サブリース契約とは?要点・注意点をわかりやすく徹底解説
公開日 2023/09/20
最終更新日 2023/10/06
サブリース契約とは アパート・マンション経営における管理委託の一種です。サブリース会社が不動産を一括借り上げすることで、空室があっても安定収入が得られる特徴があります。
その反面、満室時の家賃収入から手数料が引かれるため、毎月の収支がプラスになるか確認することが大切です。そこで不動産投資におけるサブリース契約では何をチェックすればよいのか、アパート・マンション経営経営のオーナーにとって役立つサービスなのかを判断するためのポイントを徹底解説します。
サブリース契約とは?
サブリース契約をひと言で説明すると、「アパート・マンション経営の際、サブリース会社(管理会社)がオーナーから一括借上げすることで安定収入を得られるようにする賃貸管理の方法」です。
サブリース契約とは賃貸管理の一種
サブリース契約とはアパート・マンション経営での賃貸管理の一種で、サブリース会社が一括借り上げをして入居者に転貸(サブリース/又貸し)する仕組みです。サブリース会社は、一般の賃貸管理と同様に次のような業務を行います。
- 入居者管理(募集や家賃収納、クレーム対応など)
- 建物管理(室内設備や共用設備、建物のメンテナンスなど)
オーナーは、手数料として家賃の〇〇%といった形で支払います。一括借上げになるため、空室の有無にかかわらず毎月一定額の収入が保証される点が、サブリース契約の最大の特徴です。
サブリース会社の種類
サブリース会社の種類は大きく3つに分けられます。1つずつ見ていきましょう。
1.大手建設会社やハウスメーカー
積水ハウスや住友林業、大和ハウスなどの大手企業が子会社などでサブリース事業を手がけています。全国的に活動しているため、あらゆる地域の賃貸物件に対応できるのが特徴です。会社ごとに契約期間が異なり、10年間は賃料を固定する会社もあります。基本的には自社が建築する賃貸物件をサブリースする形となっています。
2.大手不動産チェーン
エイブルやホームメイト、東急リバブルといった大手不動産チェーンにもサブリース事業があります。仲介ネットワークを生かした客付けができる強みを持ちます。
3.地方不動産会社
大手不動産チェーンではない地方不動産会社もサブリースを手掛けています。地域に特化しているため大手不動産チェーンよりも地元の客付けが得意な反面、資金力が少なく倒産のリスクが高めというデメリットがあります。
サブリース契約の賃料相場は?
サブリース会社に支払う費用(手数料)は、家賃の10~20%が相場です。従って、オーナーはサブリース会社に入る転貸賃料の80~90%を得ることができます。この際の家賃設定はサブリース会社が行うため、家賃が周辺相場に見合う額になるとは限りません。サブリース会社は、客付けのため周辺相場よりも安めの転貸賃料に設定にするケースもあります。
サブリース契約の4つのメリット
サブリース契約には次の4つのメリットがあります。
メリット1.安定収入が得られる
アパート・マンション経営における大きなリスクとして、「空室リスク」「家賃滞納リスク」が挙げられます。空室となれば当然家賃収入を得られないほか、入居者による家賃支払いの延滞がある場合も収入が滞ってしまいます。しかし、サブリース契約をしている場合、仮に空室や延滞があった場合でも、毎月一定額の収入を得ることができます。
メリット2.管理業務はサブリース会社が行う
サブリース会社が受け取る手数料には管理費用が含まれているため、入居者募集や建物のメンテナンスなど、賃貸経営に伴う管理業務はすべてサブリース会社が行います。ただし、修繕やメンテナンスの費用はオーナーの負担となります。
メリット3.相続税対策になる
現金で物件を購入する場合には相続税対策になることもサブリース契約のメリットです。現金を相続すると額面がそのまま課税対象となり、最大で55%(ただし最大7,200万円プラス600万円×相続人数の控除あり)の相続税が発生します。一方で土地を購入し賃貸物件を建てて賃貸すれば、相続税評価額は次のように減額されます。
- 土地分…時価の8割ほど
- 建物分…実勢価格の7割ほど
通常の賃貸物件は空室部分に関しては貸家建付地としての評価減の対象となりません。しかしサブリースの場合は全体をサブリース会社に貸しているので、たとえ空室があっても評価額に影響がない 点もメリットとなります。
メリット4.「サブリース新法」により透明性が向上
2020年12月15日にいわゆる「サブリース新法」が施行されたことで、サブリース契約が適正化されたこともメリットの1つです。サブリース契約では従来、契約時に十分な説明がなされないケースがあり、オーナー側に不利な条件で契約を結ばれてしまうリスクなどがありました。
しかし、サブリース新法の施行で以下の規制が加わっています。サブリース新法が制定されたことで、安心して利用できるようになったのは大きな利点と言えるでしょう。
- 禁止される誇大広告の明確化(賃貸住宅管理業法 第 28 条関連)
- 禁止される不当な勧誘等行為の明確化(同第 29 条関連)
