かぼちゃの馬車事件とは?全貌と教訓、被害の原因から安全な不動産投資の選び方も解説
公開日 2025/12/22
最終更新日 2025/12/22
2018年、大きな社会問題となった「かぼちゃの馬車事件」。
多くの投資家が、“サブリースで家賃保証”“高利回り”“少ない自己資金でOK”という甘い誘いに乗り、多額の借金と損失を抱えました。
この事件の何が問題だったのか。なぜ多くの人が被害を受けたのか。
そして、同じような悲劇を繰り返さないために、現代の投資家が知っておきたい“リスクの見抜き方”と“安全な不動産投資の選び方”を解説します。
かぼちゃの馬車事件の概要 — 何が起きたのか
かぼちゃの馬車事件は、2018年に社会問題化したシェアハウス投資トラブルです。
運営会社であるスマートデイズが「女性専用シェアハウス」を開発し、投資家に販売したことが発端でした。
物件の購入者には「サブリースで30年間家賃保証」「自己資金ほぼゼロで投資可能」という条件を提示していました。
収益モデル自体が破綻
さらに、このビジネスモデルには「女性入居者に仕事を紹介する」という人材斡旋を組み込む仕組みも存在していました。
入居者の働き先(アルバイトや派遣職など)を紹介し、収入が不安定な女性でも入居できるという構造を作ろうとしていました。
しかし、入居者募集の実態は甘く、想定した稼働率には達しませんでした。
結果的に、家賃保証の根拠となる収益モデル自体が破綻し、多数の投資家がローン返済不能に陥る事態となりました。
なぜかぼちゃの馬車事件は起きたのか — 主な原因を整理
かぼちゃの馬車事件は、運営会社のずさんな経営方針が原因とされます。
それに加え、金融機関の融資審査の甘さも、被害の拡大につながったとみられています。
さまざまな角度から、事件の原因を考察してみましょう。
サブリース&家賃保証の甘い言葉に隠されたリスク
かぼちゃの馬車事件の中心にあったのが「サブリース契約(家賃保証契約)」です。
サブリース契約とは、オーナーが不動産会社に物件を一括で貸し、不動産会社が入居者に再度貸し出す仕組みを指します。
オーナーには「固定の家賃」が支払われることに加え、賃料保証があれば空室になっても一定額の家賃収入を得られます。
“家賃保証の前提”が崩壊
しかし、家賃保証は「不動産会社が支払える限り」続くものであり、保証が永久に続くわけではありません。
サブリース契約では入居者が集まらないと家賃収入が得られず、不動産会社の資金繰りが悪化し、家賃保証が機能しなくなります。
この事件では、まさにその典型例として“家賃保証の前提”が崩壊し、多くのオーナーが被害を受けました。
建築費の水増しと不当なキックバック構造
かぼちゃの馬車事件では、スマートデイズに多額のキックバックを求められた建築会社が、施工費用を何千万円も水増ししたことがわかっています。
キックバックとは、企業への謝礼金や報奨金を意味します。
不動産建築におけるキックバックの相場は施工費用の2~3%とされますが、スマートデイズは建築会社に50%も要求していたという報道もされています。
この支払いのため、建築会社が施工費用を水増しした結果、かぼちゃの馬車では割高な物件が多く販売されることになりました。
相場に見合わない販売価格が空室リスクを高め、スマートデイズの経営破綻につながったとされます。
不正融資と金融機関の関与 — 融資審査の甘さ
金融機関による不正融資も、かぼちゃの馬車事件の被害拡大につながったとされます。
被害者のほとんどは、物件購入のためにローンを組んでいました。
しかし、スマートデイズは出資者のローン審査を通過させるため、彼らの資産状況を改ざんし、スルガ銀行もそれを黙認していました。
また、スルガ銀行は、本来1億円以上の不動産購入に必要な1,000万円以上の頭金を不要とし、出資者が頭金を支払ったかのように偽装していました。
不適切な融資審査により、支払い能力の足りない出資者も多額の融資を受けていたことが判明しています。
