都内に20戸以上のマンションを保有。不動産投資家・依田泰典氏インタビュー

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こんにちは。投資家・ブロガーの中田健介です。

今回は、不動産をメインに投資しつつ、ソーシャルレンディング不動産クラウドファンディングなどにも投資されている、不動産投資家の依田泰典(よだ・やすのり)氏にインタビューさせていただきました。(インタビュー実施日:2024年1月6日)

依田 泰典(よだ・やすのり)
不動産投資家
公認不動産コンサルティングマスター。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。ソニーにて、ITソリューション関連の法人営業や企画・マーケティング業務に従事(MVP受賞)。ソニー在籍中、株式投資等幅広く金融商品を運用するほか、東京23区の分譲マンションをメインに不動産投資を実践。ソニー退職後、不動産会社にて、収益用不動産の仕入・販売、事業開発(不動産ファンド)、経営企画・広報業務に従事。独立後は、東証プライム市場上場グループ企業等の社外取締役、顧問、アドバイザーとして活動。その後、仲間とIT関連のスタートアップを創業。宅地建物取引士(宅建マイスター)、貸金業務取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、ビル経営管理士、競売不動産取扱主任者、社会保険労務士、行政書士、情報処理技術者等の資格を保有。

不動産投資との出会い

ーー投資を始めたのはいつですか?

投資を始めたのは大学生の頃です。初めは、内定して入社予定だったソニーの株式を買いました。投資を始めたばかりの頃は、投資する意義などはあまり深く考えておらず、お金を増やすのが単純に面白そうだと思ったのがきっかけです。8カ月くらい保有した結果80万円くらいの利益が出て、とても嬉しかったのを覚えています。その後、投資の勉強を本格的に始めました。

ーー現在の資産のポートフォリオについて教えてください。

国内株式や不動産のほか世界各国の株式などに投資をしています。不動産に関しては、投資用区分マンションや分譲マンションを20件以上保有しています。金融機関の融資を利用していて、融資期間は大体20~30年程度です。

ーーどのようにしてそれだけの資産を築いたのですか?

最初は株式投資で資産を増やしました。株式では大きく利益を出したこともありましたが、損もしました。投資をしたある銘柄(当時の東証一部上場企業)では、2週間で大きな損失を出してしまい、眠れない日々を過ごしたこともあります。それで株式投資には必勝法はなく、たまたま儲かったとしても再現性がないと考えるようになりました。そこで2008年から安定して収益が得られる不動産投資にシフトしました。

当時はサブプライムローン問題、リーマンショックで物件価格が下がっていて、立地等が魅力的な物件も売れ残っていたので比較的リーズナブルに獲得できた物件もあります。不動産会社からは短期間で転売しないようにと釘をさされましたね(笑)。不動産投資は、自己資金を使わずレバレッジを利かせた運用ができるかが肝要です。つまり、いかに金融機関からの融資を得るかが重要なんです。そこで、自分なりに書籍やインターネットで情報を集めたり経験者から話を聞くなど、融資の勉強をして金融機関と交渉しました。当時は日本銀行がマイナス金利政策を打ち出していた時期でした。

私は平日に有給休暇をうまく活用するなどして金融機関への訪問を粘り強く繰り返しました。融資担当者の方が、初心者の私にも丁寧に対応をしてくれたのを覚えています。以前までは、金融機関ではATMで預金を下ろすことしかしていませんでしたが、このとき初めて大きな目標・目的のために金融機関からお金を借りるという経験をすることができました。

不動産投資を成功させるためのポイント

不動産投資成功の鍵ーー銀行からの融資を受ける上でのポイントはありますか?

本気で物件数を増やしたかったこともあり、融資判断に必要な物件情報を見やすくまとめてみたり、堅実な収支シミュレーション等を作成することで融資を獲得することができたのかなと思います。面白いもので、「不動産が好きです」と熱っぽく語ると融資担当者の心に響き、融資課長や支店長を紹介してくれたりしました。そして、複数の金融機関と話をする機会を得ることで、だんだん融資情報に詳しくなっていきました。後で振り返ってみると、不動産会社の担当者に気に入ってもらえたことも重要でした。

不動産に関しては、「何時間見ていても飽きない」のですが、担当者と飲みに行って、楽しく意見交換をし、意気投合することで、新たな物件情報を優先的に教えてもらったこともあります。融資を獲得することも大事ですが、肝心の物件がなければ何も始まりません。ちなみに購入した不動産は基本的に売却せず、持ち続けるスタンスです。

ーーどのように不動産投資の勉強をされたのですか?

最初は不動産会社が主催するセミナーに参加をしたり、営業担当者や賃貸・建物管理担当者から実務面での話を聞いたり、書籍を読んだりして勉強しました。今はYouTubeなどもありますが、YouTubeから得られる情報はポジショントークも多く、中には誤った情報もあります。それに踊らされないために情報を見極める目が必要だと感じます。

ーー不動産投資のスタイルはどのようなものですか?

