不動産投資における節税の仕組みや節税可能な税金の種類を解説

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#税金・節税

昨今、節税目的での 不動産投資 が注目されています。 不動産投資で節税 ができるとはどういうことなのでしょうか。その仕組みを解説します。

不動産投資で節税できる5つの税金

不動産投資で節税できる5つの税金
不動産の管理・運用により発生した収益から必要経費を控除したものを不動産所得といいます。不動産所得に損失(赤字)が出た場合、給与所得や事業所得と相殺することが可能です。これを損益通算といいますが、損益通算をすることで、総所得額(課税価額)が下がるため、税金が減額されます。

また、資産を現金で保有するより不動産で保有したほうが節税になる場合があります。では、まずは不動産投資により節税 できる税金5つを解説します。

1.所得税

年間の不動産所得が赤字となった場合、給与所得から赤字分を控除できるため課税所得を下げられます。課税所得が下がれば所得税も少なくなりますので、年末調整済みの会社員であれば、確定申告をすることで所得税の還付が受けられます。

たとえば、課税所得が1,000万円の方が不動産所得で200万円の赤字を出した場合、800万円の所得の方と同等の所得税を払えばいいことになります。自営業者やフリーランスの方であれば、不動産所得の赤字を事業所得から控除して確定申告すれば、所得税額を抑えることができます。

2.住民税

住民税は前年の所得に対して課される税金です。所得税同様、不動産所得との損益通算により課税所得を下げられれば、住民税も減額されます。ここで、「あれ、節税の話なのに、節税になっていない」と、気づかれた方もいるでしょう。

課税所得額が減れば税金が安くなるのは当たり前です。これでは節税とは言えません 。節税と言うからには、手取り額はそのままに、税金だけを減らすことがポイントです。その仕組みについてはこの後、「減価償却」の項で詳しく説明します。

3.法人税

所得税は7段階の累進課税方式で、課税所得額に応じて5%~45%が課税される仕組みです。所得の高い人ほど高い税率が課されます。

たとえば、課税所得2,000万円の方の所得税率は40%で、不動産所得にも同率の所得税率が適用されます。一方、資本金1億円以下の法人の場合、法人税率は、800万円以下の部分は15%、800万円超の部分については23.2%です。

つまり、一定の所得区分以上になると、所得税率よりも法人税率が低くなるため、法人化したほうが税金が抑えられることになります。ただし、法人化すると不動産所得に赤字が生じた場合でも給与所得と損益通算はできなくなることに注意が必要です。

4.相続税

相続税対策として不動産を活用することができます。現金や預金に対しての相続税は額面そのものに課されますが、不動産に対する相続税は相続税評価額に課されます。

相続税評価額は、「路線価」や「固定資産評価額」に基づいており、土地では実勢価格の8割程度、建物では新築価格の7割程度とされています。つまり、現金を相続させるより不動産に換えたほうが課税対象となる価額が下がるため、税金が軽くなるのです。

5.贈与税

贈与税には暦年課税と相続時精算課税という2つの課税方式がありますが、不動産など評価額の大きな財産の贈与に適しているのは相続時精算課税です。相続時精算課税は一人の贈与者から合計2,500万円までの贈与に対する税金が先送りされる仕組みです。先送りされる理由は、贈与者が死亡して相続が発生した際には贈与された財産を相続財産に持ち戻して計算をするため、結局相続税で税金を精算することになるからです。

しかし、現金ではなく不動産で生前贈与しておくことで節税となるケースがあります。なぜなら、生前贈与された不動産を相続税の算定に持ち戻すときの価額は、相続時の相続税評価額ではなく贈与時の評価額 だからです。

たとえば、贈与時2,000万円の不動産が、相続発生時に3,000万円になっていても、相続税は2,000万円に対して課されます。値上がりが期待できる不動産を取得して、生前に贈与することで節税になるのです。

不動産投資の節税ポイントは減価償却と損益通算

不動産投資の節税ポイントは減価償却と損益通算
次に、不動産投資における節税の大きなポイント「減価償却」と「損益通算」について解説します。

減価償却費の計上

所得税、住民税の節税で触れましたが、節税目的の不動産投資は、手取り所得は減らさず、帳簿上に損失(赤字)を出すことがポイントです。そのためには「減価償却費」の計上がキーになります。減価償却費は、固定資産をその耐用年数に分割して必要経費に計上できるものです。

実際の支払いは初年度の1回のみ、しかし経費として数年にわたり分割計上できるため、2年目以降は実際の支出なしで、帳簿上のみの支出計上ができる仕組みです。なお、建物は経年劣化するため減価償却の対象物ですが、土地は経年による償却がないため対象外です。

損益通算して課税所得を圧縮

減価償却と損益通算は、不動産投資の節税においてワンセットと考えます。損益通算とは、本業の所得から不動産所得の損失(赤字)を差し引いて本業の課税所得を圧縮する方法です。