かぼちゃの馬車事件がもたらしたもの — 不動産投資と個人への影響
かぼちゃの馬車事件は、出資者だけでなく不動産業界にも大きな影響を与えました。
具体的なポイントは、以下の3つです。
- 多くのオーナーがローン返済不能に陥り、自己破産・差し押さえなど深刻な被害に。
- 不動産投資全体への信頼の低下
- サブリースや“家賃保証”“高利回り”という言葉への警戒感の高まり。
- 金融機関の融資基準の厳格化 — 融資が通りにくくなった
- 不動産投資参入のハードルが上がったという指摘。
多くの出資者がローン返済不能に見舞われた
スマートデイズの出資者には、ローンを返済できなくなり、自己破産や資産の差し押さえに見舞われた人がいます。
十分な家賃収入を得られず、多額の返済金のみが残ったためです。
かぼちゃの馬車事件に限らず、サブリースの会社から賃料が支払われないと、出資者は多額の損失を背負うことになります。
その結果、ローンの返済ができなくなった出資者は、厳しい生活を強いられます。
不動産投資全体への信頼の低下
かぼちゃの馬車事件は、不動産投資に対する社会的な信頼低下ももたらしました。
一般社団法人 不動産総合戦略協会は事件直後の2018年6月、事件を踏まえた緊急調査をしています。
それによると、不動産投資経験のない回答者の64.7%が、その分野全般に対して「信用性が低くなる」と答えました。
また回答者の一部は、シェアハウスへの投資や、サブリース方式への不安があると認めています。
この調査結果から、事件の影響の大きさがうかがえます。
金融機関の融資基準の厳格化
スルガ銀行の不正融資を受け、事件後は金融機関による融資審査の基準が厳しくなりました。
具体的にはローン申請者の財産や収入の確認、物件紹介者である不動産会社の検証などが強化されています。
また、不動産投資を目的としたローンでは、物件価格の妥当性も厳重にチェックされるようになりました。
この事件から学ぶ — 安全な不動産投資を見抜くためのチェックポイント
不動産投資をめぐるトラブルは、誰もが巻き込まれる可能性があります。
安全な投資ができるように、大切な心構えを解説します。
サブリース契約・家賃保証を鵜呑みにしない
まず、サブリース契約の家賃保証は、鵜呑みにしすぎないことが大切です。
保証内容は、空室リスクを背負うサブリース会社の健全性に依存しています。
長期間空室が続くと、会社が家賃保証を維持できなくなり、経営破綻のリスクが高まります。
家賃保証が途絶える可能性も
サブリースの優良物件を見極めるには、販売物件やその周辺の入居率をチェックしましょう。
たとえば家賃保証が80~90%にもかかわらず、物件の入居率がよくない場合は、家賃保証が途絶える可能性もあります。
家賃保証の有無だけでなく、それが現実的であるかをよく確かめなければなりません。
物件価格・建築コスト・周辺相場を自分で調べる
不動産投資では物件価格や建築コスト、周辺相場を自分で調べましょう。
割高な物件を避けるには、周辺物件の相場を知ることがとくに大切です。
販売価格や建築費、賃料が地域相場より割高だと、入居者の獲得が難しくなります。
物件の平米単価や坪単価を知る
周辺相場を調べるときは、販売されている物件の近辺にあり、築年数が近い建物をリサーチしてください。
該当する物件の平米単価や坪単価を知っておけば、販売中の物件が相場から離れすぎていないかわかります。
このようなチェックを行えば、物件価格や建築コストが相場より高すぎないか確かめられます。
融資条件・返済プランを現実的に設定する
不動産投資でローンを組むときは、無理のない融資条件や返済プランを設定しましょう。
高金利の条件や、借入額が多いプランは、返済遅延のリスクが高いからです。
また、リスクを抑えるため、なるべく低金利で借りられる金融機関を探しましょう。
一部の金融機関は、頭金の割合が多いほど低金利で借りやすくなり、利息を抑えることが可能です。
しっかりシミュレーションを