私は主に新築マンションの区分所有がメインで、長期保有するために鉄骨・鉄筋コンクリートの物件に投資しています。投資対象は基本的に東京23区の山手線沿線かターミナル駅に一本で行ける駅です。誰もが知っている駅でなくとも、賃貸需要が高いエリア、乗降客数の多い駅がよいと思います。最寄り駅から徒歩10分以内の物件が対象です。

エリアにもよりますが、新築だと属性の悪い人が入居することは少なく、幸いにもこれまで入居者との間で家賃滞納などのトラブルになったことはありません。中古物件はいろいろと不具合が出てきますが、新築にはそうした問題は少ないので、手間をかけたくない私には合っていました。もちろん、現在の不動産市場では家賃も価格も相場が上がっていますので、いかに適正な価格で購入するかは注意が必要です。

ーー区分所有をメインにされているのはなぜですか?

一棟物件はなかなか難しいところがあります。高い利回りを謳っている物件もありますが、「満室想定利回り」であり、実現不可能な「妄想利回り」の物件も多いのが現実です。一般の投資家に回ってくる話では、そうした高い利回りを謳っている物件ほど危険です。上流で物件情報を獲得し、フットワークの軽い管理会社に管理をしてもらわなければ、一棟では儲かりません。著名な不動産投資家で非常に高い利回りの物件を獲得したという人もいますが、購入した時期がよかったケースであることも多く、再現性には乏しい場合が多いでしょう。

私はソニーを退職した後、一棟物件を扱う不動産会社に勤務したのですが、実務経験をとおして確信にいたりました。会社で一棟物件について勉強したり売買したりしましたが、自分では投資する気になりませんでした。仮に自身で購入するとなるとかなり慎重な判断が必要になると感じました。そもそも不動産で大きく儲けるのはなかなか難しいものです。爆発的に儲けるのであれば事業をやったり、株式や先物商品に投資したほうがよいでしょう。その点、不動産は手堅く資産を形成するには適しています。

ーー入居者はどのように探しているのですか?

新築マンションだと、入居が付いた状態で始めることができますので、自身で不動産屋を通じて探してはいません。また一部は大手企業と契約し、社宅や借り上げ住宅として貸しています。今のところ入居率・稼働率とも100%で、部屋が空いてしまうこともありません。

ーー今後の不動産市場の見通しについてはどうお考えですか?

投資という視点で考えると、賃貸需要の高いエリアについては家賃が下がらないので物件価格も下がりにくいでしょう。家賃が取れないエリアは物件価格も下がっていくので、二極化が進むのではないでしょうか。そのため、投資対象のエリアを見極める必要があります。金融機関が融資の判断をする際には、家賃を物差しとした収益還元評価を通常使います。最近は家賃も上がっています。特に新築は家賃を上げざるを得ないので、相場全体を押し上げています。

東京23区内ではコロナ禍中でも家賃相場が上がっていました。ただし、金利の動向については注意する必要があります。日本銀行の政策や金融機関の貸し出し動向についても注意深く見て行くとよいでしょう。不動産投資は融資が利用できるのがメリットの一つです。融資も活用しつつ、手元現金(自己資金)を上手に使うことでレバレッジを利かせた資産形成が可能となります。

ーー今後も不動産投資を拡大される予定ですか?

もともとは不動産投資を拡大する予定でしたが、現在はどちらかというと社会課題を解決するスタートアップ・ベンチャー企業への投資・支援に注力しています。株式投資型クラウドファンディングの「FUNDINNO(ファンディーノ)」というサービスがあるのですが、経営陣のビジョンに共感して「FUNDINNO」内で紹介された、いくつかのベンチャー企業に出資しています。

「FUNDINNO」が秀逸なのは、自分ではなかなか探すことができないベンチャー企業への投資ができることです。考え抜かれたビジネスモデル、優良案件も多く、独り占めしたいくらいのサービスです(笑)。そろそろIPOを果たす会社が出てくるかもしれません。

不動産投資と並行してソーシャルレンディングに投資

ーー依田さんはソーシャルレンディング投資もされているそうですが、始めたのはいつですか?

2017年に「OwnersBook(オーナーズブック)」で始めました。他には投資しているサービスはありません。

ーー不動産投資をメインにされている依田さんがソーシャルレンディングを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

当時「OwnersBook」の経営陣と話をして、先進的なサービスで非常に堅く不動産を見ていることがわかったので、投資を決めました。現在では、ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングにトータルで1,000万円くらい投資しています。

ーーソーシャルレンディングサービスを選ぶ上でどんなところに気を付けていますか?

