背伸びはしない。小規模/更新型ファンドで独自路線を行く。ーー「ONIGIRI Funding」後藤聡志氏インタビュー

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#事業者インタビュー

投資初心者でも気軽に始められる少額投資の1つとして、不動産クラウドファンディングソーシャルレンディングに注目が集まっています。新規参入事業者も年々増えており、今後さらなる市場規模や投資家層の拡大も見込まれています。

当インタビューシリーズでは、そんな不動産クラウドファンディングやソーシャルレンディングのキーパーソンにサービス運営の裏話を伺います。今回は、横浜エリアの案件を得意とする不動産クラウドファンディング「ONIGIRI Funding(おにぎりファンディング)」を運営する、きらめき不動産株式会社代表取締役・後藤聡志(ごとう・さとし)氏にお話をうかがいました。

後藤 聡志(ごとう・さとし)
きらめき不動産株式会社・代表取締役
大学卒業後、1年間のオーストラリア生活を経てさまざまな業種を経験した後、2004年に不動産投資業界へ転身。2008年にきらめき不動産株式会社を創業。投資・賃貸管理・リフォーム・リノベーション・コンサルティングなど、不動産にまつわる各分野で投資家の利益最大化のための提案を行う。CCIM(事業用不動産投資顧問)、CPM(米国不動産経営管理士)、公認不動産コンサルティングマスター、有効不動産活用士、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、定借プランナー、古民家鑑定士、損害保険募集人資格、少額短期保険募集人資格。著書に『不動産投資の買い替え戦略〜購入後8年で売りなさい』ほか。

ONIGIRI Funding(おにぎりファンディング)とは?

ONIGIRI Funding「ONIGIRI Funding」は、主に横浜市を中心とした首都圏の収益不動産を扱うきらめき不動産株式会社が運営する不動産クラウドファンディングサービスです。区分マンションを投資対象にしたファンドを多く取り扱っているのが特徴で、フレンドリーなSNSアカウントが投資家に人気を博しています。

\ONIGIRI Fundingをチェック/

ONIGIRI Funding公式サイト

特徴は「お金をあまり集めないこと(笑)」

ONIGIRI Funding後藤02

ーー「ONIGIRI Funding」は2020年からサービスをスタートしていますが、不動産クラウドファンディングへ参入するきっかけを教えてください。

不特事業は結構前からやりたいなと思っていて、自分たちのお金がなくてもファンドを通じてお金を集めて不動産を買えるのは面白そうだなというのは思っていました。

2009年くらいに、今の「COZUCHI(LAETORI株式会社)」の前身であるサタスインテグレイトが「ゆうゆう倶楽部」という不動産小口化商品のサービスをやっていたのですが、その代表の佐藤さんという方と知り合いで、興味はあったんです。1口100万円、利回り7%とかで募集していたのですが、当時は不動産マーケットでは10〜12%くらいの物件が結構あったので、12%の物件として買って7%の配当を出すというのは面白いなと思っていました。

ただ当時は資本金などの要件を満たしていなかったり、不特事業の認可まではなかなか難しい状況がありました。それからもずっと気にはしていて、ようやく資本金や人的要件についても整ってきたのが2018年くらいでした。そこから不特事業の許可申請などで1年くらいかかったり、あとは実際の販売のためのシステムを組んだりと諸々の準備期間があって、2020年にサービスをリリースしたという感じです。

ーー「ONIGIRI Funding」のネーミングにはどのような想いを込めているのでしょうか?

以前、『おにぎりとワンルーム投資』という本を書いて出版したんです。その本で、「お」 大家さんの目標と目的の明確化、「に」 入居者の好みやエリア分析、「ぎ」 銀行の効率的な利用、「り」 利回りの分析、という「おにぎり」が大事ですよ、という話をしていて、そこから取っています。

おにぎりって日本人の生活に身近ですし、キャッチーですよね。あと、昔は年貢をお米で納めていて実質的にお金に近い役割も果たしていました。なので、価値のあるものとしてイメージしやすいだろうというのもありました。

ーー「ONIGIRI Funding」の特徴を教えてください。

あまりお金をたくさん集めないことですかね(笑)。他社サービスと比べると小ぶりな案件が多いと思います。理由としては、もともと当社がワンルームの取り扱いが得意で、土地を取得して開発する、ということをあまりやっていないということがあります。お金を集められたとしてもいきなり開発案件ができるわけでもないので、得意分野や事業規模の中で提供できるところでやっています。

長期運用の抵抗感を小さくする変則型ファンド

ONIGIRI Funding後藤01

ーーファンドの投資対象となる物件の選定はどのような基準で行っているのでしょうか?

いくつかパターンはあるのですが、やはり基本は「安く買って高く売る」ということなので、多いのは例えば700万円くらいで売れそうな物件が500万円で買えそうだったら、ファンドのお金を使って買うというパターンです。

やはり、すべての物件が自己資金では買えませんし、かといって、特に古めでかつ賃貸中の物件の場合は銀行から融資が下りなかったりします。ノンバンクであれば借りられますが、当社が取引のあるところは金利が7.2%くらいで、プラス事務手数料もかかります。

であれば、ファンドにして5%で資金調達できればそのほうが安く済みますし、ユーザーに対して利益も還元できます。なので、融資の難しそうな物件は資金調達の手段としてファンドを活用することが多いです。

ーー20号ファンドで、「最長3年・1年更新型」という珍しい形態のファンドを提供されていますが、どういったきっかけで企画されたものなのでしょうか?

