GK-TKスキームとは?特徴やメリットなどを詳しく解説
公開日 2024/08/01
最終更新日 2024/10/10
そこでこの記事では、GK-TKスキームとは何か、また概要や仕組み、メリット、活用事例などについて詳しく解説していきます。
GK-TKスキームとは
GK-TKスキームは、非上場ファンド(私募ファンド)でよく利用される投資スキームの1つで、合同会社(GK)と匿名組合(TK)を組み合わせた事業投資モデルです。このスキームは、特に不動産投資や特定の事業に資金を提供する場面でよく利用され、投資家と事業運営者の双方にとってメリットが多いのが特徴です。投資家は匿名組合契約を通じて資金を提供しますが、事業の運営には直接関与せず、利益配分を受ける形となります。事業運営者は合同会社を通じて事業を管理しつつ、外部からの出資を受けることができます。
スキームの特徴
GK-TKスキームでは、SPC(特別目的会社)として設立した合同会社(GK)が事業を運営し、不動産等の資産を信託受益権の形式で保有させます。信託受益権とは、信託契約の受益者が信託財産から発生する利益を受ける権利のことを指します。合同会社は、一般社団法人などが出資して設立した後、銀行からの融資や匿名組合からの出資などで資金を調達し、信託受益権を取得して運用します。投資家は、匿名組合(TK)をとおして資金を提供します。
TK出資者(=投資家)は、匿名組合契約に基づき、事業運営には関与せず、あくまで出資者として利益を受け取るだけの立場です。これにより、投資家はリスクを限定しながらも、事業の成長や成功によるリターンを享受することができます。
一方、GKは合同会社として事業の運営を担い、意思決定権を保持します。これにより、外部からの投資を受けつつも、経営の自由度を維持することが可能です。この組み合わせにより、資金調達と経営の独立性を両立できるスキームが実現しています。
スキームが活用される背景
GK-TKスキームは、特に不動産投資やエネルギー事業、スタートアップの資金調達などで利用されます。日本の税制や法規制に適応したスキームとして、効率的な資金調達方法として広く認知されています。また、匿名組合を用いることで、投資家が表に出ることなく出資できるという利点があり、プライバシーを保ちながら資産を運用したい投資家にも魅力的です。
GK(合同会社)とは
GK(合同会社)は、2006年の会社法改正で導入された会社形態です。アメリカで人気のLLC(Limited Liability Company)をモデルとしています。非上場の私募ファンドでは資金調達を目的に作られる「SPC(Special Purpose Company/特別目的会社)」が必要になりますが、GK-TKスキームにおいて、SPCの役割を果たすのが合同会社です。合同会社は設立にまつわる費用や時間を抑えられるのが特徴です。さらに決算公告の義務がないなど、設立や維持が比較的容易なことから、SPCとしてよく用いられます。
TK(匿名組合)とは
TK(匿名組合)とは、当事者の一方が営業者に対して出資を行い、その営業によって生み出された利益を出資者に分配する契約のことを指します。権利や義務の主体として営業者は表に出ますが、出資者は表に出ないため「匿名組合」と呼ばれます。匿名組合(匿名組合契約)のメリットは、以下のとおりです。- 有限責任である
- 匿名で出資できる
- 分配金を受け取れる
GK-TKスキームにおけるSPCと信託受益権の活用について
GK-TKスキームでは、資金調達と事業運営の柔軟性を両立させるために、特別目的会社(SPC)として設立された合同会社(GK)が重要な役割を果たします。この合同会社は、一般社団法人やその他の法人が出資して設立され、その後、銀行融資や匿名組合(TK)からの出資を受けることで事業資金を調達します。合同会社が設立された後、事業の資産、特に不動産などは信託受益権という形式で保有されることが一般的です。
信託受益権とは?