意外に思われるかもしれませんが、利回りの低さです。利回りは3~6%程度でよいと考えています。個人的には、10%を超えるような高さの利回りは相応のリスクを伴うと思います。中には新興国の事業などに投資するようなファンドもありますが、投資する際には、利回りの高さだけではなく、事業内容や継続性を慎重に見極める必要があるでしょう。

経営陣の経歴や人柄・キャラクター、企業理念、メッセージなどに着目するのはよいと思います。何のためにクラウドファンディングをしているのかは、何に投資しようとしているかを見ればわかります。個々の物件については、投資する金額にもよりますが、実際に現地を訪れて自身の目で確認することも大事でしょう。また、サービスによりシステムの使い勝手が異なるので、自分に合うところを探せるとよいでしょう。

ーーソーシャルレンディング投資のデメリットや懸念点はどんなところですか?

不祥事を起こして業務改善命令を出された事業者のようにならないように見極める必要があります。また、あまり一つのサービスに資金を集中しすぎないよう、分散投資をしてみるのも有効です。

不動産クラウドファンディング投資の魅力

ーー現在投資している不動産クラウドファンディングサービスはどこですか?

COZUCHI(コヅチ)」と「CREAL(クリアル)」です。

ーー不動産クラウドファンディング投資の魅力はどんなところにあると思いますか?

なかなか自分では取り扱えない不動産に投資できることです。例えば、「CREAL」では保育園や物流施設に投資しました。通常個人では投資できないような、商業施設や再開発案件等にも投資できるのは魅力です。自分で投資物件を探すのは大変ですが、不動産クラウドファンディングであれば容易に投資対象を選定できます。

不動産クラウドファンディングは人々の投資意欲を高め、裾野を広げたと思います。金融機関の窓口に行かなくてもネット経由で投資できるようになりましたし、不動産会社で実際に実務経験を積まないと見極められないような案件でも、詳しい解説付きで判断しやすく、少額から気軽に投資できるというのは本当にすごいことだと思います。不動産クラウドファンディング事業者が集う業界団体も複数設立されていますし、しばらくこの勢いは続くと見ています。

ーー不動産クラウドファンディング投資のデメリットや懸念点はどんなところですか?

結局どう事業者を見極めるかが重要です。現状では事業者があまり儲かっているとは思えません。案件組成や募集の手間がかかるし、システム構築にも費用がかかっているでしょう。投資家リストを収集することに終始し、自社の現物不動産を販売することがメインの目的の事業者も存在します。

不動産クラウドファンディングは今、雨後のタケノコのように出てきています。中には、地方の一棟物件に投資し、優先劣後出資で事業者があまりリスクを負っていない案件もあるようです。想定の利回りを達成できるのか微妙な事業者もあります。今後問題のある事業者も出てくるのではないかと危惧しています。

ーーこれから不動産クラウドファンディング投資を始める投資家におすすめのサービスはどこですか?

「CREAL」がよいと思います。運営会社が東証グロース市場に上場していますし、SBI証券とも資本業務提携をしていて強固な財務基盤が特徴です。新規案件の発掘力、ファンド組成力も高いと感じています。「COZUCHI」も面白いのですが、サービス画面がやや見づらいのと、ファンドに投資する都度資金を振り込む必要があるのがネックです。

ーー過去にソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディング投資で損失を被ったことはありますか?

「OwnersBook」で現在1件返済遅延になっている案件がありますが、それ以外は予定どおり元本が償還されています。

社会貢献につながる投資を

ーー早期リタイアをされる予定はありますか?

早期リタイアは今のところまったく考えていません。現在のように、日々目まぐるしく変化している時代に、多少の資産ができたからといってリタイアなんかしていたら、あっという間に時代に取り残されてしまうと思っています。今後も少しずつ勉強をして、知識や経験を増やして、楽しみながら資産形成ができればと考えています。

不動産など実物資産への投資のほか、クラウドファンディング投資などをとおして利益が出たら、今度は20~30代の若い起業家への出資(再投資)をすることで、少しでも社会に貢献をすることができればと考えています。

ーーソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディング投資を始める投資家にアドバイスをお願いします。

投資はとても楽しいです。ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングは、多くの場合、専門性の高い事業者が運営していますので、投資初心者でも取り組みやすいと考えています。勉強しながら少額ずつ、さまざまなところに投資するのがよいでしょう。

投資は、ワクワクしながらやるものだと思っています。ハラハラドキドキしながらやるものではありません。投資家として利益を獲得することができたあとは、そのお金を必要としているところを探して再投資し、少しでも社会貢献できるのが理想ですね。金額の多寡は関係なく、数万円など少額からでよいと思います。

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  • 記事を書いた人 中田健介

    IT系企業に勤務する傍ら、2010年からソーシャルレンディングでの資産運用を開始。同時にブログ「けにごろうのはじめてのソーシャルレンディング日記」を開設。 著書に「年利7%! 今こそ『金利』で資産を殖やしなさい!~日本初! 融資型クラウドファンディング投資の解説書」(ぱる出版)がある。

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