クラウドファンディング投資でFIREを達成した投資家・SALLOW氏インタビュー

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こんにちは。投資家・ブロガーの中田健介です。 

恒例の(?)投資家インタビュー企画、今回は、ソーシャルレンディング不動産クラウドファンディング投資家のSALLOW氏にインタビューを実施。現在の資産状況や、運用のポイントなどを詳しく伺いました。(インタビュー実施日:2023年11月20日)

SALLOW
投資家・ブロガー
サラリーマンとして働くかたわら、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングを中心に資産を増やし、2021年3月に “億り人” を達成、同年10月に早期リタイア。2018年に著書「1万円からはじめる投資 ソーシャルレンディング入門(かんき出版)」を上梓。ブログ「ソーシャルレンディング投資記録(新)」を運営中。X(旧Twitter)アカウント:@SALLOW_SL

株の値動きに疲れソーシャルレンディング投資へ

ーー年齢とご職業を教えてください。 

年齢は40代後半です。2021年10月に退職しましたが、その前は製造業の会社員で、生産技術を支援する部署で勤務していました。

ーー投資自体を始めたのはいつですか?

28歳の頃です。ある程度の資金が集まったので、預金から投資に切り替えることにしました。ただ、始めたときには具体的な目標などはありませんでした。

ーー現在(2023年11月時点)の総資産額とポートフォリオについて教えてください。

総資産額は約1.2億円です。ポートフォリオは、ソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディングが98%で、残りはロボアドです。現金は生活に必要なぶんしか保有していません。クラウドファンディングから毎月償還があるので、特に困ったことはありません。

ーーどのようにしてそれだけの資産を作ったのですか?

長い間夫婦共働きだったので世帯収入が比較的多かったことに加えて、一時期私の仕事が忙しく海外へ行きっぱなしだったためにお金を使う暇がなく、結果的にどんどん貯まっていきました。2012年に民主党から自民党に政権交代したときにチャンスだと感じ、当時3000万円ほどあった資産をすべて株に振り向けました。

その後のいわゆる「アベノミクス」「黒田バズーカ」で、資産を倍近くに増やすことができました。ただ、大きく利益を上げることができたものの、その際の値動きの大きい投資に疲れてしまい、ソーシャルレンディングを始めました 。

事業者・ファンド選びで気をつけているポイント

ーー現在ソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディングから得ているキャッシュフローはいくらくらいですか?

毎月若干のバラツキがありますが、平均すると月に税引き前だと50万円ほどで、税引き後だと35~40万円ほどです。年利回りでいうと、税引き後で4%ほどです。より高利回りのファンドに投資すればそれ以上の利回りを求めることもできますが、デフォルトや返済遅延のリスクも高まるため、ソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディング投資で安心して利回りを得るにはこれくらいが限界ではないかと個人的には考えています。

ーー現在はどんなソーシャルレンディングサービスに投資していますか?

特定のものはなく、現在国内で運営されているほぼすべてのソーシャルレンディングサービスに投資しています。

ーーソーシャルレンディングのサービスやファンドを選ぶ上で気を付けていることは何ですか?

サービス事業者や融資先の財務諸表を見て財務状況を確認していますが、どちらを重視するかは、事業者が融資先企業とどこまで関連しているかによります。

例えば「オルタナバンク」であれば、内部事業への貸付なので、事業者の信用力を見ます。一方「Funds(ファンズ)」の場合は融資先企業はサービス事業者とは直接関係ないため、融資先の信用力を見ます。ソーシャルレンディングでは、対象となるプロジェクトが失敗してもリコースローンの場合は会社が残っていれば支払われる可能性が高いので、融資先企業の安全性を重視することにしています。

このあたりは、不動産クラウドファンディングとは違う見方が必要になります。

ーー不動産クラウドファンディングはどのサービスに投資されているのでしょうか? 

現在投資している不動産クラウドファンディングは、投資金額が多いところを挙げると「CREAL(クリアル)」「Jointo α(ジョイントアルファ)」「利回りくん」「TREC FUNDING(トレックファンディング)」「わかちあいファンド」「TSON FUNDING(ティーソンファンディング)」「COZUCHI(コヅチ)」「利回り不動産」「TECROWD(テクラウド)」「トモタク」「なにわファンド」あたりです。最近は「REISM(リズム)ファンズ」「LEVECHY(レベチー)」などでも投資を始めましたし、今後まだ増えると思います。

ーー不動産クラウドファンディングのサービス事業者を選ぶ上で気を付けていることは何ですか? 