- 契約締結前における契約内容の説明及び書面交付内容の明確化(同第 30 条関連)
参考:サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン|国土交通省
サブリース契約のデメリット4つ
メリットの一方でサブリース契約には次の4つのデメリットがあるので留意しておきましょう。
デメリット1.管理委託より収入が少なくなる
サブリース契約での手数料は、管理委託での手数料よりも高額になるのが一般的です。サブリース契約をした場合、空室が出たときも安定的に収入が得られるメリットがある反面、満室が続いた場合は一般の管理委託で受け取れる家賃収入より少なくなります。
デメリット2.更新時に家賃が下げられることがある
建物の劣化、周辺相場との相違、あるいは空室が出ているなどの理由から、サブリース会社が更新時に家賃の減額交渉をしてくることがあります。賃料減額交渉は、借地借家法(第32条)でその権利が明記されています。
“ 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。”
参照:借地借家法|e-GOV 法令検索
必ずしも、打診してきた減額幅を受け入れる必要はありませんが、過去には交渉がもつれ調停・訴訟にまで発展した例も多くあるため慎重に臨む必要があります。
デメリット3.中途解約が難しい
サブリース契約は、オーナーが貸主、サブリース会社が借主の賃貸借契約になります。借地借家法により借主側が保護されることになるため、貸主側から解約を申し出るのは困難で、解約を申し出るには「正当事由」が必要になります。
正当事由として認められた判例には、「老朽化で取り壊しの必要がある」「再開発などで立ち退き・売却が必要になった」「ローン返済が困難になった」などがありますが、明確な基準があるわけではありません。また、もし家賃が減額となっても、「収益が落ちてしまうから」など、オーナー側の事情は正当事由とは認められません。
デメリット4.物件売却時の資産価値減少リスク
サブリース契約はオーナー側からの解約が難しいため、売却後は買主がサブリース契約を引き継ぐことになります。そのため投資利回りは一般の賃貸物件より低くなることが多く、収益還元法による査定額(資産価値)が下がり、売却金額も低くなります。
デメリット5.家賃収入が得られない期間がある
サブリース契約は家賃保証されるものですが、「免責期間」というものが設定されています。これは入居者の退去後、一定期間はオーナーへの賃料の支払いが免除される期間のことを指します。免責期間はサブリース契約により異なりますが、その間に入居者が決まったとしても家賃がオーナーに支払われないため注意が必要です。
サブリース契約のポイントや注意点
サブリース新法により重要事項の説明が義務化されましたが、大切なのはその内容をきちんと理解することです。サブリース契約をする際は、契約書中の次の5つのポイントは特に慎重にチェックしておきましょう。
1.賃料の改定
サブリース契約では賃料のチェックも必要ですが、ある意味でさらに重要とも言えるのは、賃料の改定に関する条項です。たとえ「賃料5年保証」としていても、契約書に「2年ごとに賃料を見直す」などの記載があれば2年で引き下げられる可能性があります。
とはいえ、サブリース契約を考えるのであれば、賃貸物件の老朽化に伴い賃料の引き下げ交渉が発生する可能性はあらかじめ理解しておくことが必要です。そこで賃料改定が何年ごとに行われるのか、事前にチェックしておきましょう。
2.賃料の内訳
サブリース会社が入居者から受け取る家賃のうち、どの程度の割合がオーナーに支払われるのか(どれくらいの手数料を支払う必要があるのか)を確認しておきましょう。また礼金や更新料はサブリース会社が受け取るのが一般的ですが、その記載もチェックしておきましょう。
3.契約期間と中途解約権
サブリース契約の期間とともに、「中途解約権」に関する事項も必ず確認しておきましょう。サブリース契約はオーナーとサブリース会社との普通借家契約なので、一般的にはサブリース会社側に中途解約権があります 。問題はオーナー側が中途解約を申し出たときにどのような条件が設定されているかどうかです。オーナー側からの申し出で中途解約ができるのか、その場合には違約金が発生するのかを必ず確認しておきましょう。
4.修繕費用などの分担
契約書には、共用部分の維持管理費や退去後の原状回復費用、火災保険料などをサブリース会社とオーナーのどちらが負担するのかが記載されています。サブリース会社側が負担するケースもありますが、その場合には基本的に保証賃料が安くなるのでトータル収入が不利とならないようチェックしておきましょう。
5.免責期間
「デメリット」の項でも述べたとおり、サブリース契約には入居者の退去後にオーナーに賃料が支払われない「免責期間」が存在します。免責期間は「入居者の退去後1カ月間」のように定められます。この免責期間の設定がどのくらいなのか、契約をしっかり確認しておきましょう。
サブリース契約はどんな人におすすめ?