たとえば、課税所得が3,000万円の方に、不動産所得で帳簿上1,000万円の損が出た場合、損益通算することで課税所得が2,000万円になります。損益通算により課税所得を減らし所得税を下げる、これが不動産投資による節税の仕組みです。

減価償却と損益通算の節税効果

実際の節税効果を見てみましょう。

課税所得3,000万円の方が、耐用年数残り4年の中古不動産を1億円で購入したとします。購入額1億円の内訳は、土地価格が6,000万円、建物価格が4,000万円です。なお、購入不動産は賃貸しないこととし、キャッシュフロー(利益)を生み出さないものとします。

土地は減価償却対象外であるため、建物4,000万円を4年で償却することになります。1年間に計上できる減価償却費は1,000万円です。保有不動産は収益を生み出していないため、1,000万円を経費としてそのまま損失計上すると、損益通算により課税所得は2,000万円へ減額されます。

  • 課税所得3,000万円の所得税は920.4万円
  • 課税所得2,000万円の所得税は520.4万円

このように、確定申告をすることで差額の400万円(920.4万円-520.4万円)が還付されます。つまり、4年で1,600万円の節税 となります。

減価償却後に投資不動産を売却する場合の税金

続いて、建物4,000万円すべてを償却した後に、不動産を購入時と同じ1億円で売却するとしたケースを見ていきましょう。

不動産は購入したときより高値で売ると、譲渡所得がかかります。今回、購入時と同じ金額で売却していますが、建物価格4,000万円はすでに償却しているため、譲渡所得として課税対象となるのは土地の6,000万円です。6,000万円の譲渡益に課される税金は、不動産の保有期間により異なります。5年以上保有の場合は長期譲渡所得となり、税率は20%、5年未満に売却すると短期譲渡所得となり税率は31%です。

仮に購入から5年後に売却すると、1,200万円(6,000万円✕20%)が税金として取られますが、損益通算により4年間で1,600万円が節税されているので、この不動産投資により400万円(1,600万円-1,200万円)を節税したことになります。

なお、節税の仕組みを簡潔にお伝えするため、仮定の数字で解説しています。実際は売買にかかる各種手数料等を含める必要があります ので、シミュレーションをきちんと行うことが大切です。

不動産投資のその他の節税

不動産投資のその他の節税
税金をなるべく抑えるには、課税所得を圧縮することが重要な要素であることはお伝えしたとおりです。課税所得を抑えるために減価償却費の計上は大きなポイントですが、他にもできることがあります。

経費の計上による節税

不動産の管理・運用により得られる収益から、次の必要経費を控除することができます。

  • 固定資産税
  • 損害保険料
  • 減価償却費
  • 修繕費

(出典:国税庁No.1370 不動産収入を受け取ったとき)

この他、ローンで不動産を購入した場合には、借入金の利息が経費計上できます。

また、自動車やパソコンなども明らかに不動産収入を得るために使用されるものであれば、経費として計上できます。それらが固定資産となる場合は、減価償却費として分割して計上します。必要経費となるものは漏らさず計上することで、課税所得が抑えられ税金の節約につながります。

家族への給与支払いによる節税

不動産経営が大規模である場合には、家族が経理処理や清掃、管理などを請け負うことがあります。その場合、家族へ支払う給与は必要経費として計上ができます。

不動産所得を確定申告する場合、白色申告と青色申告のいずれかを選ぶことになります。白色申告では、経費計上できる家族への給与額に上限がありますが、青色申告では上限額の設定はないため、家族への給与全額が経費として計上可能です。ただし経費として計上できるのは、不動産収入が事業的規模であることが条件です。具体的には、集合住宅では部屋数が10室、戸建て住宅では5棟が事業的規模の目安です。

青色申告には、最大65万円の控除や損失の繰り越しなど、白色申告にはない特権があります。より税金を抑えるためには、青色申告を選択したほうが効果的です。

節税効果を理解して効果的な不動産投資を

不動産投資によって節税が見込まれる税金 の種類とその効果について解説しました。

所得税や住民税は、建物の減価償却費を分割で経費計上し損益通算することで、課税所得が抑えられ納税額を下げられます。ただし、投資不動産を売却するときに課される税金を考えると、節税目的の場合、所得税率が低い方の不動産投資には、節税のメリットはないと考えましょう。

相続税や贈与税に関しては、現金より不動産で引き継いだほうが税金が抑えられるケースがあります。不動産投資による節税効果は、個人によりまったく異なるため、トータルでキャッシュの流れをシミュレーションして慎重に検討することが重要です。

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  • 記事を書いた人 山﨑 裕佳子

    1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、証券外務員二種保有。通関士として通関業務、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーなど経験し、FPの道へ。2022年「FP事務所MIRAI」設立。家計の見直しでMIRAIを変えるをモットーに、各種相談、金融記事執筆、書籍監修等、幅広く活動中。

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