やはり事業者の信頼性です。ただ、現状だと、よほど変なサービスではない限り大丈夫ではないかと考えています。事業者にとって不動産クラウドファンディングを立ち上げるには初期投資に数百万~1,000万円程度はかかると聞いています。その資金を回収するまではコケる可能性は少ないのかなと個人的には考えています。

ただ、不動産市況の潮目が変わり始めたとも感じているので、今後は不動産クラウドファンディングも選別する必要があるかも知れません。私は多くのサービスに分散投資をしているので、そのうちのどこかがコケることも可能性としては頭に入れていて、仮に元本割れが起きるとしたら開発型案件のどこかで起きるのではないかと予想しています。

レジデンス型の場合は、多少不動産の価値が落ちたとしても、事業者が元の価格で買い取ることは可能なので元本割れは起きにくいでしょう。ただし発生した場合、事業者の保証はないので、損失がどの程度の規模となるかが不安です。

あと、私はX(旧Twitter)で、不動産クラウドファンディングの “中の人” とやりとりをしています。やりとりのある事業者は、担当者の人柄や内部事情がわかり安心できるので、優先的に投資しています。交流会などで担当者と直接会うこともあります。株式投資だとインサイダー取引に該当してしまうかもしれませんが、値動きのないクラウドファンディングにはそういう制約はありませんので、そのあたりは楽しみながらやっています。

ーー不動産クラウドファンディングのファンドを選ぶ際にはどんなところに気を付けていますか? 

投資対象のファンド数が多いため、配当原資の種別(インカムゲイン・キャピタルゲイン)、案件の種類(レジデンス案件・開発案件)、地域といった部分で、偏らないように気を付けています。案件内容は一応見ますが、明らかに怪しい案件でなければ投資します。案件のえり好みをして機会損失となることを避けるようにしています。

仮に私の投資資金が少なければ、インカムゲイン型で、投資対象が自社物件のレジデンスであるファンドに投資するでしょう。それがもっとも安全だと考えています。また、利回りや投資期間についても分散しています。利回りが高い案件はそれなりの理由があります。少ない金額で投資するのであれば、なぜ高いのかを見極めたほうがいいでしょう。

不動産クラファンの魅力とデメリット

ーー不動産クラウドファンディング投資の魅力はどんなところですか? 

ひと言でいうと、REIT(リート)のような価格変動がないところです。不動産投資の特徴は価格変動が緩やかなところなのに、大きな価格変動があったら意味がありません。また、小口で投資できるところや利回りが比較的よい点も魅力です。さらに、優先劣後方式が採用されているファンドであれば、事業者がまずリスクを負うので、投資家のリスクは比較的低い点もいいと思います。

ーー不動産クラウドファンディング投資のデメリットや懸念はありますか? 

ソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディングともにそうですが、利益が税制上「雑所得」になってしまう点はデメリットだと思います(※匿名組合型ファンドの場合)。また、分散投資するには複数事業者に対して口座を開かなくてはならず、手続きが煩雑です。懸念としては、不動産市況がこれまで比較的よかったのですが、今後はどうなるかわからない点があります。

ーー過去にソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディング投資で損失を被ったことはありますか?

不動産クラウドファンディングではまだ損失を被ったことはありません。ソーシャルレンディングでは損失を被ったことがあり、現在でも700万円ほどが塩漬け状態になっています。

ただ、現在のソーシャルレンディング投資は、以前より安全になったと感じています。金融庁が本気で乗り出してきて、すべての事業者に立ち入り検査を行ったという話もあり、また新規事業者の審査が厳しくなったとも聞いています。その結果、過去に一部の事業者であったような詐欺まがいの案件を募集するようなことはできなくなりました。現在運営しているサービス事業者ではそこまで危険だと感じるところはないですね。

ーー現在、ほかに興味を持っている投資はありますか?

1つは「ROBOPRO(ロボプロ)」というサービスです。これは、AIが将来予測をして自動で投資配分を変えて運用するロボアドバイザーです。あとはときどき遊び程度にコモディティのETFに投資することもあります。そのほか、SBIなどが手掛けている不動産STO(Security Token Offering)にも注目をしています。ただ、基本的には今後もクラウドファンディング中心でやっていくつもりです。株式などの投資は昔やりましたが、自分には合っていないと感じたので、今後も遊び以上でやることはないと思います。

ーー投資の情報はどのように得ていますか?