また、無理のない返済プランを立てるため、毎月の返済金額や利息、返済期間をシミュレーションしてください。
さらに、自己資金を多くすることで、借入額を少なくできます。
返済期間中の空室や退去後の修繕費用などのリスクも考えつつ、現実的な計画を立てましょう。
運営会社の信頼性や管理体制、透明性をチェック
不動産投資では、信頼性の高い運営会社の物件を選びましょう。
信頼性を調べるときは、過去の実績や管理体制などを確かめてください。
過去の実績では販売数だけでなく、販売エリアでの管理物件数が多いか調べましょう。
運営会社が安定して賃料を払えるかもチェック
また、日常的な清掃業務、24時間トラブルへの対応など、管理体制が整っているかもポイントです。
さらに、サブリース契約では、運営会社が安定して賃料を払えるかもチェックしてください。
経営状況に問題がないか調べるには資本金や財務諸表、決算書などに目を通しましょう。
安易な「高利回り」「少ない自己資金」に飛びつかない
不動産投資では「高利回り」「少ない自己資金」などの安易な表現に踊らされないようにしましょう。
たとえば、高利回りと謳われている物件でも、立地の悪さから空室率が高かったり、状態の悪さから高額な修繕費用がかかったりする場合があります。
また、少ない自己資金や、頭金ゼロのフルローンで資金を借りた場合、返済遅延のリスクが高まります。
利回りが高かったり、少ない自己資金で投資できたりする物件を見つけたら、安定した収益につながる裏づけをよく確かめてください。
かぼちゃの馬車事件以降 — 現代の不動産投資で注目されている手法と“安全性”のポイント
事件後、多くの投資家が不動産投資への警戒を強める中で、 より透明性・安全性の高い投資手法として「不動産クラウドファンディング」の人気が再燃しています。
不動産クラウドファンディングには、以下のような特徴があります。
- 小口投資で分散可能 → 1棟丸ごと購入のような過重リスクを避けやすい
- 物件取得・管理・運営は専門事業者が代行 → 投資家の手間・リスクを削減
- 透明性・開示がしっかりしている事業者を選べば、当時のような情報の不透明性・誤魔化しのリスクを低減
小口投資で分散可能
不動産クラウドファンディングのメリットの1つは、小口投資ができることから、複数物件への分散投資もできることです。
事業所によっては1万円から投資できるものもあります。
分散投資によって損失リスクを抑えながら、堅実な資産運用ができるのもポイントです。
物件取得・管理・運営は専門事業者が代行
不動産クラウドファンディングに出資した場合、物件取得や管理、運営は専門事業者に任せられます。
運営会社が出資者から集めた資金で不動産を購入し、管理を行うからです。
従来の不動産投資では、入居者のサポートや修繕などの手間がかかりますが、クラウドファンディングならその負担も省けます。
優良事業者なら情報の透明性も確保しやすい
優良事業者であれば、公式ホームページでさまざまな情報を得られます。
想定利回りや運用期間、立地などの詳細を確かめられるため、情報収集のしやすさがポイントです。
さらに、一部の事業者はリスクも開示しているため、メリットとのバランスを踏まえて出資すべきか判断できます。
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かぼちゃの馬車事件は、高利回り・家賃保証・少ない自己資金という甘い言葉に多くの投資家が飛びついた結果、 賃料保証の裏にあった“不正な融資・割高な物件・管理の不透明さ”が一気に露呈した事件でした。
不動産投資では「利回り」「保証」「手軽さ」に惑わされず、物件・契約・運営会社の実態を自分で見極めることが不可欠です。
現在は、不動産クラウドファンディングなど、分散・少額・情報公開がしっかりした手法もあるため、過去のようなリスクを避けながら投資を考えるのが賢明です。
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