株式が上場廃止されたらどうなる?上場廃止となった株式の取扱いや過去の事例を紹介
公開日 2024/03/01
最終更新日 2024/03/18
2023年末、大手総合電機メーカーの東芝が上場廃止となり大きな話題となりました。このように、株式投資をしていると、ときどき「上場廃止」のニュースを聞くことがあります。保有株式が上場廃止されるのはどのような場合なのでしょうか。また、投資家が行うべき手続きはあるのかも知っておきたいところです。
今回は、株式が上場廃止されたらどうなるのかをテーマに、上場廃止とは何かという基礎知識から、保有株が上場廃止されると発表された場合に売買はどうなるのかについても解説します。株式投資をする方、これから投資を始めたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
上場廃止とは
株式の上場廃止とは、東京証券取引所(東証)などの証券取引所で売買ができなくなることです。ちなみに、東証では2022年には77社、2023年には61社が上場廃止しており、上場廃止はそれほど珍しい話ではありません。
また、上場廃止と聞くと「倒産」などのネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、そうとも限りません。上場廃止される理由については後ほど詳しく解説します。
上場廃止となる2つの要因
上場廃止には主に以下の2つの要因があります。
- 上場基準を満たしていない
- 企業自らが上場廃止を選ぶ
これらについて詳しく見ていきましょう。
1.上場基準を満たしていない
各市場の上場基準を満たしていない場合、上場廃止となります。東京証券取引所の主な上場維持基準を確認してみましょう。
株主数 | 800人以上 | 400人以上 | 150人以上 |
流通株式 |
流通株式数 2万単位以上 流通株式時価総額 100億円以上 流通株式比率 35%以上 |
流通株式数2,000単位以上 流通株式時価総額10億円以上 流通株式比率25%以上 |
流通株式数1,000単位以上 流通株式時価総額5億円以上 流通株式比率25%以上 |
売買代金 | 1日平均売買代金が2,000万円以上 | 月平均売買高が10単位以上 | 月平均売買高が10単位以上 |
純資産 | 純資産の額が正であること | 純資産の額が正であること | 純資産の額が正であること |
時価総額 | 250億円以上 | ー | ー |
上記の上場維持基準を満たせなくなった場合、1年以内に規準に適合しないと上場廃止となります(売買高の場合は6カ月)。そして、満たせなくなった場合は、その状態になった時から起算して3カ月以内に原則として1年(売買高の場合は6カ月)内に上場維持基準に再び達するための取組と実施時期を記載した計画書を提出しなければなりません。
また、上場維持基準を満たせなくなった場合以外にも以下のような理由で上場廃止となることがあります。
有価証券報告書等の提出遅延
法定提出期限の経過後1ヵ月以内に提出しない場合は提出遅延とみなされ上場廃止となります。
なお、提出期限延長の承認を得た場合は、承認を得た期間の経過後8日目(休業日は除外)までに提出しないとき、上場廃止となります。
有価証券報告書の虚偽記載
有価証券報告書に虚偽記載があり、直ちに上場廃止しなければ市場の秩序を守れないと判断された場合は上場廃止となります。
経営状態の悪化など
銀行取引の停止、破産・再生・更生手続き、事業活動の停止など、経営状態が健全でなくなった場合、上場廃止となります。
2.企業自らが上場廃止を選ぶ
上場維持基準を維持している企業であっても、企業戦略の一環として上場廃止を選択する場合があります。具体的には以下のようなケースです。
経営方針転換を行いたい時
大きな経営方針転換を行いたくても、多くの株主の反対で進められないことがあります。このようなケースでは、上場廃止して経営陣に権限を持たせるという手法を取る場合があります。
コスト削減のため
上場を維持したい場合、毎期、有価証券報告書の作成と提出を行う必要があります。また、上場後は上場株式の時価総額によって、毎年96万円~456万円の上場料(※プライム市場の場合)を支払わなければなりません。
これらのコストを削減するために上場廃止を選択する場合もあります。
過去に上場廃止になった事例
過去に上場廃止になった企業の例を見てみましょう。
アデランス | TOB(株式公開買い付け)による完全子会社化のため |
アコーディア | 経営環境の悪化と立て直しのため |
日立物流 | 株式の併合のため |
グレイステクノロジー | 四半期報告書提出遅延のため |
ワタベウエディング | 株式の併合・破産手続、再生手続又は更生手続に準ずる状態(債務免除)のため |
経営悪化を原因とするものだけでなく、完全子会社化や株式併合が理由で上場廃止する場合も多くあります。決してネガティブな理由だけで上場廃止するわけではないということを理解しておきましょう。
上場廃止したら持ってる株はどうなる?売却できる?
上場廃止した場合、持っている株式は証券取引所で売却できなくなります。また、株主としての権利は残ります(倒産や100%減資の場合は、株主の権利が喪失します)が、証券会社での取り扱いもできなくなります。上場廃止となった株式は証券会社の預かり残高から抹消され、株式を発行している会社、もしくは株式を管理する信託銀行の預かりとなるためです。
証券会社の預かり残高から抹消された後に売却したい場合は、発行会社か信託銀行に問い合わせる必要があるため、証券取引所で行われる通常の株取引よりも時間や手間がかかります。この点には注意が必要です。
上場廃止発表後は「整理銘柄」に指定される
上場廃止発表後、すぐに上場廃止となって売却できなくなるわけではありません。上場廃止が発表されたら、原則としてその後1カ月間は「整理銘柄」に指定され、その間であれば株式市場で売却が可能です。
しかし、上場廃止を控えていることで、希望価格よりもかなり低い株価でしか値段が付かないことも予想されます。場合によっては売買が成立しないこともあります。
なお、上場廃止する株式がすべて整理銘柄に指定されるわけではありません。「完全子会社化」が理由で上場廃止する場合は、新たな上場会社の株式に交換されるため整理銘柄に指定されず、即上場廃止されることもあります。
交換された新たな上場企業の株式は今までと同様に市場での売買が可能です。
上場廃止株が再上場する可能性は?
上場廃止株はその後、絶対に再上場できないわけではありません。例えば、上場廃止の理由が、経営再建や改革のため会社が株主から株式を買い付け、一旦非公開とする「MBO(マネジメントバイアウト)」の場合、経営再建・改革後、再上場することもあります。
しかし、MBO後の再上場は新規上場時よりも審査が厳しくなるのが一般的です。具体的には「MBOからの経過期間」「MBO時と再上場申請時の経営陣が同一か」などの点がチェックされます。再上場は可能ですが、難しいという点は認識しておきましょう。
上場廃止が発表されたら今後の動向を見極めよう
今回は、株式が上場廃止になるとどうなるのかをテーマに、上場廃止の基礎知識や上場廃止の原因などについて詳しく解説しました。
株式の上場廃止が発表されると、1カ月間程度は整理銘柄として売買できますが、その後、市場での売買ができなくなります。もし、売却を希望する場合は、株式の発行会社や信託銀行に問い合わせが必要です。市場での取引のように、価格をリアルタイムで確認しながらの売買ができなくなるため注意が必要です。
なお、上場廃止する理由は経営悪化だけではありません。経営基盤強化のための「完全子会社化」などが理由の場合もあります。完全子会社化で上場廃止のケースでは、新たな会社の株式に交換されるため整理銘柄に入らず、即上場廃止されることもあります。
保有株式の上場廃止のニュースが出た時は、まずは何が理由なのかを確認しましょう。
そして、不必要に慌てることがないよう、日頃から企業情報や株価等をチェックする習慣を身に付けておきましょう。
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