ブログを運営しているので、そこからさまざまな情報が入ってきます。また、先ほどもお話ししたように事業者の知り合いからも入ってきます。情報としてはそれで十分なので、それ以外のメディアなどはたまに見る程度で、参考にすることはあまりありません。不動産クラウドファンディングサービスの数はだいぶ増えてきていて、新しいところまで逐一追いきれないので、投資先は縁があるところ中心でよいかなと考えています。

FIRE後の資産状況は?

ーー2021年10月に早期リタイアされたそうですが、決め手は何だったのですか?

決め手はお金の心配がなくなったことです。シミュレーションした結果、投資からのキャッシュフローだけで暮らしていけることがわかりました。またそのタイミングで、勤務先で給与は上がらないのに現在の業務に加えて苦手な業務をさらに押し付けられそうになりました。勤務先と話し合いを重ねましたが、会社側の方針が変わらなかったため、退職しました。

ーー現在の標準的な一日の過ごし方はどのようなものですか?

8時頃に起床し、散歩に出かけます。その後はブログを書いたり、好きな温泉やサウナに行ったり、観光したりしています。これまで会社に行っていた時間がそのままブログ・サウナ・観光に代わった感じです。健康のためにも規則正しい生活は続けています。毎日が充実していて、これまでにリタイアを後悔したことはありません。

ーー早期リタイアした現在でも投資ブログを続けるモチベーションは何でしょうか?

ソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディングが好きだからです。この投資商品は私に合っており、ブログを通じて中の人と縁もできました。恩返しをしたい、もっと世の中に広まってほしいという想いがあります。そうすればいずれ税制などの面が改善されるかも知れません。

ーー早期リタイア後の資産状況はいかがですか?

約2年前に早期リタイアしてから、資産は1000万円ほど増えています。毎月の収支でいうと、 現在の生活費は税金・社会保険を除いて30~35万円程度かかっているのですが、投資で得られるキャッシュフローが50万円ほど、ブログや単発の仕事の収入なども合わせると月60~70万円の収入があり、家族の生活は十分まかなっていける状態です。なので、今のところは再就職する予定はありません。

ちなみに投資による収入はソーシャルレンディング・不動産クラウドファンディングが中心で、これらは税制上「雑所得」となるので、かなり所得税・住民税がかかります。確定申告の際にはブログの取材のための外食や旅行などの経費を計上していますが、いずれは節税のために法人化も検討しています。

自分に合った投資を長く続けよう

ーー同じように投資で早期リタイアを目指す人にアドバイスをお願いします。

まず、何に投資するかは、いろいろやってみて自分に合ったものを選ぶことが重要です。早期リタイアはかなり長い道のりになります。自分の場合は20年ほどかかりました。自分に合った投資商品でないと長続きしないでしょう。

多くの人は投資で一攫千金を目指しがちですが、それで成功するのはごく少数で、実際にはその裏に多くの失敗者がいます。SNSなどで投資で大成功したと謳っている人は多いですが、そのほとんどは再現性のない偶然や奇跡のようなもの、あるいは嘘でしょう。そもそも投資は資産構築の1つの手段に過ぎません。資産構築には本業の収入を増やしたり支出を減らしたりすることも重要です。

また、事前にリタイア後をイメージしておいたほうがよいでしょう。例えば、コロナ禍で家族以外の人と会えない期間があった人も多いと思いますが、それをつらいと感じた人は早期リタイアに向いていないかもしれません。安易に早期リタイアして、うつ病になってしまう人もいると聞きます。早期リタイアすると、社会とのつながりは少なくなりますから、ひとりまたは家族だけで長期間過ごすことへの耐性が必要です。他人との関わりがないと人生を楽しめない人はしないほうがよいでしょう。

あとは、「仕事が嫌い」という理由だけで早期リタイアしても続きません。お金のために働かなくてよい状態まできたら、本当にやりたい仕事に転職するという選択肢もよいと思います。

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  • 記事を書いた人 中田健介

    IT系企業に勤務する傍ら、2010年からソーシャルレンディングでの資産運用を開始。同時にブログ「けにごろうのはじめてのソーシャルレンディング日記」を開設。 著書に「年利7%! 今こそ『金利』で資産を殖やしなさい!~日本初! 融資型クラウドファンディング投資の解説書」(ぱる出版)がある。

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