サブリース契約はリスクを回避して安定的な収入を得たいという人、さらにキャッシュフローがプラスになる人におすすめです。
リスクを回避して安定収入を得たい人
サブリース契約は、考えようによっては「空室リスク回避のための保険料」を支払うようなものです。一般の管理委託であれば高い家賃収入が見込める反面、空室による収入減少のリスクを抱えます。
サブリース契約はある程度の空室を前提とした家賃を受け取るような仕組みになっています。また、経年による建物劣化に伴う家賃減少も想定しなければなりません。そのため、高い収益率よりも空室リスクを回避したアパート経営をしたい人、安定収入による経営計画を立てたい人にサブリース契約はおすすめです。
キャッシュフローがプラスになる人
リスク回避を優先しても、毎月の収支が赤字では困ります。そこで、サブリース契約での収入でもキャッシュフローがプラスになることが重要です。キャッシュフローは家賃収入から借入金返済費や修繕費などの経費、固定資産税といった税金などを差し引いて残るお金で、ローンの借入額や借入期間によっても変わってきます。
また、サブリース開始時はキャッシュフローがプラスであっても、年数が経過して賃料の引き下げがあった場合はキャッシュフローは減少していきます。それでもある程度の長期に渡って収支がプラスになる見込みがあるかどうかを計算することが大切です。少なくともサブリース契約期間はキャッシュフローがプラスになると見込める人は検討してもよいでしょう。
サブリース契約以外の賃貸管理方法はどんなものがある?
サブリース契約をしない場合、「おすすめの人」に当てはまらない場合、その他の賃貸管理方法として大きく3つの方法があります。
1.管理委託業者に委託する
管理委託業者は次のような業務を代行で行います。
- 賃借人の募集と入退去手続き
- 室内のクリーニングやリフォーム
- 共有部分の清掃
賃貸物件の管理全般を委託する契約を管理委託業者と結び、入居者との賃貸借契約はオーナーが直接結びます。管理手数料はサブリース契約より安くなる反面、空室による収入減少のリスクがあります。
2.プロパティマネージャーに管理を委託する
プロパティマネージャーとはオーナーの業務を代行して行うアパート経営のプロのことです。一般的な管理会社と異なり、プロパティマネジメント会社は仲介店舗を持ちません。そのぶん、管理費用が安いのが利点です。管理業務は入居者の募集や家賃集金、建物管理や入居者対応など一般の管理委託と変わりません。管理委託業者に委託するのと同様に空室リスクがあります。
3.自己管理する
不動産業者に委託せず、すべての管理業務をオーナー自身が行うケースです。入居者募集も管理会社が持つネットワークが使えず、退去後のクリーニングや建物の修繕も業者の選定などを自身で行います。管理手数料が不要となるためコスト面では有利ですが、そのぶん少なくない労力を必要とする管理方法です。
サブリース契約とは空室リスクに強い管理委託
「サブリース契約とは」、またそのリスク
について詳しく解説してきました。サブリース契約は、アパート経営などにおける空室リスクを回避できる管理委託サービスです。リスク回避の保険代わりに手数料を支払って安定収入を確保する仕組みと言えるため、それでキャッシュフローがマイナスになってしまっては意味がありません。
サブリース契約を検討する場合は、必ず契約書の内容を詳しく確認するようにしましょう。家賃減少を考慮したうえで契約期間内のキャッシュフローがプラスになるようであれば、サブリース契約は活用する価値があると判断できるでしょう。
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