信託受益権とは、信託契約に基づいて、信託財産から発生する利益を受け取る権利を指します。例えば、不動産を信託財産とする場合、その不動産の賃貸収入や売却益といった利益を、信託受益者が受け取ることができます。この形式を採用することで、資産の所有権や管理権を効率的に分離しながら、収益を特定の受益者に分配できる仕組みが整います。GK-TKスキームでは、信託受益権を活用することで、事業運営者である合同会社(GK)が物理的な資産の所有権を直接保有せず、信託を通じて資産を管理します。
これにより、資産管理の透明性が向上し、投資家にとってもより安心して投資できる環境が整います。
SPC(特別目的会社)の設立と資金調達
合同会社(GK)は、一般社団法人などの法人が出資して設立されることが多く、SPC(特別目的会社)として機能します。SPCは、特定の事業やプロジェクトを目的として設立されるため、事業リスクを他の資産や事業と分離できるというメリットがあります。このため、特定の不動産プロジェクトやエネルギー事業など、一定期間に限られた事業に最適です。資金調達においては、GKは通常以下の2つの方法で資金を集めます。
- 銀行からの融資: 大規模なプロジェクトに必要な資金を銀行から調達し、信託受益権の取得や運用に充てます。
- 匿名組合からの出資: 投資家は匿名組合(TK)を通じて出資を行い、事業の成功に伴う利益を享受します。
GK-TKスキームのメリット
匿名組合は法人格を有していないため法人税を支払う義務がなく、投資家により多くの利益を還元できるというメリットがあります。また、匿名組合を通して投資を行うことで投資家が匿名性を保てる点もGK-TKスキームのメリットといえます。二重課税の回避
GK-TKスキームは、二重課税の回避策として採用されています。GK-TKスキームでは、事業で生じた利益は合同会社と匿名組合の2つの組織を経て投資家に分配されます。このとき、それぞれの段階で課税されてしまうと、投資家の配当は目減りしてしまうことになります。そこで、「導管性の確保」が重要になります。導管性とは、投資で発生した収益に対し法人税を回避することで二重課税されないための仕組みを指す言葉です。
二重課税回避の仕組み
GK-TKスキームで用いられる匿名組合は、そもそも「法人」ではないため、法人税の課税を受けることはありません。そしてSPCである合同会社に関しては、「法人税基本通達 第1款 組合事業による損益 14-1-3」に以下のような記述があります。法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、法人が営業者である場合における当該法人の当該事業年度の所得金額の計算に当たっては、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を損金の額又は益金の額に算入する。(昭55年直法2-15「三十三」、平17年課法2-14「十五」により改正)参照:国税庁 法人税法基本通達14-1-3(匿名組合契約に係る損益)
匿名組合の営業者に該当する合同会社は、匿名組合契約に基づき、匿名組合員である投資家に支払う配当金を損金算入できることになっています。つまり、合同会社は実質的に課税所得をゼロにすることができるため、法人税を回避することができます。これにより、最終的に課税されるのは匿名組合から投資家が受け取る配当に関してのみ、ということになり、二重課税の回避になるというわけです。
GK-TKスキームにおける「倒産隔離」とは
GK-TKスキーム(とくに不動産分野など)において、銀行などの金融機関からの借り入れは「ノンリコースローン」と呼ばれるローンが用いられるケースが多く見られます。ノンリコースローンとは、その事業や資産から生じる収益のみを原資として返済を行うローンのことをいいます。逆に言えば、当該事業がうまくいかなくても金融機関は返済請求をしない、というローンです。しかしながら、このような仕組みは金融機関にとって不利な契約になりかねません。なぜなら、法律上、合同会社は自らの意思で破産手続きを取ることが可能だからです。そのため、出資を受けた合同会社が安易に破産できないよう用いられるのが「倒産隔離」の仕組みです。
倒産隔離の仕組み
合同会社が勝手に破産できないようにするには、合同会社の出資者であり、所有者である一般社団法人がその権限を行使しない(できない)ようにしなければなりません。そこで一般社団法人に出資持分をもたせた上で、その社員として会計士など中立的な第三者を置き、破産宣告をしないよう取り決めをした上で業務を行ってもらいます。このようにすることで、想定しない破産申し立てや運営をされる可能性を低く抑えられます。
GK-TKスキームはメリットの大きい投資スキーム
GK-TKスキームの特徴や仕組みについて解説してきました。
投資家から見たGK-TKスキームのメリットとして、まず匿名組合を用いることにより匿名性を担保できる点が挙げられます。例えば、特定の事業に出資することが周囲に知られることで競合他社などに経営方針の動向まで探られることにもなるため、特に法人として出資する場合に大きなメリットになり得ます。
また、GK-TKの組み合わせによる二重課税回避の仕組みも見逃せないポイントといえるでしょう。
作業としての投資家の仕事は、お金を出すことがメインになりますが、このように投資スキームの裏側を知ることで、利益を得る仕組みについてより深い理解を得られます。不動産投資ファンドや太陽光発電ファンドなどへの投資を検討する際は、ぜひスキームにも着目してみましょう。
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