした「特別出走手当」というものもあります。これは、出走するたびに、1回につき47万円(条件によってさらに加減あり)が交付されます。さらに、条件によってもらえる「距離別出走奨励賞」や「内国産所有奨励賞」といった交付金も配当原資になります。

 参照:賞金のしくみ・馬主の方へ|JRA 

3.見舞金

賞金等のほか、万が一馬が故障などをしてしまった場合には、中央競馬馬主相互会から見舞金が支給されます。このお金も賞金と同じように配当の原資となります。

4.抹消給付金

JRAの所属馬には、競走馬が引退して登録抹消をする際に「抹消給付金」というお金が交付されます。抹消給付金は馬の年齢や出走数などによって45〜235万円の間で支払われます。

5.売却金

競走馬が好成績を残した場合、種牡馬や繁殖牝馬としての道が用意される場合があります。この際に売却した代金が配当の原資となります。

一口馬主(競走馬ファンド)のメリット・配当は?

続いて、競走馬ファンドの具体的なメリットについて紹介していきます。

メリット1.気軽に馬主気分が味わえる

個人で競走馬を購入するには非常に大きな資金が必要になりますが、競走馬ファンドであれば安ければ数千円程度から投資可能です。投資した馬が出走するレースを見るのは、一競馬ファンとしてレースを見るのとはまったく異なる体験になります。

こうした「馬主気分」が手軽に味わえるのは競走馬ファンドの最大の魅力です。またレースで優勝した馬は、騎手や馬主が手綱を持ちながら一緒に記念撮影をする「口取り式」を行いますが、競走馬ファンドで投資した会員も、“愛馬”が優勝した際には馬主として口取り式に参加できることもあります。

メリット2.驚きの配当が得られる可能性も

競走馬ファンドの最大の配当原資はレースの賞金です。好成績が収められなければ元本割れすることも珍しくない反面、馬が大活躍すれば莫大なリターンを得られることもあります。
近年の競走馬ファンド(一口馬主)対象馬の代表例として挙げられるのが、牝馬三冠を含め最高峰のレースとされるG1レースを国内外合わせて9勝したアーモンドアイです。アーモンドアイは、日本の調教馬として史上最高(当時)となる19億円以上の賞金を獲得し、1口6万円の出資に対し、配当金は約300万円にもなりました。また、2023年11月末に現役引退を発表したイクイノックスも一口馬主の歴史に名を刻んだ馬です。国際競馬統括機関連盟が発表する世界の競走馬ランキングでレーティング1位を獲得し「世界一の競走馬」となった同馬は、引退レースとなったジャパンカップでも圧勝劇を演じ、総獲得賞金は前述のアーモンドアイの記録を更新して22億円超となりました。これにより、1口8万円の出資に対し、配当金は約350万円となっています。
もちろん、こうした馬を見極めて投資するのは困難ですが、非常に夢があることはたしかです。

メリット3.各種イベントに参加できる

クラブによっては、競走馬ファンドで募集している馬の見学ツアーに参加できたり、会員限定のパーティに参加できたりすることもあります。パーティには現役の騎手や調教師が参加したりすることもあり、競馬ファンにはたまらない体験になるでしょう。

メリット4.馬の命名のチャンスがある

競馬ファンにとって、自分が命名した馬が走る姿を見るのは1つの夢と言えるかもしれません。ほとんどのクラブでは、競走馬ファンドで投資した場合、会員はその馬の名前を提案することが可能です。

一口馬主(競走馬ファンド)のデメリット・注意点

次に、競走馬ファンドを始める前に、メリットだけでなくデメリットも押さえておきましょう。

デメリット1.資金の回収は簡単ではない

投資である以上、かけた金額以上のリターンを期待したいところですが、JRAが過去に調査した結果によると、競走馬ファンド(一口馬主)の黒字割合は約13%にとどまるとのこと。つまり、9割近い人は赤字に終わっているということです。

先述の通り、強い馬を見極めることができれば驚くべきリターンを得られる可能性がありますが、それは簡単なことではありません。馬券や宝くじを買う際に「夢を買う」という表現をすることがありますが、競走馬ファンドにおいても同様でしょう。

そのため、「損をするのが当たり前」くらいの気持ちで、“馬主体験”自体に価値を見いだせる人に向いている投資と言えます。

デメリット2.維持費がかかる投資である

一般的な投資信託やその他投資ファンドは、税金等はあるものの基本的には最初にお金を出資すれば、継続的な費用が発生することはありません。一方、競走馬ファンドは、馬が現役であり続ける限り、さまざまな費用が継続的にかかってきます。

また、クラブに対しても会費がかかり、何かとお金が必要になる投資である点に留意しておかなければなりません。

デメリット3.一度も出走せずに引退する可能性も

競走馬には、常に怪我や病気のリスクがつきまといます。完治できるものであればよいですが、中には元通り走ることができないような怪我を負うこともあります。そういった場合には、一度も出走することなく引退となってしまうこともあります。

身体の丈夫な馬を見極めることも馬主に必要な資質ですが、当然ながら運もあります。そのことを十分に理解しておく必要があります。

一口馬主(競走馬ファンド)は夢を買う投資

一口馬主(競走馬ファンド)は夢を買う投資一口馬主(競走馬ファンド)の仕組みや費用・配当について解説しました。

 競走馬ファンドは非常にハイリスク・ハイリターンの投資です。収益を上げるための投資対象としては、客観的に見て「オススメしにくい投資商品」と言わざるを得ません。

一方で、「体験」という観点から考えれば、特に競馬ファンにとっては、これほど魅力的な投資対象はないでしょう。投資ではありますが、「夢を買う」「体験を買う」という気持ちで、収益は度外視して楽しむのが適切なスタンスと言えるかもしれません。

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  • 記事を書いた人 ゴクラクJOURNAL編集部

    『ゴクラクJOURNAL』は、不動産クラウドファンディングやソーシャルレンディング、事業型ファンドといった少額投資ファンドに関する情報や、投資・お金、その他ファイナンシャルテクノロジーに関する情報を提供しています。編集部では、投資初心者の目線に立ったユーザーファーストのメディア運営を目指しています。

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