「ONIGIRI Funding」では、過去に長めの案件をやったことがあるのですが、そのうち1つは募集金額に対して半分くらいしか集まらなかったんですよ(苦笑)。それは運用期間が5年だったのですが、やはり匿名組合型で5年は敬遠されやすいなとあらためて感じました。

運営側としては、資金の返済計画を立てるうえで運用期間5〜7年はほしいというケースもあるのですが、それだとユーザーの反応は悪くなるので、20号に関してはひとまず3年でやってみようかと。ただ、それでもまだ長いんですよね。そこで運用期間は3年に設定しつつも、1年ごとの更新型にしたら抵抗感を小さくできるんじゃないかということで始めました。

まだ最初の1年が経っていないので、正直どれくらいの人が更新するのか読めていない部分もあります。ただ、もし1年で償還したい人が多く出て空きが出た場合は、新しいファンドを立ち上げて空いた枠をまた募集することもできますし、このあたりは柔軟に対応していければと思っています。

ーー少し話しにくい部分もあるかもしれませんが……2024年2月に募集開始した25号ファンドが初の不成立に終わってしまいました。この原因についてはどのように分析されていますか?

原因はいくつかあるかなと思っています。1つが利回りですね。それまではずっと5%を切らないようにしていたのですが、1回実験的に 4.5%の案件をやってみたんです。そうしたら想像以上に反応が鈍かった。

2つ目は物件の場所ですね。神奈川の「葉山」という場所なのですが、いわゆる別荘地で神奈川県民からすると価値の高いイメージをお持ちの方も多いと思います。ですが駅近物件ではなかったですし、このエリアをよく知らない方からするとマイナーな場所に映ってしまったのかもしれません。

あとは、ほぼ同時に立ち上げた世田谷・等々力の26号ファンドが再募集の案件だったんです。一度出したときは売れなくて一旦当社でで買い取りますということであらためてスタートしたファンドだったので、「大丈夫か?」みたいな空気感もあったのかなと。これらのいろいろな要因が複合的に合わさってしまって枠が埋まらなかったのかなと思っています。

今回に関しては想定通りにいかなかったのですが、この経験をしっかり教訓にして、次回以降のよりよいサービスに生かしていければと思っています。

運用終了後、最短5日。異例の超スピード償還

ーー公式SNSで、「償還・分配が運用終了後の7日後」というのを見ましたが実際にこのように運用されているのでしょうか?

そうですね。終了後、大体1週間で償還・分配しています。

ーー他社サービスでは1カ月くらいのところが多いので投資家からするとかなりうれしいと思います。運用上では特に問題はないのでしょうか?

基本的に運用終了が物件の決済の日なので、「この日にお金が入る」というのが見えていれば問題ないです。事前に計算して手続きすればいいので、その気になれば終了したその日に償還することも可能ですね(笑)。

余裕を持って1週間でやっていますが、償還日が土日の場合は前倒しになるので、5日で償還するときもあります。

人気SNS運用の裏側・“中の人”にインタビューを敢行!

「ONIGIRI Funding」といえば、プライベート感強め(?)の公式Xアカウントも投資家に人気です。その気になる運用の裏側を、“中の人”こと長根(ながね)さんに伺いました。

ONIGIRI Funding中の人

ーー「ONIGIRI Funding」といえば、公式Xアカウントのフレンドリーな雰囲気が投資家に人気ですが、どのような方針で運用されているのでしょうか?

本社が神奈川県の横浜にあって、ファンドの対象物件も神奈川県のものが中心ですので、まずは神奈川・横浜という土地を知っていただいて、そこに「ONIGIRI Funding」っていうのがあるんだよというのを知っていただければと思って運用しています。

ーーファンドの情報だけでなく、日常の発信も多いですよね。

お酒の話が多いです。なので、おじさんだと思っている方も多いみたいで(笑)。でもそういうふうに日常の投稿だったり猫を出したりすることで「ONIGIRI Funding」に対して興味や親しみを持ってもらえたらうれしいです。

やっぱり「投資」となると、ちょっと身構えちゃったりする人もいらっしゃると思うのですが、1万円から投資できる気軽さもありますし、“中の人”とも気軽にコミュニケーションできる雰囲気が出せたらと思っています。

ーー実際に投資家さんともよく絡んでる印象があります。

そうですね。いつも絡んでくださりありがとうございます(笑)。先日も全然ファンドとは関係ないのですが、私がインフルエンザで寝込んでしまったとき、投資家の方から励ましの言葉をいただいたりしました。

ーー気になっている方も多いと思いますので、長根さんのお仕事について教えてください。

朝は10時出社なのですが、出社前にXの朝の投稿内容を作って、始業とともに投稿します。そのあとはメールの対応などを行って、ファンドの公開前ですと現地まで行って周辺情報を調べたり、ファンドの詳細ページを作ったりしています。

ランチは14時くらいに行きます。会社がある通りはあまりご飯屋さんがないので、みなとみらいか桜木町駅のほうへ行くことが多いです。あとは、プレスリリースを書いたり、投資家さま向けに配信するメールを書いたり、PR関係の仕事を行っています。それで19時くらいに退社しています。

ーーそして、その後に……!

お酒ですね(笑)。

ーーありがとうございます。では最後に、あらためて後藤社長に。記事をご覧の方にメッセージをお願いします。

これまでと変わらず、無理のない範囲で、投資家のみなさんにご迷惑のかからないように、続けていければと思っております。謙虚な姿勢でこれからも継続してまいります。

引き続きよろしくお願いいたします!

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  • 記事を書いた人 a.sato

    『ゴクラクJOURNAL』編集長。10年余りのラジオディレクター・構成作家の経験を経てライターに転身。延べ300社以上のコンテンツのコンサルティング・ライティング、ブランディングに携わる。以後エンタメ・インフラなどのWebメディアの編集長を歴任したのち現職。3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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